「一時支援金が入金された。諦めなくて良かった」―。国の一時・月次支援金は、事業実態を無視した審査が依然として続いているものの、不備ループを脱出し、支給に至るケースも生まれています。「諦めず粘り強く対応しよう」と呼び掛ける各地の民主商工会(民商)から、喜びの声を紹介します。
12回「不備」乗り越え
東京・北区民商Oさん=電設工事
東京・北区民商のOさん=電設工事=は11月4日、5月に申請した一時支援金30万円が入金されました。後から申請した月次支援金はすでに入金されていたため、理不尽な審査に怒りつつも「ようやく通った」と胸をなでおろしています。
Oさんは元請け業者から依頼を受け、ビルなどにパラボラアンテナの取り付け作業を行っています。1~3月の売り上げが、2019年比で半減し、民商の支援を受けて一時支援金を申請しました。
申請から1カ月後、初めての不備メールが。「取引先の法人履歴事項全部証明書」を求められました。Oさんは指示通り、法務局で証明書を入手し添付。ところが数日後、また不備メールが届き、「対象月まで3年分の全請求書の控え」「請求書と合致する通帳履歴」「対象全期間の工事現場と日当が分かる日計表」など、次々と資料の提出を求められました。
揚げ句の果てには、「取引先のホームページに、Oさんの会社名と商品が掲載されている画面のコピー」も要求。これには「アンテナ取り付け工事業であり、アンテナ販売業ではない。ありもしない自社商品が載っているホームページ画面など存在しない」と反論する説明文を添付。しかし数日後、全く同じ資料の添付を求めるメールが再び届きました。
度重なる理不尽な要求にOさんは8月、東京土建一般労働組合北支部などと行った、経済産業省交渉にも参加して実情を訴えるなど、辛抱強く対処。12回の不備メールにも諦めず、ようやく入金されました。
「何度も不備メールが来て、諦めそうになったが、そのたびに民商に励まされた。諦めなくて良かった。民商に感謝しています」
心折れかけたが奮起
東京・新宿民商会員=手芸店
東京・新宿民商のNさん=手芸店=は11月11日、一時支援金30万円が入金されました。現金取引が中心の業者が不備ループに陥ると、抜け出すのが難しいケースが多く、途中で心が折れかけたものの、奮起して資料を3回提出。「なぜ急に不備が解消されたのか分からないが、諦めず理不尽な訂正依頼に根気よく対応して良かった」と喜んでいます。
Nさんは東京商工団体連合会が6月に行った中小企業庁交渉にも参加(7月5日号既報)。サポートセンターで書類を確認し、指示通りに訂正しても、難解な不備メールが届く実態などを訴えていました。
民商はツイッターなどで今回の事例を発信。「不支給になった皆さんも、諦めずに最後まで頑張ろう」と、不備ループに苦しむ業者を励ましています。