岸田文雄政権は11月19日、55・7兆円の財政支出による新しい経済対策を閣議決定しました。2021年度補正予算で約31兆円を計上し、残りは22年度予算に盛り込む予定です。過去最大規模の財政支出にもかかわらず、新型コロナの事業者支援などは、あまりにも不十分な内容です。
岸田首相は、先の総選挙で、「昨年の持続化給付金並みの給付を行う」と公約していました。しかし、事業者支援として新たに提案された「事業復活支援金」は、年間売上高が1億円未満の事業者は最大100万円(5億円以上は最大250万円)、個人事業主には50万円で、昨年実施された持続化給付金と比べて給付額が半分になっています。対象時期は11月から5カ月とする方針で、1月から10月までほぼ続いた緊急事態宣言期間は該当しません。これでは、コロナ禍の下、商売を立て直そうとする中小業者を応援する気概すら感じません。また、一時支援金などにおいて、申請書類の不備通知を繰り返す「不備ループ」問題が解消していない中で、「事前確認」を再度実施するとしました。制度改善を求める業者の声を無視し、恣意的な審査を継続するもので、「中小企業淘汰」にもつながります。引き続き、改善させた持続化給付金の実施などを求める必要があります。
「消費喚起」を名目に、個人番号カードの新規取得や健康保険証としての利用登録などに最大2万円分のポイントを付与することも看過できません。日常生活では必要なく、個人情報漏えいリスクもあって普及が進まない個人番号カードを「カネの力」で普及させようという魂胆があからさまです。これが経済対策と言えるのか。消費喚起というのなら消費税率5%への減税こそ実施すべきです。
一方で、先端半導体の生産企業に約6千億円を投入するなど、大企業を大規模に支援。「ミサイル防衛能力」など軍事費7700億円が補正予算案に盛り込まれようとしており、コロナ危機に対応する経済対策の趣旨から逸脱しています。
新しい経済対策は、コロナ禍で困っている人に届く支援へと抜本的に切り替えなければなりません。本気で中小業者を支援する政策を政府に求めていきましょう。