第3回いのちとくらしを守る税研集会(主催=同実行委員会)が5月29、30の両日、都内の建設プラザを会場に、オンラインで全国を結んで開かれました。13県商工団体連合会(県連)を含む延べ222人が参加しました。
1日目は、立教大学の芝田英昭教授と東京税財政研究センターの岡田俊明理事長が講演。芝田氏は、「全世代型社会保障検討会議」(2019年9税金と社会保障の問題を深め合った、第3回いのちとくらしを守る税研集会月設置)の三つの報告書の問題点に触れながら、検討会議の基本的視点は「自助・共助・公助」の延長線上にある「全世代への負担増だ」と述べ、「社会保障における公的責任を放棄し、自己責任や住民相互の責任にすり替えるもの」と批判しました。また、社会保障分野でのデジタル化推進の狙いに触れ、「介護分野などの人員を削減し、財界の新たなもうけ先にしようとしている」と指摘しました。
デジタル化拡大
岡田氏は、21年度予算と税制改正大綱の特徴と問題点を解明。社会保障費を削減する一方で、軍事費は5兆円を超え、7年連続、最高額を更新したと指摘。「デジタル化に1900億円(補正予算含め)を計上したのに対し、中小企業対策費はわずか1700億円、全体の0・6%しか占めていない」と批判しました。また「国税庁は10月にもNTTデータが開発したシステムを利用し、金融機関への預貯金照会をデジタル化する。日本年金機構は、すでに財産調査業務において同システムを導入しており、納税者の権利が侵害されかねない事態が急速に広がっている」と報告しました。
第1分科会「社会保障と財源」は、不公平な税制をただす会共同代表の菅隆徳税理士が「所得税や法人税、相続税を累進課税にし、株の利益や配当所得を増税すれば、消費税に頼らずに社会保障の財源は生まれる」と強調。「コロナ禍で英国や米国で法人税引き上げ、富裕層への課税強化などが提案されている」と紹介しました。
中央社会保障推進協議会の山口一秀事務局長は、コロナ禍で自己責任を国民に迫り、社会保障に対する国の責任を放棄する菅首相を批判しました。
第2分科会「コロナ禍における税務行政の変化と税務調査の動向」では、八代司税理士が、ICT(通信情報技術)・AIの進展や、複数税率やインボイス制度の導入など、税務行政を取り巻く環境の変化に伴って、国税庁がデジタル化を推進しようとしていると指摘。「電子申告は大法人だけでなく、中小法人への義務化も狙っている。紙媒体での申告提出の拒否は、納税申告の手続き保障に対する重大な侵害」と批判しました。税務調査では、実地調査以外の調査や行政指導で消費税の課税、無申告への対応を重点にしていると強調しました。
TCフォーラム事務局長の平石共子税理士は、納税者の権利を侵害する税務調査や滞納処分の実態を取り上げ、「課税庁主役から国民・納税者主役への転換へ、納税者と課税庁との信頼関係を強固にするため、納税者の権利憲章が必要」と訴えました。