「2・4全国中小業者・国会大行動」では、経済産業省・中小企業庁をはじめ6省庁と交渉しました(国税庁は9日)。国の一時・月次支援金の「不備ループ」の実態を告発し、消費税減税とインボイス制度の実施中止、新型コロナの検査・ワクチン接種体制の強化、税金や国民健康保険(国保)料・税のコロナ特例減免の再実施などを要望しました。
【経産省・中企庁】
不給付の理由を明らかに 「再審査考えていない」
コロナ禍による中小業者の経営危機打開を求める経産省・中企庁への交渉には、全商連の橋沢政實副会長ら40人が2会場に分かれて参加。国の一時・月次支援金の申請書類を何度出しても突き返される「不備ループ」問題で、申請・審査・給付事務の改善、不給付とされた事案の再審査を求めました。事業復活支援金の売り上げ減少要件のさらなる緩和や拡充を求めました。
中企庁の担当者は、不備ループ問題では「指摘された点については可能な限り解消できるよう対応してきた」と述べ、「再審査は考えていない。要件を満たさない限り給付はできない」「(事業復活支援金は)月当たりにすると、持続化給付金より改善されている」と答えました。
これに対し、各地の参加者が実態を告発。重ねて改善を求めました。
神奈川で音楽教室を営むHさんは、「9月まで月次支援金が出ていたのに10月分は入金されず、通帳3年分の開示を求められた。月謝は現金なので、ためらっていると、情報提供が不十分なので給付できないと通知が来た。なぜ、突然そのようなことになるのか理由を明らかにしてほしい。収入は8割減が続いている。不給付を取り消し、速やかに給付してほしい」と訴えました。
大阪で動画制作を行うフリーランスは、「サポート会場で確認してもらい、月次支援金を申請したが、最初は通帳の不備が来て、それを送ると台帳の提出が求められるなど、次から次に求められる書類が増え、手間も経費もかかり、疲れ切ってしまった。なぜ、そんなことになるのか。審査担当者と話ができるようにしてほしい」と改善を求めました。
東京都豊島区でエステ・マッサージの施術を行っているYさんは、「4月から8月までは月次支援金を受けたが、10月分の申請を行ったところ、不備通知が来た。指示に基づき、通帳や元帳を添付したが、再度の不備メール。『売り上げが現金で受け取っているため、請求書・領収書は存在せず、金融機関の通帳には反映されない』旨の上申書も付けたのに、『直近2カ月の経費の支払いがあることが確認できませんでした』とメールには書いてあった。誠実な対応をしているとは思えない」と事務局の姿勢を批判しました。
新潟県連の青木敦志事務局長は、「新潟県内にはスキー客を対象に、年間売り上げの大部分を冬季に稼ぐ事業者が大勢いる。『季節性収入特例』を使う場合は、白色申告者や農家でも、対象月と同じように基準月の売上額を『基準月の売上に係る帳簿』によって算出できるようにしてほしい」と運用改善を求めました。
交渉では、各地から託された具体的事案の改善を求める要請書20通を提出し、早期に対応するよう求めました。
【金融庁】
資金繰り支援柔軟に 「末端まで浸透図る」
金融庁では、コロナ禍の長期化や原油・原材料高騰で苦しむ中小業者への柔軟な資金繰り支援などを要請。昨年11、12月に金融庁から銀行協会などに発出した事業者への資金繰り支援を求める文書の趣旨を確認しました。
担当者は「事業者の実態に応じた支援が重要だと感じ、文書を発出している。金融機関に対し、新規融資や既往債務の条件変更など、最大限柔軟な対応を繰り返し求め、末端までの浸透を図る」と回答しました。
参加者が「例えば、コロナ禍で条件変更をした経緯があっても、追加融資の希望があれば支援する、という趣旨でよいか」と確認すると、「その通り。現状を踏まえると、条件変更を1回したという事実をもって、機械的・硬直的に融資の判断をすることが無いようにという意味だ」と応じました。
【厚労省】
国保料の減免拡大を 「臨時交付金で可能」
厚生労働省では、新型コロナの「自宅療養原則」方針の撤回や、検査・ワクチン接種体制の抜本的強化を申し入れ。「現場の思いを受け止め、国の責任で対応してほしい」と訴えました。
国民健康保険料・税では、コロナ特例減免の対象拡大を要求。厚労省側は「自治体の判断で、個別の事情に応じて減免することは可能」と述べ、「財源として臨時交付金が使える」と説明しました。「国保料・税算定の際、給付金を所得に参入しないという扱いは難しい。国からの財政支援は考えていない」としつつ、「給付金等を含めて賦課した後で、自治体の判断で給付金等に相当する部分を減免することは可能」と答えました。
後期高齢者医療の窓口負担2割化については、「課税所得が28万円以上で、かつ年金所得を差し引いた所得金額と年金収入の合計が単身で200万円、または夫婦で320万円を超えた場合、2割負担の対象となる」と説明。コロナ関連の減免については、今後の課題であることを示唆しました。
