「全会一致で採択された」「担当エリアで初めての大快挙!」―。山形県2市1町の6月議会で、インボイス制度の実施中止・延期を求める意見書が相次いで採択され、請願した民主商工会(民商)の仲間が喜びの声を上げています。
【鶴岡市】保守含め全会一致で 鶴岡民商など
「消費税インボイス実施延期が全会一致で採択された。初めての採択で、すごくうれしい」―。鶴岡市議会は6月23日、「消費税インボイス制度の実施延期を求める」意見書を全会一致で採択しました。本会議を傍聴した鶴岡民商の菅原健一会長=機械製造、梶昇司常任理事=PC修理・販売、山田美加事務局長は、結果を聞いてガッツポーズを見せました。
民商も参加する消費税廃止田川地区連絡会(各界連)が請願していたもの。草島進一町議(市民の声・鶴岡)と菅井巌町議(共産)が紹介議員を務めました。各界連会長も務める菅原会長は「これまでにない保守議員の反応に驚いている。『話せば伝わる』情勢の変化に、大きな確信が持てた」と話します。
6月14日の総務常任委員会では「“益税”の抑制に必要」との反対意見が出ましたが、「コロナ禍で冷え切った経済に原材料の高騰が追い打ちをかけている今、事業者の重い足かせとなるインボイス制度は延期するべき」「コロナと物価高騰の影響で現場の実態は厳しい」との賛成意見に満場一致で採択。本会議も、同様に採択されました。
会員の免税業者の左官店は「インボイスが実施されれば、課税業者になるか、そうでなければ、元請けから消費税分の値引きを迫られる。市議会の意見書採択は、インボイス中止に向けた一歩だ。消費税増税とインボイス実施に突き進む勢力を後退に追い込むため、頑張る」と表明。
採択に向け、菅原会長と山田事務局長らは、市内の商店振興組合や印刷協同組合、電気工事組合などを訪問。6月議会前には、各会派の議員に説明しました。
菅原会長は「保守系議員から『延期なら賛同できる』と言われ、『中止』ではなく『延期』に修正した。いろんな業種がインボイス実施中止を求めたことで、無視できなかったのだろう」と述べ、「民商が担当する全3自治体での採択をめざす」と決意しています。
【河北町】域内初採択で勢いが 西村山民商
河北町議会は6月10日、「消費税インボイス制度の実施中止を求める」意見書を賛成10、反対2の賛成多数で採択しました。西村山民商が請願していたものです。担当する全5自治体での採択に向け、5月上旬から役員会で話し合い、寒河江市議会や朝日町議会にも請願してきました。採択は河北町議会が初めてで、「大快挙!」と喜んでいます。
民商の会計監査を務める、町議(共産)の木村章一さん=木材エンジニアリング=と相談しながら、意見書を作成。齋藤隆町議(共産)が紹介議員となり、本会議で賛成討論を述べるなど奮闘しました。
総務産業委員会(同7日)では「個人的には『中止』に理解できるが、党の立場的に反対」「継続審議にした方がいいのでは」などの意見が出ましたが、「中止しないと大変なことになる」と、無所属の町議が力説。賛成3、反対2で、採択。委員を務める木村町議は「自民党の議員の中でも、意見は分かれた」と言います。
本会議では、齋藤町議が「インボイス制度が実施されれば、フリーランスやシルバー人材センターで働く人など、免税業者がいなくなってしまう」などと賛成の立場で意見し、賛成多数で採択されました。
齋藤町議は「総務産業委員会での採択が、本会議の結果に大きな影響を与えた。民商の会員の多くが免税業者なので、実施されたら大変なことになると思った。中止が採択されて良かった」と話します。
木村町議は「3月議会の一般質問で、齋藤町議がシルバー人材センターや産直に農作物を納めている農家の例を挙げ、インボイス制度の問題点を指摘し、全ての町議に周知したことが採択につながった」と笑顔を見せました。
鈴木忠太郎会長=電気工事=は「インボイスが実施されれば、個人情報がだだ漏れになる恐れもある。意見書が採択されて良かった」と喜び「中小業者を救うため、全自治体での採択をめざす」と話しています。
【尾花沢市】議員に危機感広がり 北村山民商
尾花沢市議会は6月22日、「消費税インボイス制度の実施中止を求める意見書を政府に送付することを求める請願」を全会一致で採択。北村山民商が請願していたもので、「これまでにない画期的な成果」と歓喜の声が上がっています。
総務文教常任委員会(同15日)では「農業がつぶれ、中小業者がいなくなる。大変なことだ」「税理士会も反対している」などと話し合われ、賛成5、反対1で採択しました。
採択に向け、鈴木清市議(共産)は、消費税インボイスに関する資料を各議員に配布し、賛同を求めました。「私が所属する総務文教常任委員会に請願が付託されたので、紹介議員になることができず、他の議員に依頼した。農家や経営者の経験があるなど問題を理解しやすい人を説得し、自民、立民、無所属の市議3人が受けてくれた」と振り返り、「紹介議員を引き受けた市議らは、商工会や農協を訪問。インボイスの影響を聞き取り、中止の必要性を確信していたことが力になった」と述べています。