全国の自治体で、消費税インボイス(適格請求書)制度の実施中止・延期を求める意見書採択が急速に広がっています。7月末時点で、全国で423件(254自治体)の意見書を採択。5月末までの175から6月議会で一気に増えました。9月議会が始まり、各地の民主商工会(民商)は請願書などを提出。意見書採択がさらに広がっています。
【岐阜県関ケ原町】消費税「預かり金でない」 西濃民商 全町議8人で学習も
岐阜県関ケ原町議会は6日、「消費税のインボイス制度の中止・延期を求める請願書」を全会一致で採択しました(国などに送付する「意見書」は21日に採択予定)。請願書は、西濃民商が提出したもので、採択は県内初です。
画期的なことは、請願書に「消費税が『預かり金』ではなく『対価の一部』である」と明記されていることです。二つの判例(東京地裁1990年3月26日、大阪地裁同年11月26日)でも明らかになっていると示されています。
さらに、同制度が始まると、約1千万人といわれる小規模事業者やフリーランスが課税事業者になることを迫られ、「預かり金」でもない消費税を新たに強いられ、一方でインボイスを発行できない事業者に「取引から排除」「値引き」「廃業」が迫られると訴えています。
民商では、6月議会に向けて担当する2市9町に請願書を提出する準備を進めました。この地域の共産党議員団は「制度の内容を学ぼう」と4月26日、民商の細江正孝事務局長(当時)を講師に学習会を開きました。
関ケ原町の6月議会では、田中由紀子町議(共産)が紹介議員になって請願書を提出しましたが、他の議員から「制度の内容がよく分からない」との声が上がり、継続審議に。
そこで、田中議員が講師となり、7月29日に全町議8人が集まって学習会を開催。保守系の議員から「“益税”があるのでは」と疑問が出されましたが、田中議員は、東京地裁と大阪地裁の判例を紹介し、「消費税は預かり金ではない。益税は存在しない」と言い切りました。
シルバー人材センターの職員から「センターが新たに発生する消費税を負担することは、とてもできない」「このままでは、存続が危ぶまれる」などの声が上がっていることも伝え、「制度の実施中止・延期」を訴えました。
議員の理解は深まり、町議会では、製材業者とシルバー人材センターに登録している保守系の議員2人が積極的に採択を支持する発言をし、全会一致の大きな力になりました。
問山尚義会長=機械設計=は「民商内でインボイスの学習会を開くと、不安と怒りの声が広がる。物価高や資材高騰で経営は非常に厳しい。他の自治体にも働き掛けて意見書採択を広げ、国に制度の中止・延期を迫りたい」と話しています。
【宮城県白石市】県初、全会一致で「意見書」採択 仙南民商 役員が趣旨説明
「やったー!」―。宮城県白石市議会の6月議会最終日、「インボイス制度の実施延期を求める意見書」が全会一致で採択されました。傍聴していた仙南民商白石支部の佐藤信一支部長、婦人部役員の大浦哲子さん、小室さとみ事務局長の3人は、議場内では声を出せないので、顔を見合わせ、満面の笑みに。心の中で快哉を叫びました。採択は県内初です。
民商は6月議会に向けて、白石市と大河原町、蔵王町の1市2町に、インボイス制度の延期・中止を求める陳情書を提出。
白石市議会では、請願書や陳情書を議会事務局に直接届けると、趣旨説明の機会が設けられます。日下秀雄民商会長と佐藤白石支部長が議会運営委員会で陳情書の趣旨を説明しました。「インボイス制度は、中小業者をはじめ、農家やシルバー人材センターに登録している人たちなどにも影響を与える」「免税事業者は、インボイスを発行するために課税事業者になって消費税を負担するか、消費税分の値引きを受け入れるかの選択を迫られる」などの問題を訴えました。
二人は日頃から、交流のある地元の議員に声を掛けていたので、同委員会では「業者や農家、シルバー人材センターなど多くの人が大変になるなら、この意見書を採択することは良いことではないか」「インボイス制度の内容が十分に周知されていないことは理解できるので、延期なら賛成する」など保守系議員からの賛同も得られ、今回の採択となりました。
日下会長は「佐藤支部長が地元議員に働き掛けてくれたのが力になった。コロナ禍で多くの業者が苦しんでいる。新たな消費税の負担に耐えられない。意見書が採択されて本当に良かった。引き続き、1市7町での採択に向けて頑張りたい」と話しています。