「マイナンバー(共通番号)カードを健康保険証として利用することを強制しないでほしい」という要望に対しては、「従来の保険証も利用できる」と説明。現状では、マイナンバーカードでの運用を開始している医療機関が11・2%、保険証として使えるカード保持者が約13・5%であることを明らかにしました。
【財務省】
コロナ特別貸付継続を 「借り換え等柔軟に」
財務省交渉では、インボイス制度について「世界で75の国と地域が消費税(付加価値税)を減税し、コロナ禍で苦しむ中小業者の経営を応援している。日本政府は減税どころか、免税業者に耐え難い税・実務負担を押し付けようとしている。廃業に追い込む制度はやめてほしい」「元請けから“課税業者にならなければ取引しない”との要請があり、これを機に廃業を検討中との声も出ている」などと訴え。省側は「インボイスは複数税率の下、適正課税に必要な制度。一方的な消費税値引き要請などは公正取引委員会とも連携して対応したい」と答えました。
「給付金を非課税にせよ」との要望には「売り上げを補てんするものは課税対象で、黒字なら所得税などの申告が必要」と回答。参加者は「給付金の3割以上が税金で持っていかれる。何のための支援か」と訴え、改善を求めました。
日本政策金融公庫の新型コロナ特別貸付について「実質無利子・無担保とする利子補給は3月までだが、特別貸付制度は4月以降も継続する」と回答。その上で、「返済期間・据え置き期間の長期の延長等を積極的に提案するなど、既往債務の条件変更や借り換え等について、事業者の実情に応じた対応を継続することなどを政策公庫に求める要請文を発出(昨年11月24日)した」ことを明らかにしました。
【国税庁】
データ持ち帰るな 「提示・提出は従来と変わらず」
国税庁(9日)では、コロナ禍での税務調査を控えることや特例猶予の再実施、給付金などの差し押さえはやめること、電子帳簿保存法(電帳法)にかかわって帳簿の電子データの持ち帰りを行わないこと―などを求めました。
庁側は「税務調査について感染対策を行った上で、納税者の置かれている状況を十分に配慮し、必要な調査かどうか検討し、実施している」と回答。給付金等の差し押さえは「給付金を受ける権利を差し押さえることや、銀行口座に振り込まれた給付金を使用できなくするような差し押さえは慎むよう通知している」と答えました。
また、確定申告書にマイナンバーの記載がなくとも収受し、罰則もないことを確認しました。
電帳法の基本通達で「質問検査権に基づく電磁的記録のダウンロードの求めに応じる」とあるが、「USBメモリ等でデータをコピーして持ち帰ることを指すのか」と質問。「あくまでも電帳法の適用を受ける人が対象だ。調査で必要な場合は、提示・提出を求める点は従来と変わらず、質問検査権を行使する上での扱いだ。USBへのデータ保存など勝手にできるものではなく、納税者の理解と協力を得て行うもの」と説明しました。
参加者から「コロナ禍で実地調査が行われ、2月中に応じなければ、反面調査すると署員が示唆した」事例をただし、税務行政の是正を要求。庁側は「関係部局に伝える」と回答しました。
母親が住んでいる土地と家屋を差し押さえられた大阪・和泉高石民主商工会(民商)会員の件で、差し押さえの解除と滞納処分の停止を求める「請願書」を提出。関係税務署に事実確認と対応の是正を促すよう求めました。
【デジタル庁】
共通番号強要やめよ 「カード取得は義務でない」
デジタル庁ではデジタル化に際し、国民が自らの個人情報をコントロールできる権利を保障し、個人の尊厳が守られるようにすること、デジタル化に対応できない国民を排除しないこと、マイナンバー(共通番号)カード取得は任意であり、災害・税金・社会保障以外は利用しないことなどを要望。
庁側は「マイナンバーカード取得は義務ではない」「マイナンバーカードを持っていなければ、申請できないことがあってはならない」と回答する一方で、「オンライン申請において、カードで本人確認ができるので、利便性が向上する」と強調。参加者は「利便性というが、これまでマイナンバーが無くてもできていた申請等ができなくなっている。自治体では、本人確認のため、マイナンバーカードの提示以上の書類が求められるケースがある」と指摘。「具体的な事例があれば、自治体と話し合いたい」と回答しました。
「デジタル田園都市国家構想」関連事業の来年度予算案は補正予算を含めると5兆円を超え、前年度の約3倍に。マイナンバーカード取得を推進するために、芸能人やスポーツ選手を起用し、テレビCMを流していることについて「5兆円もの予算を何に使うのか。『デジタル田園都市国家構想』事業は今やらなければならないのか」「テレビCMに、どれほど広告費を使っているのか」と批判しました。