全商連「総選挙五つの緊急要求」解説 減収に応じた補償を 第1回 コロナ危機から中小業者を守る|全国商工新聞

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 4回目の緊急事態宣言が13日、3度目の延長に入りました。19都道府県が対象で新たな期限は30日まで。宣言地域では引き続き、飲食店に午後8時までの時短営業を要請し、酒類提供も禁止されます。感染拡大は「下降傾向」にあるものの「出口」は見えません。
 菅義偉政権は「コロナ対策の無為無策」で辞職へと追い込まれましたが、失政は科学的知見に基づくコロナ対応を怠り、感染爆発を招いただけではありません。休業や時短営業の要請を行いながら、セットで行うべき十分な補償を行わず、行き当たりばったりで小出しの不十分な補償で、中小業者の経営にかつてない危機を招きました。
 2021年総選挙に当たり、全国商工団体連合会(全商連)は「五つの緊急要求」を発表しました(9月20日号掲載)。今号からその内容を順次解説します(5回予定)。第1回は「1、コロナ危機から中小業者を守る」です。

【現状】支給要件が厳しく 50%未満切り捨て

人影が消えて久しい繁華街=東京都北区

 昨年、安倍内閣(当時)が4月7日から1カ月、初めての緊急事態宣言を発出。「前例にとらわれない思い切った措置を講じていきたい」と述べ、「持続化給付金」「資金繰り支援」「家賃支援給付金」などを実施しました。
 持続化給付金は約441万件の申請があり、約424万件の中小企業・個人事業者に約5・5兆円を給付。家賃支援給付金は約108万件の申請に約104万件、累計約9千億円が給付されましたが、持続化で17万件、家賃支援で4万件が不給付とされました。
 第一の問題は、持続化給付金の要件が原則、「事業収入が前年同月比で50%減少していること」に限定されたことです。一律の線引きで、多くの事業者の切り捨てが進みました。

6カ月分で算定

 第二は、持続化給付金は中小法人最大200万円、個人事業者100万円とされましたが、その根拠は事業所の95%を占める50人以下の事業者の固定費が全国平均で年間400万円、個人事業者は200万円程度といった推計を参考に、その6カ月分に相当する額として算定されたことです。
 「6カ月でⅤ字回復」が前提だったのです。長期化した場合は2次、3次の支援が必要でしたが、それが行われず、その場限りの対応が重ねられました。
 年明けの2度目の緊急事態宣言では、1月8日から2月7日までの休業や時短要請の飲食店等には1日当たり6万円の協力金が給付されましたが、事業規模などを考慮しない一律だったため見直しを余儀なくされ、売上額などを考慮したものに修正されました(東京都では現在4万円~10万円。都道府県により金額は異なります)。
 「飲食店の休業/時短営業や外出自粛等の影響により、売り上げが減少している事業者への支援がない」という当然の声に押され、3月にようやく一時支援金(その後、月次支援金へ移行)が創設されますが、同じく50%以上の減収を対象に、支援金は月額で法人上限20万円、個人同10万円と極めて不十分でした。
 各自治体による横出しや上乗せなどの支援拡充が行われますが(図)、国の支援は、持続化給付金の積算根拠だった固定費を賄うに足りるものではありませんでした。酒類販売業者への加算なども行われますが、場当たり的な対応により継ぎはぎだらけで、業種や事業規模など当然考慮すべき事項への注意も払われず、支援制度は公平性が損なわれ、説明のつかない複雑なものになっています。
 家賃支援給付金は昨年5月、緊急事態宣言が延長されたことを受け、家賃等の固定費の負担に対する追加的支援を求める動きが高まり、7月に創設されました。「2020年5月以降12月末までの間で、1カ月の売り上げが対前年比50%以上減収している。あるいは3カ月の売り上げの合計が前年の同時期の合計と比較して30%以上減少している」ことが要件で、上限額は「法人600万円、個人300万円」(5月以降の6カ月分)でした。家賃支援給付金も、持続化給付金と同じく「線引き」や「6カ月分」であることなどの問題がありました。

電通などに丸投げ

 第三は、持続化給付金などの事業が、電通やパソナなどに業務委託、丸投げされたことです。巨額の業務委託費や委託事業の公平性、透明性、システムの不備など、さまざまな問題が噴出。制度が複雑化したことも、給付の遅れを招く原因になりました。オンライン申請に限定されたことにより、不慣れな事業者は門前で排除されました。「申請者性悪説」に立ち、実態を見ない機械的な審査が行われ、「不給付決定」や「不備ループ」が乱発されました。そればかりか、再審査や不服申し立てなど行政手続きとして当然の規定を設けず、巨額の給付金の支給・不支給の決定を「行政不服審査法(昭和37年法律第160号)上の不服申し立ての対象とならない」としました。

【要求】自治体に権限与え 直接支援の拡充を

持続化再給付を

「酒に罪はない。」とポスターを掲げる、お客が激減する都内の飲食店

 全商連の「五つの緊急要求」は、このような問題を踏まえ、「①直接支援の拡充」で「持続化給付金、家賃支援給付金を再給付する」と掲げました。「当初の支給額を下限としつつ、規模や影響に見合う補償へと拡充」としているのは、持続化給付金は個人の場合、50%減収で月額約17万円だったことから、それを基準に50%未満を切り捨てるのではなく、減収幅に応じた給付額にすることを求めたものです。
 給付金事業が業務委託されたことにより多くの問題を生じさせたことを踏まえ、「予算と審査の権限を自治体に与え、事業実態に即した迅速かつ柔軟な申請・給付が行われる仕組みへと転換する」ことを求めています。東京都の場合でも、飲食店への協力金は、9月末までの支給を含めて12回の細切れ支給となっていますが、国が大本で自治体の裁量を奪っているためです。沖縄県うるま市が独自の支援金を市の窓口で直接給付したように、速やかに届けることも重要です。ドイツのベルリン市政府は「生き延びてもらうことが先決だとして、自己申告のみで支給される」零細事業者への支援を行っていますが、事後に審査するやり方に改めるなど、自治体裁量の拡充を求めています。
 「②自治体による支援の充実」で「自治体が行う協力金の要件を緩和」とあるのは、現在、国が検討している「行動制限の緩和」の方向として「感染対策を講じた飲食店での酒類提供を検討」していることを踏まえたものです。
 国がモデルにしているのは、山梨県が「超感染症社会」への脱皮をめざすとした「やまなしグリーン・ゾーン構想」です。県が独自に決めた39項目の基準を満たす施設に「グリーン・ゾーン認証」を付与する第三者認証の仕組みを設け、県から派遣された認証事務局のスタッフが定期的に巡回し点検・指導します。これを国が推奨するため、各自治体が次々と取り組み、基準項目がどんどん増えて50を超す自治体も現れ、中小飲食店などの実態に合わないものになっています。複雑にした認証制度を協力金の支給条件とするべきではなく、要件を緩和することを求めています。

「完全無利子」に

 「③資金繰り支援の強化」では、2月から「セーフティネット貸付」「セーフティネット保証」を皮切りに、制度の拡充や新設が行われています。多くが利用する日本政策金融公庫の「新型コロナウイルス感染症特別貸付」は据え置き最長5年、3年間の無利子を実現していますが、早くも2年が過ぎようとしています。感染収束の見通しが立たない現状を踏まえて「完全無利子」とし、条件変更や追加融資への積極的な対応を求めています。


 >> 総選挙で一新!全商連五つの緊急要求②

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