2022年版 中小・小規模企業白書「概要」 ポイント解説(上)|全国商工新聞

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 「2022年版中小企業白書」「小規模企業白書」は2年に及ぶ新型コロナウイルス感染症(以下、感染症)の流行や原油・原材料価格の高騰、部材調達難など外部環境の激変に直面する中小企業・小規模事業者の動向を明らかにし、中小企業・小規模事業者のそれぞれが当面の課題を見据え、新たな挑戦を行うために必要な取り組みについて、事例報告も交えながら分析を行っています。
 今回の白書の特徴は、「事業再構築」や「事業者の自己変革」がキーワードと言えます。ウィズコロナ、アフターコロナの生き残りへ、事業者に厳しく「変革」を求めます。
 中小企業白書と小規模企業白書は2冊合わせると千ページを超える分厚さで、通読するのも容易ではありませんが、両方を合わせた「概要」が中小企業庁のホームページで公表されています。「概要」に基づき、ポイントを紹介します(全2回)。

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 2022年版白書は「総論:中小企業・小規模事業者の動向」、「1.中小企業における足下の感染症への対応」、「2.企業の成長を促す経営力と組織」、「3.小規模事業者における事業見直し・地域課題の解決」、「4.共通基盤としての取引適正化とデジタル化、経営力再構築伴走支援」―の5部構成です。
 総論では、宿泊業、外食業を中心に、20年の売上高は多くの企業が感染症流行前を大きく下回ると実態を示します(図1)。

 しかし、倒産は57年ぶりに低水準であるものの、休廃業・解散は00年以降で過去3番目の高水準と指摘します。足下での原油・原材料価格の高騰の影響(図2、3)を多くの企業が受ける中、課題とする事業承継への取り組みやデジタル化への対応を紹介します。

コロナ後見据え「事業再構築」を

 1部では、原材料高騰や人材難の中、経営基盤強化に向け、「人材の確保・育成」に力を入れる企業が増えていること。アフターコロナや、その後の成長に向けて「事業再構築」が重要であることを強調します。新たな商品の提供や商品の提供方法を変更することなどを指しますが、これに取り組んでいる企業では売り上げ面等で効果を実感しているばかりか、既存事業とのシナジー(相乗)効果があることが、事例なども交えて紹介されます。
 2部では、中小企業の成長には、ブランド構築や人的資本への投資をはじめとする無形資産投資が重要であると指摘。ブランド構築では、ブランドコンセプトの明確化や従業員への浸透が大事で、人的資本への投資では、経営者が積極的に計画的な教育や研修を実施し、従業員の能力開発を進めることを強調します。

価格転嫁へ向け販売先と交渉を

 3部では、小規模事業者の「事業見直し」についてノウハウを解説します。すなわち、「市場」と「提供する製品・商品・サービス」の二つの軸で、①市場浸透②新商品開発③新市場開拓④多角化―の四つのマトリックスに分類します(図4)。

 小規模事業者の約7割は市場浸透に取り組んでおり、既存の市場や既存の製品・商品・サービスの下で情報発信の強化や商品・サービスの向上に取り組む事業者が多いと述べます。
 事業見直し時に、さまざまな課題に直面するので、支援機関の役割は重要と指摘し、地域課題の解決に向けて他の事業者との協業を行う小規模事業者は、支援機関のネットワーク・ノウハウを活用することが重要とします。
 4部では、コスト変動への対応だけでなく、中小企業における賃上げの原資を確保する上でも、取引適正化が重要であることを強調。6割超が「価格転嫁ができなかった」としており、価格転嫁に向けては販売先との交渉機会を設けることが重要と指摘します。
 デジタル化について、4段階の取り組みステップを示し、感染症の流行前より「デジタル化による業務効率化やデータ分析に取り組んでいる状態」(段階3)の事業者が増加しているが、DX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組む事業者は約1割にとどまると述べます。

「自己変革力」と伴走支援を指摘

 経営環境が激変する今日、中小企業が生き残るためには、経営者自らが自己変革を進めることが欠かせないと説き、「自己変革力」を高めるためには、支援機関との対話を通じて、経営課題を設定することが重要と強調。そのためにも、第三者である支援者・支援機関が、経営者らとの信頼関係を築き、対話を重視した伴走支援を行うことが有効と、従来の「白書」同様に指摘します。

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