原材料や仕入れ値が上がった中小業者は78%で、その上昇分を76%が価格に転嫁できず、赤字になったり経営が厳しくなると85%が見通し、42%が資金繰りに影響があると回答―。全国商工団体連合会(全商連)が4月1~11日、40都道府県の511事業者(社)から集めた「原材料・仕入値の高騰・価格転嫁に関する緊急アンケート第1次集約」の結果です。全商連はアンケート結果に基づき、同14日に経済産業省に緊急対策を要望しました。「コロナ禍と資材高騰、転嫁困難でピンチにあえぐ中小業者の営業を守れ」と、全国で声を上げるときです。
全商連 緊急アンケート 第1次集計 8割が「経営厳しく」
全商連の「緊急アンケート」では、新型コロナウイルスの感染拡大を背景とした供給制約や、ロシアによるのウクライナ侵略などにより、さまざまな原材料や仕入れ値の高騰、品薄などが生じ、すでに多くの業種で深刻な影響が広がっている実態が明らかになりました。
回答者の業種は「建設業・建築業」(34%)、「製造業」(17%)、「流通・商業」(10%)、「宿泊・飲食業」(7%)、「サービス業」(18%)、「その他」(14%)です。原材料・仕入れ値の上昇は、広範な業種に及んでいることが分かります。
原材料や仕入れ値の上昇の影響で「赤字になる」「赤字にならないが、経営が厳しくなる」と回答した人に「経営にどう影響しているのか」を尋ねた自由記述では、「見積時より着工時には値上がり、採算が取れない」「取引先に交渉しても、聞いてもらえない」「コロナ禍で客が減少している時に値上げすれば、さらに客離れになる」など、悲痛な声が寄せられています。
緊急アンケート 自由記述欄 「上昇分を価格に転嫁できない」
福島県 サービス
◎…鉄骨・アルミ材、たる木が1カ月単位で値上がりしている。できるだけ見積もりに反映させているが、間に合わない時もある。仕事量が増えればクリアできるが、停滞すると厳しい。
群馬県 製造
◎…仕入れ先との良好な関係を保つため、常にコミュニケーションを取っている。しかし、最近の材料、資材の高騰は価格転嫁に追いつかない。原材料の大本が値上がり、もしくは不足し、どうにもならない。過去20~30年も値上がりを極力迎えてきたというのに。
静岡県 建設・建築
◎…1年に一度くらいの値上げなら協力をお願いできるが、3~4カ月ごととなるとお願いしづらいため、しばらくは、こちらが被ることになってしまう。
愛知県 建設・建築
◎…電線・配管の値上がりが昨年だけで3回、2割ずつ値上がり、今年の4月からさらに2割上がった。元請けが単価を値上げしてくれたが追いつかないので、利益が減っている。
愛知県 その他
◎…エアコン工事の時のパイプ電線の材料代が1・5倍に価格を上げても、最終値引きをしないといけないときも多い。お風呂、キッチン等も、これから1割くらい上がるらしい。
三重県 建設・建築
◎…見積もりを出しているので、工事が遅れても元の値段でやらなければならず、採算ベースぎりぎりか赤字になることもあり、利益が出ない状況が続くと、とても厳しい。
京都府 宿泊・飲食
◎…上昇分を価格に転嫁できていない。コロナ禍で客が減少している時に値上げをすれば、さらに客離れになる。いま営業は一番厳しい時で利益は減るが、もう少しこのままでと考える。
大阪府 建設・建築
◎…工事を受注した時の材料の値段と比べ、2カ月後に工事を開始する時には材料は20%アップ。オーナーに「材料がアップした費用をもらえませんか」と言っても、出してくれない。
大阪府 建設・建築
◎…2~3カ月前に見積書を提出したものが、直前に原材料が値上がりして、下請けのため、取引先に交渉しても聞いてもらえない。その分が大赤字になる。
大阪府 製造
◎…1年間の間に何回か上昇するので、その都度、転嫁できず、苦慮している。値段の不理解のせいで取引を中止したこともある。
兵庫県 流通・商業
