「コロナ禍で、支援補助金全額を滞納分として納付させられたら、事業も生活も立ち行かなくなる」―。北海道紋別市が、市税を滞納している市民に「紋別市新型コロナウイルス経営継続支援補助金(2月実施)」が交付された場合、滞納分に充当することを誓約させていた問題で、北見民主商工会(民商)と北海道商工団体連合会(北海道連)は先ごろ、市に抗議し、納税誓約書に書かれた「最低生活費を考慮しない」との文言を撤回させました。
この問題は2月、民商が会員から相談を受けて発覚したもの。
納税誓約書の備考欄に「誓約不履行となった場合は、債権差押による最低生活費を考慮しないこととする」と、憲法で保障された生存権に反する文言が記載されていました。納税誓約書を書かされたのは市全体で45人。うち3人が完納し、22人が一部納付を済ませたことが、野村淳一市議(共産)の調べで判明しました。
民商の森田勇樹事務局長は、会員からの相談を受け、3月30日に紋別市に申し入れ。応対した納税係の係長や主任らは「必ずしも支援補助金全額を納付することを条件とする意図はなかった。説明を聞いて納得の上で誓約してもらった」と開き直りました。森田事務局長は「実際は、納税誓約書を書かないと、支援補助金を申請できない状況だった。認識に違いがある」と抗議しました。
4月28日にも再度、相談者の会員と一緒に市に申し入れ、納税誓約書に書かれた「最低生活費を考慮しない~」の文言を削除するよう抗議。事業や生活の実態を説明し、2月に提出した納税誓約書をいったん破棄させ、今後の分納について相談しました。
紋別市は、コロナ禍の影響を受けた飲食店や宿泊業、バス・タクシー業者などに随時、支援補助金を支給してきました。
一方、議会などでは、保守系の議員から「市税を滞納している事業者にも給付するのか」との声が上がり、市は「これらの支援補助金はコロナ禍に関してであり、滞納とは関連しない」と答弁していたものの、2月の支援補助金の審議の際にも同様の指摘を受け、「何らか検討する」と答弁。支給要綱に初めて「市税等に滞納がないもの」という文言が入り、市税を滞納している市民が支援補助金を受ける際には、納税誓約書を書かせることになったものです。
民商では今後、再発防止の徹底と納税緩和措置の活用、憲法に基づいた滞納整理マニュアルの策定を求めて改めて申し入れを行う予定です。
国税庁が文書発出 「コロナ対策助成金」差し押さえ慎むべき
持続化給付金などの「コロナ対策助成金」の差し押さえについて、国税庁は「新型コロナウイルス感染症関連の助成金等に対する差押えについて」と題する文書を、各国税局と沖縄国税事務所宛てに発出(2020年4月2日)。滞納整理時の差し押さえを行う場合は、コロナ対策助成金に該当しないことを確認するよう求めています。
また、給与や児童手当など差し押さえ禁止財産が預貯金口座に振り込まれた場合も、差し押さえ禁止財産は差し押さえないことなどを求めています(同1月31日指示)。
衆院財務金融委員会(同11月24日)では、清水忠史議員(共産)がこの問題を取り上げ、「持続化給付金や家賃支援給付金などは、コロナ対策助成金に含まれるか」と質問。
国税庁は含まれることを認め、「持続化給付金については、その趣旨が経済的な影響を受けた事業者等への支援であることを踏まえ、持続化給付金の支給を受ける権利、債権を直接差し押さえて使用できなくすることや、残高のない預金口座に振り込まれた持続化給付金の狙い撃ち的な差し押さえなどは慎むべきもの。慎重な対応を行う旨を各国税局、税務署に指示した」と答弁。
総務省も、「地方税や国民健康保険料・税などについても、売り上げの急減により納税資力が低下している納税者に柔軟に対応するよう地方団体の税務当局に要請した。滞納処分によって生活を著しく窮迫させる恐れがある時は、執行停止できる」と答弁しました。
また、神戸地裁伊丹支部では、兵庫県在住の飲食店経営者が債権差し押さえ命令の一部取り消しを求めた裁判(昨年11月)で、「給付金の目的はコロナ禍で影響を受けた個人事業者らの事業継続を支え、再起の糧とすること。持続化給付金の性質上、差し押さえは認められない」とする判決が出されています。