福島・白河民主商工会(民商)が担当する矢吹町と西郷村は昨年の12月議会で民商が提出した「消費税インボイス制度の実施中止を求める意見書」を採択しました。矢吹町では、総務教育常任委員会で不採択になったものの、本会議で一転、採択。西郷村では、全会一致で採択されました。民商が班長・支部長学習会や班会などでインボイス制度の学習を重ね、「受け持つ全ての自治体に請願書を提出しよう」と運動に取り組んできた成果です。
【矢吹町】会派超えた共同広がる 委員会不採択から一転
「総務教育常任委員会では不採択だったが、本会議では一転、採択された!」―。民商会員でもある安井敬博町議(共産)から12月15日、民商事務所に喜びのメールが届きました。矢吹町の12月議会に提出していた「消費税インボイス制度の実施中止を求める請願」が採択されたのです。請願採択の力になったのは、会派を超えた7人の町議が、11月18日と20日に「提出予定の議案と請願の調査」の中でインボイス制度について学んだことでした。ガソリンスタンドや家庭教師、農家を営む町議らにとって、インボイスは身近な問題です。
「そもそも、農家など第1次産業は商品に消費税を上乗せして販売している感覚はない」「年間200万~300万円の所得で、煩雑な実務を負わされるのか」「税金を納めるために働いているようだ」―。鈴木隆司(無所属)、高久美秋(同)、青山英樹(同)、三村正一(同)、鈴木浩一(同)、加藤宏樹(同)、安井敬博(共産)の町議は口々に言います。「インボイスが実施されれば、課税事業者を選択せざるを得ない人たちの生活が大変なことになる」と危機感を一層募らせました。
総務教育常任委員会に出席した青山町議=家庭教師=は「委員会前に他の町議にインボイスの問題点を伝え、賛同を求めたが得られなかった。『国が決めたこと』『納税の義務があるから』と反対や継続審議の声もあり、賛成は私1人で反対多数の結果に。しかし、本会議では賛成議員が多数になると予想できた」と話します。実際、本会議では7対6の賛成多数で採択されました。
安井町議は「本会議では、反対意見として『課税事業者になるかどうか、事業主が選択できるから問題ない』との意見や益税論が無所属議員2人から出されたが、『実際には、取引先からインボイスの発行を求められたら、課税事業者を選択してインボイスを発行し多額の消費税を負担するか、取引を断念するかだ』と主張し、採択できた」と振り返ります。
住民の暮らし中心に考える
日本の三大開拓地の一つとして、町面積の約半分を農地が占める矢吹町。農業を営む高久町議は「1年前にユーチューブでインボイスのことを知った。農家も大変なことになると思った。この地域のコメは、労働対価を入れずに計算しても、10アール当たり平均5万円の赤字。生産費用と労働対価もまともにとれない状況なのに、取引先にインボイスを求められれば、課税事業者にならざるを得ない。インボイス交付が免除される『農協特例』の対象者は40%くらいで、それ以外の農家は影響を受ける」と懸念します。
「消費税は預かっているから、払うのは当たり前」と話す鈴木隆司町議=ガソリンスタンド=も、「地方の飲食店などでは、税込み価格で代金を受け取っても、生活が苦しく、消費税分を取っておけないのが実態だ」と実情を訴えます。青山町議は「消費税は赤字でも納付を迫られる。国は、地方の暮らしの実態を見て政策を決めているのか、疑ってしまう」と語気を強めます。
東京都内などで開催される議員研修会などに参加する中でグループLINE(ライン)でつながり、一緒に勉強するようになった7人の町議たち。青山町議は「研修会では、議員は住民の暮らしを中心に考えるものと学んだ。その観点で物事を捉えた結果、7人の考え方が一つになった」と語ります。
安井町議は「議員の仕事は、憲法に基づく請願権を使って、住民が提出した請願内容に誠実に向き合うこと。これまでの議会を見て、請願する際には会派や党派にとらわれず、議員一人一人に思いを訴えていくことが、採択につながると改めて感じた」と話しています。
【西郷村】全会一致で採択
西郷村は12月10日、白河民商が提出した「消費税インボイス制度の実施中止を求める意見書」を採択。採択の結果はすぐに民商副会長の藤田節夫村議(共産)から報告され、翌日、「採択したこの請願(陳情)は、関係行政庁に送付した」との通知書が郵送で民商事務所に送られてきました。
請願書は11月16日、藤田、上田秀人(無所属)の両村議を通じて議会に提出。総務常任委員会の鈴木昭司副委員長が本会議で「消費税インボイス制度の実施中止を求める意見書は、採択すべきもの」と提案し、全会一致で採択されました。
全自治体での採択をめざす
二宮三樹男会長=看板広告=は「すごいことが起きた。うれしい」と声を弾ませます。「ギリギリで踏ん張っている民商の仲間や商工新聞読者、同業者から最近、『インボイス発行業者の登録は、どうすればいい?』との相談が増えてきた。インボイス実施中止を求める自治体がもっと増えれば、やめさせられる展望も見えてくる。インボイスの影響を広く知らせ、全自治体で採択を勝ち取りたい」と意気込んでいます。