◎…銅製品が全面的に値上がりしているが、当面は自活で吸収し、例年通りの値段で頑張っている。銅パイプ、電線等、他に給湯器の品不足、湯水便座の入荷遅延などある。
滋賀県 建設・建築
◎…見積金額が高くなるので、施主が工事を取りやめてしまうのが心配だ。
広島県 流通・商業
◎…運賃が上がらないのに、軽油代やアドブルー、タイヤ等全てが値上げされ、売り上げを上げないと銀行の借り入れ返済も大変だ。走れば走るほど経費がかさみ、ドライバーの労働時間も長くなり、悪循環でも頑張っているが、最近は県や国の工事も減り、困っているのに、銀行は企業努力をしろと言う。
島根県 流通・商業
◎…ローカルの製造メーカーは、小売価格を値上げ案内しても、スーパーより値上げを認めてもらえないので、値上げできない。
熊本県 建設・建築
◎…原材料の上昇分が請け負い単価に反映されず、人件費は削れず、私(事業主)が耐えるしかない。
長崎県 サービス
◎…注文時(見積時)と納品時(仕入れ時)とでは、値段がどれくらい上がっているのか分からないので、全額転嫁できない事例が増えてくるので、利益が減る可能性がある。
中小業者の経営支援を 全商連 経産省に緊急対策を要請
4月14日の経済産業省への要請では、「コロナ禍と物価高騰の影響から中小業者の経営を守る緊急対策」を要望しました。
緊急対策では、コロナ禍と物価高騰のダブルパンチを受ける事業者への固定費補助や、既往債務と利息返済の凍結、運転資金の確保のために「20年返済・据置10年・据置期間無利子」融資の創設を要望。燃料や原料、食料などの安定確保と、支障なく価格転嫁できるようにすることなども求めました。
省側は、「報道にもあるように、円安も進んでおり、下請け中小企業の苦しみはいかばかりかと思う。われわれとしても15万件のフォローアップ調査を行うことにしており、今日頂いた緊急アンケートも参考にさせていただき、対策を講じていきたい。要望にもあるが、4月から返済期間は20年に延長できるようになった」と答えました。
事業復活支援金の不適切な審査対応の是正などについても、「一時支援金のようなことが起こらないように、審査事務局に徹底していく」と改善を約束しました。
この要請には、日本共産党の笠井亮衆院議員、岩渕友参院議員が同席しました。
売り上げ2千万円減るかも
全商連副会長 藤川 隆広さん=梱包資材製造加工
わが社は、食品や医薬品、産業資材の包装に使う包装資材の製造販売や委託加工を行っています。その包装材に使う合成樹脂フィルムが15%も値上がりしています。主原料は、原油から精製されるポリプロピレンです。
原油の値上がりを受けて、フィルムメーカーは2020年からすでに3回の値上げを行い、まだ上がると言われています。
顧客に、切れることのないように製品を届ける。供給に責任を負うことが業者の使命です。厳しくとも、値上げは受け入れざるを得ません。
しかし、取引先との関係で価格転嫁を全て受け入れてもらえるとは限りませんが、「製品を出さない」とは言えません。
交渉は常に進めていますが、自社の利益を落としても、供給責任を果たし、信用を守らねばならない時もあるのです。
今、フィルム価格だけでなく、紙、接着剤、輸送費など、ありとあらゆるコストアップが続いています。その上、円安が進んでいます。余裕を持った運転資金を確保し、備えてはいますが、売り上げは2千万円は落ちるのではないかと危惧しています。
政府には第一に、中小企業が資材確保に困らないように、さらに便乗した投機的な動きが起きないように監視を強めて、責任を果たしてもらいたいと思います。
さらに、包装資材はなくてはならないもので、製品の保存・保管、物流に重要な役割を果たしています。従って、あらゆる製品のコストに跳ね返ります。環境面を考えても、今後、包装資材を石油由来から植物由来のバイオマス素材に置き換えることが必要になってくるでしょう。脱石油へ、先を見据えた取り組みへのイニシアチブを発揮することも求められるのではないでしょうか。