国税庁が、政府の意向を受け「酒類の提供停止を伴う休業要請に応じない飲食店との酒類の取引停止について」との事務連絡を酒販組合に出していた問題で、全国商工団体連合会(全商連)は14日、国税庁に対して事務連絡の撤回、酒類販売業者の経営が成り立つ支援を求めて要請しました。
国税庁の担当者は「一般的なお願いと考え、発出に至ったが、混乱を招いて申し訳ない」と謝罪しました。同席した大門実紀史参院議員(共産)が「間違いであったとは認めていないのか」とただしましたが、誤りは認めませんでした。
全商連の中山眞常任理事は、東京都が月次支援金の申請に当たり、酒販店などに「飲食店が酒類の提供停止に伴う休業要請等に応じていないことを把握した場合には当該飲食店との取引を行いません」との誓約を求めていることを取り上げ、「同様の問題だ。国税庁としては撤回を求めるべきではないか」と追及しましたが、「伝える」と述べるにとどまりました。
全商連の岡崎民人事務局長は「営業の自由の侵害は明らか。苦境にある酒類販売業者を脅すのではなく手厚い支援を」と求めました。
法的根拠ない「圧力」 事務連絡撤回するも菅政権の強権あらわ
14日の国税庁交渉で、全商連が指摘した酒販店の「誓約書」が国会でも取り上げられ、政府が6月に都道府県に対して、酒類販売業者に酒提供店との取引停止を依頼する事務連絡を通知していたことが明らかになり、同日夜、政府は同通知を廃止したと発表しました。
政府は、新型コロナウイルスの感染拡大で売上高が減った飲食店の関連事業者等に支援金を支払っています。6月11日付事務連絡で、都道府県知事の休業要請に従わない飲食店との取引がある酒販業者への支給は「適当ではない」と明記していました。
東京都は、政府の指示を受け、月次支援金を申請する業者に「酒類の提供を伴う休業要請等に応じていないことを把握した場合には当該飲食店との取引は行いません」との誓約書を求めていました。
西村康稔経済再生担当相は10日、新型コロナウイルス対策に従わない飲食店に対して金融機関からの働き掛けを求めた自らの発言について「ご迷惑をお掛けした。飲食店の皆さまに不安を与え、本当に反省している」と謝罪しています。
コロナ対策の特別措置法にも、緊急事態宣言の基本的対処方針にも書かれていない法的根拠のない要請を、政府は金融機関、業界団体、自治体にも行い「圧力」をかけていたことが明らかになり、改めて菅政権の強権的な姿勢があらわになっています。政府は「混乱を招いた」「迷惑を掛けた」と事務連絡を撤回しても「過ち」を認めていません。