「今すぐやめろ“不備ループ”」「中企庁は業者を救え」「オリパラよりも命が大事」―。14日、経済産業省前で怒りのコールが響き渡りました。全国商工団体連合会(全商連)が開いた緊急の抗議集会には、首都圏はもとより愛知、大阪、兵庫などから50人が参加。一時支援金の事務局が不備メールを乱発し、申請者への支給が遅れる一方で、制度を悪用した、経産官僚の給付金詐取事件が発覚したことを糾弾。中小企業庁と国税庁とも交渉し、「不備ループ」の実態を告発し、審査状況の開示や対応改善などを求めました。
「酒を卸すなとは、どういうことか」 全商連が経産省前抗議 「五輪よりも命」訴え
東京都に4度目の緊急事態宣言が発令(12日)された直後に開かれた抗議集会。国は、飲食店に対して金融機関や酒販店を利用して「国の命令に従わなければ、融資も仕入れも止めるぞ」と圧力をかけようとしたため、国民の怒りは爆発。西村康稔経済再生担当相は発言撤回に追い込まれましたが、参加者の怒りは収まりません。
「ここの髪の毛が抜けているだろ」と前頭部を見せてくれたのは、世田谷区内で和酒の店を営むIさん。コロナ禍で円形脱毛症になりました。「120軒ほどの飲食店に酒を卸しているけど、コロナ禍で10軒が廃業した。飲食店とは長い付き合いの中で、信頼関係を築いてきた。そこに酒を卸すなとは、どういうことだ。撤回だけでは済まされない」と激怒。
豊島区でスナックを経営するSさんも「飲食店だけが悪者扱いにされるのは、許せない」と怒り、都の時短協力金の支給遅れにも憤慨しています。「4月以降は全く入金されていない。4度目の緊急事態宣言で経産省は協力金を先渡しすると言うが、『初めからやれ』と思う。経営者も従業員もつらい思いをしている。給付を急いでほしい」と訴えます。
政治責任果たせ
集会では、太田義郎会長が主催者あいさつ。「緊急事態宣言やまん延防止等重点措置を出しながら、東京五輪は開催を強行する。新型コロナの封じ込めに失敗したのは、菅政権による人災だ。一方で、不備メールを乱発し、業者は支援金を受け取れない。政府は中小業者の声を聞き、政治責任を果たしてほしい。力を合わせてコロナ危機を乗り越えよう」と訴えました。
一時支援金の登録確認機関として、中小業者を支援してきた税経新人会事務局長のI税理士は「同じ書類でも支給される時とされない時がある。不備メールが次から次に届くと精神的にやられてしまう。国は、丁寧に説明すべき」と声を大にしました。
神戸市内のO税理士は「約600人の事前確認業務を行い、60人に不備メールが届き、給付は塩漬け状態。申請者本人と面談して確認作業を行った結果がこれでは、税理士の面目丸つぶれ」と怒りのメッセージを寄せました。
「政府から出された金融機関と酒販組合への要請は、営業の自由を脅かすもので憲法違反」と訴えたのは、K弁護士。「憲法によって営業の自由が保障されている。中小業者に今必要なのは脅迫でなく、支援」と強調しました。
全商連の中山眞常任理事は「監督官庁の国税庁が、酒販店に号令をかけて飲食店を従わせようとしたことは重大だ。かつて、戦争中に『欲しがりません、勝つまでは』と、コメ店や酒店が廃業させられ、国の配給に取って代わった。感染拡大リスクから目を背け、オリパラ開催に突き進む姿も、『大本営』と変わりない」と厳しく批判。「誰一人取り残さない給付の実現へ力を合わせよう」と呼び掛けました。
集会には、日本共産党の藤野保史衆院議員、武田良介、山添拓の両参院議員が激励に駆け付けました。
“不備ループ”解消を 全商連が中企庁要請 審査の改善約束
全商連は14日、一時支援金の不備メール問題で、審査に関する情報提供を求める要請書150人分を中小企業庁に提出。「審査状況の開示、審査を打ち切らないこと、システム改善」などを求めました。国会内で開かれた同庁との交渉には首都圏や兵庫などから30人が参加。いわゆる「不備ループ」の実態をリアルに告発しました(下の関連表)。
全商連の岡崎民人事務局長は「4回目の緊急事態宣言が発令されたが、まだ1月、2月の支援金さえ届いていない。迅速で柔軟な対応を」と強く求めました。
愛知で卓球教室を営んで22年の植木扶佐子さんは「行政書士に事前確認を受けたのに1カ月後、解読不能のメールが。何が不備か分からなかった」と怒りをぶつけました。「売り上げを確認できる金融機関発行の書類が必要と分かったが、現金で利用料をもらうので、そんなものはない。エッセンシャルワークでなければ、人として扱われないのか」と理不尽な対応の是正を求めました。
神戸市灘区でエステサロンを営む赤星麻未さんは「不備メールが4回。資料を追加しても10分後、不備メールが届く。内容を確認しているとは思えない。細々としたサロンでは経営の実態が認めてもらえないのか。審査基準を明らかに」と要望しました。
東京でギャラリーを経営するSさんは「美容院を営む母と同日同時刻に同じ内容の不備メールが来た。経営の実態が見えないというなら直接、見に来てほしい」と訴えました。
兵庫・西宮民主商工会の大前克己事務局長は、申請した約2割が不備ループから抜け出せないと述べ、「不備解消する方法を教えると、不正の方法を教えることになる」としたコールセンターとのやり取りの音声データを書面で紹介。審査事務局のでたらめな委託業務の実態を告発し、改善を迫りました。
中小企業庁の担当者は「不備ループの改善を進めつつあるが、追い付いていない。しっかり対応していきたい」と善処を約束しました。自由法曹団の本間耕三弁護士、日本共産党の清水忠史衆院議員、大門実紀史、田村智子の両参院議員が同席しました。