滋賀県東近江市議会は6月30日、「インボイス制度の導入中止を求める意見書」を採択しました。意見書では、「500万を超える免税事業者が取引から排除されるおそれがある」ことなどを指摘し、インボイス制度の導入中止を強く求めています。きっかけは、湖東民主商工会(民商)が提出した「国にインボイス制度の中止を求める意見書提出を求める」請願書でした。
湖東民商では、インボイス制度の内容を繰り返し学習。一方、役員や事務局員がコロナ禍で給付金や支援金の手続きに追われ、インボイス制度の内容や問題点が会員に十分に伝わっていない状況でした。役員会で「これじゃ、あかん。10月から課税事業者の登録申請が始まる。実施を中止させるため、自治体に請願書を提出しよう」と話し合いました。
まずは6月30日、東近江市議会に請願書を提出。廣田耕康、田郷正の両議員(共産)に紹介議員になってもらうよう要請しました。その直後、東近江市民クラブ(自民党系会派)から「こちらでも、インボイスの意見書を提出したい。他の会派にも働き掛けて、多くの会派が賛成しやすくしたいので、請願書を取り下げてもらえないか」との申し出がありました。
市民クラブの意見書案には、「大幅な景気後退を経験し、いまだ深刻な状況が続いている」「中小・小規模事業者にとって、消費税の転嫁が困難な状況にある下でのインボイス制度導入は、廃業の増加や地域経済の衰退に拍車をかける」などインボイス制度への懸念と、中小業者の厳しい実情を訴える内容が書かれていることから、民商では請願書を取り下げ、意見書に一本化することに。
本会議では、市民クラブの議員が「コロナ禍で中小業者の営業が困難な状況に追い込まれている時に、インボイス制度の導入は行うべきではない」と賛成討論を行い、公明党の議員が「インボイス制度が導入されたら、益税が解消される」などの反対討論を行いました。意見書は日本共産党、東近江市民クラブ、太陽クラブ、新政無所属の会らの賛成多数で可決され、反対したのは公明党議員2人だけでした。
本議会を傍聴した藤関福樹副会長=建築=は「いま大事なのは、小規模事業者をつぶしかねないインボイス制度の本質を知らせ、反対の世論を高めていくこと。世論の高まりが、今回の党派を超えての意見書可決につながった。今後、東近江市議会以外の自治体にも請願書を提出したい」と話しています。