「民商の自治体要請で実った中小業者支援策を大いに活用し、みんなで生き延びよう」―。各地の民主商工会(民商)は、国が1兆円の補正予算を組んだ「新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金(コロナ禍における原油価格・物価高騰対応分)」(臨交金)を活用した支援策を求めて機敏に自治体要請。さまざまな制度を実現し、コロナ禍と物価高騰に苦しむ多くの中小業者に喜ばれています。
広島・三原民商 相談会で申請広げ 「これで頑張れる」
広島・三原民商は、三原市が7月から開始した1事業者当たり10万円の「中小事業者負担軽減支援金」(軽減支援金)の申請・活用を進め、8月中旬以降、会員に交付決定通知が届いています。8月23日、事務所に集まった会員からは「これで頑張れる」と笑顔がこぼれました。
8月19日に支給決定の通知書を受け取った南支部の寺岡清司さん=理容=は「コロナの影響で仕事量は通常の3分の1ぐらい。給付金は事業を続けていく上で支えになる」と喜びの声を寄せました。
北支部の染山優さん=エステ=は「コロナの影響で時短営業に切り替えています。ただ、子どもとの時間も増えました。給付金は大変助かる。コロナ禍の下、皆さんに情報をもらいながら頑張りたい」と事業継続に向けた意欲を語ります。
民商はこの間、市経済部と懇談を重ね、「中小事業者固定費支援金」(4月)など、支援制度を相次いで実現してきました。「軽減支援金」は、6月議会を見据えて行った5月12日の「臨交金を活用したコロナ支援制度の拡充を求める」懇談が力になりました。
懇談には8人が参加。市の磯谷吉彦経済部長は「6月議会に向け、支援制度を検討している。今日の懇談も参考にさせてもらいたい」。川上博章課長は「建設、理美容、飲食の各業種の状況も教えてもらいたい」と話し、参加者は自身の商売の状況を伝えました。その結果、6月議会で、4月から6月にかけて売り上げが落ち込んだ事業者も対象にした「軽減支援金」10万円が創設されました。
民商は7月21日、「せっかくできた制度。積極的に活用しよう」と、事務所で「軽減支援金」申請相談会を開き、17人が参加。婦人部の島谷富美子副部長=建築内装=をはじめ役員中心で相談に乗り、申請を広げました。
西村善郎会長=鉄筋加工・組立=は「メインの資材の値上がり分は転嫁できるが、他の資材や移動の燃料代、運搬用トラックの軽油は転嫁できない状況で、利益が減っている」と原油・物価高騰の影響を語ります。飲食をはじめとする多くの仲間から厳しい経営状況が寄せられており、「広島県連はこの秋、営業動向調査に取り組んでいる。三原民商は100人分を目標に仲間の声を集め、今後の三原市との懇談に生かし、支援制度の拡充を進めたい。民商の値打ちを地域に知らせ、会員200人をめざして頑張りたい」と決意を新たにしています。
三原市中小事業者負担軽減支援金
○申請期間9月30日まで
○支給額1事業者当たり10万円
鹿児島・曽於民商 支援金15万円が入金 国保の傷病見舞金も実現
「商工新聞を見て、大崎町の『原油価格・物価上昇対策支援金』のことを知った。申請から2週間ほどで15万円が入金されて良かった」―。こう話すのは、鹿児島県大崎町に住む曽於民商の河村岩雄さん(仮名)=建材。商工新聞7月25日号2面の「自治体による原油高・物価高に対する主な支援制度」の表を見て町の支援金制度を知り、民商に相談。民商のサポートを受けながら7月26日に申請し、8月1日に入金されました。民商の山本直子事務局長は、「制度のことを役員から聞き、ニュースを準備していたときに、河村さんから電話があった」と話します。
民商では担当する2市1町への要請を継続的に実施。各自治体の支援制度を積極的に知らせ、活用を広げています。
曽於市では、「自営業者にも国民健康保険の傷病手当創設を」と繰り返し要請。元民商会長の五位塚剛市長は「本当は国がすべきこと」と言いつつ、新型コロナ陽性者全員に一律3万円の見舞金(1人1回・1世帯当たり6万円まで)が支給されることに。コロナ禍で、農畜産物価格低迷の影響を受ける事業者を支援する「農業者応援給付金」や、プレミアム商品券を1人1冊(500円分6枚つづり)配布する事業も創設され、積極的に知らせることで会員から喜ばれています。
志布志市では、「市と敵対するのではなく、『共に歩む』スタンスで、取り組もう」と、民商副会長も務める小園義行市議(共産) と連携。新たな支援が創設された際には、市の担当者が「対象者は、どれくらいいますか」と申請用紙を持って来るなど、良好な関係を築いています。
大崎町原油価格・物価上昇対策支援金
○申請期間8月31日まで
○支給額年間売上高1千万円未満・15万円
年間売上高1千万円以上・20万円
滋賀・湖東民商 懇談重ね応援金創設 対象拡大など改善も
滋賀・湖東民商は8月24日、近江八幡市が創設した個人7万5千円、中小企業等15万円の「事業継続応援金」の活用を広げようと申請会と宣伝行動を実施。「売り上げ減でも、固定費はかかるから、本当にありがたい」と喜ばれました。
同民商はこの間、担当する2市3町と懇談を重ねています。コロナ禍以降も機関会議や班会、相談会の中で出された声をとりまとめて届けてきました。繁華街を抱える近江八幡市や東近江市との懇談には、「業者の生の声を届けよう」とスナックや飲食店の会員が参加。自治体の担当者からも「個人事業主の声を聞かせてほしい」「今後も定期的に懇談を持ちたい」と歓迎されています。
近江八幡市は6月議会で、臨交金を活用し、応援金を創設。7月から受け付けが開始されました。民商は懇談を通じて、県の支援制度から外れる事業者を対象に加えることや書面申請も可能にすることなどを要望し、応援金制度に反映されました。
東近江市との懇談では、市側の「地域振興クーポン事業を活用してほしい」との回答に「クーポンでは、活用される業種が限定的で、売り場面積が規定以下の大手チェーン店に利用が集中するため、地域内に経済効果が循環しない」と指摘。近江八幡市の応援金制度や商工新聞7月25日号2面で紹介された各地の支援制度、業者婦人の実態調査アンケート結果などを示し、「近江八幡市モデルの検討を」と提案しました。
その後、担当者から「商工労政課が9月議会に『東近江市事業継続支援金』(個人事業者5万円、中小企業者10万円)の創設を提案することになった」と連絡があり、民商の要望が実る見込みです。
近江八幡市事業継続応援金
○申請期間9月30日まで
○支給額中小企業等15万円 個人事業主7万5千円