運動で国保改善勝ち取る|全国商工新聞

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 コロナ危機が長引く下、各地の自治体が民主商工会(民商)などの要請に応え、国民健康保険(国保)加入者の支援に乗り出しています。宮城県柴田町では事業主にまで傷病手当を拡大、埼玉県や北海道大雪地区広域連合は、コロナ特例減免を実施する市町村に独自の支援制度を創設しています。

【宮城県柴田町】事業主にも傷病手当 仙南民商 町長と懇談し実現

滝口茂町長(左)に要請書を手渡す日下秀雄会長(中央)と広沢真町議

 「柴田町でも、国保傷病手当の対象を事業主にも広げるぞ」―。電話口でこう宣言したのは、同町の滝口茂町長。宮城・仙南民商が先ごろ、「新型コロナウイルスに感染した事業主にも傷病手当金の支給を」と要請したことへの回答です。
 事業主への傷病手当金は、国からの財政支援がなく、財政課との調整に時間がかかりましたが、6月議会で「個人事業主を対象とした傷病給付金の創設」を決定しました。新型コロナウイルスの療養のため、3日以上事業を営むことができなくなった事業主に、4日目から支給し、期間は最長で1年6カ月。支給額は1日当たり6千円で、適用期間は4月1日から9月30日までです。
 同町との懇談には、仙南民商の日下秀雄会長、菊地正副会長、船木信一郎会計、小室さとみ事務局長と広沢真町議(共産)が参加。①昨年に引き続き、売り上げが減少した事業主に対する町独自の支援金制度②国保減免の簡素化と昨年並みの減免③コロナに感染した個人事業主への国保の傷病手当金の支給―を要請。
 応対した滝口町長と商工観光課の担当者から、既に事業主にまで傷病手当を拡充した県内の松島町が、どう実施しているかなどの質問が出され、「柴田町でも傷病見舞金くらいなら予算が取れる」と、前向きな姿勢が示されていました。
 民商が自治体交渉に取り組むのは4年ぶり。経験不足からなかなか動けずにいましたが、コロナ禍で地域の業者の状況があまりにもひどく、国が第3次補正予算で決定した地方創生臨時交付金を何としても中小業者支援に充ててほしいと決意しました。担当エリアの2市7町のうち、これまでに白石市、丸森町、柴田町、川崎町の1市3町と懇談。丸森町では持続化給付金の申請などで地域の業者に民商を紹介したり、川崎町では要請後に事後報告を寄せてくれるなど自治体に変化が出てきています。今後も、地域の業者の営業と暮らしを守る立場で、自治体と連携を強めていこうと話し合っています。

【埼玉県】減免自治体に支援 県連などの要請実る

 埼玉県は6月8日、各市町村の国保主管課に向けて事務連絡を発出し、国保コロナ特例減免を実施した自治体に対し、自治体負担分の半額を県が独自に財政支援すると通知しました(表1)。国からの特別交付金(県繰入金)の金額によるとされていますが、コロナ特例減免に二の足を踏む自治体の背中を押す支援です。深谷民商が、深谷市にコロナ特例減免の実施について確認した際に明らかになったもの。

 今年度、国の財政支援が減少したことにより、コロナ特例減免を実施する市町村の財政負担が増えることから、ためらう市町村が出るのではと危惧され、5月の県国保医療課との懇談で、埼玉県商工団体連合会(県連)と埼玉県社会保障推進協議会が要請していたものです。
 懇談に参加した県連の金澤利行副会長は「自分たちが要請したことが形に表れて、うれしい。コロナ危機が長引き、動けば成果が見えやすい状況だ。今後も自治体との懇談を積極的に行っていきたい」と話しています。

【北海道・大雪地区広域連合】1世帯3万円減額 独自の減免制度

 北海道の中央に位置する東川、美瑛、東神楽の3町で構成する大雪地区広域連合は、2021年度の国保料を1世帯約3万円(営業所得300万円、家族4人の場合)引き下げるとともに、独自の減免制度を創設しました。
 6月14日、「令和3年度に行う国民健康保険(国保)減免制度について」を議会で決定。その内容は、①高校卒業までの子どもの均等割を2分の1に(減免後の金額の納付書を発送)②7割軽減を受けている65歳以上の均等割を全額免除(対象者に減免申請書を発送)③持続化給付金などを受けたり、事業所得などが赤字になるなど、国のコロナ特例減免基準には該当しない世帯で大雪広域連合の基準に該当する者を減免(表2)―です。広域連合の担当者は「予算は約2200万円で、3町の町長からの要望で実施することになった」と話します。

 東神楽町に住む旭川民商のTさん=建築塗装=は、子ども2人を含む4人家族です。「コロナ禍は仕事に大きく影響していませんが、長男が親元を離れて大学に通っているので、お金がかかる。国は子育て応援と言いつつ、国保の均等割で子ども一人ずつに国保料を負担させている。広域連合の減免基準は、子育てを支えてくれているように思えて、うれしい」と話します。
 前出の担当者は、21年度の国保料引き下げについて「昨年、国が実施したコロナ特例減免で、収入が3割以上減少した国保加入者の保険料を国が100%財政支援したため、収納率が上昇。今年度、広域連合への賦課が5千万円ほど減った。これを基金に積み上げるのではなく、保険料引き下げに充てた」と話しました。

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