今号からスタートする、不定期連載企画「創立70周年へ 民商・全商連のこの10年」。第1回は、消費税を巡るたたかいです。
党派超えた共同広げて 二度にわたり10%阻止
1989年に消費税が導入されてから今年で33年目を迎えます。政府は「社会保障のために消費税が必要」と強弁してきましたが、社会保障は充実するどころか改悪の連続。実際には消費税は法人税や所得税引き下げの穴埋めに使われてきました。この10年間のたたかいを振り返ると―。
2012年3月30日、当時の野田佳彦内閣は14年に8%、15年に10%に引き上げる消費税増税法案を閣議決定しました。中小業者をはじめ労働者や農民、主婦、年金生活者など、あらゆる階層から怒りの声が沸き起こりました。
当時、全商連常任理事で愛媛県連会長だった川原光明さんは「地域では消費税学習会が次々と開かれ、『増税は仕方ない』と言っていた自民党や民主党の町会議員も学習会に参加して『白紙に戻して考え直したい』と変化。老人クラブからも私に講師依頼が来て驚いた。学習会や街頭宣伝では、手書きのポスターを作って、消費税が社会保障費に使われていない事実を、グラフや図を示して訴えると共感が広がり、目に見える変化に励まされた」と振り返ります。
12年6月23日、東京・明治公園で開かれた「怒りの国民大集会」には全国から2万4千人が集結。ムシロ旗を掲げるなど、10%増税阻止の決意を固めました。ところが、民主、自民、公明の3党は8月10日、消費税増税法案を成立。その後、政権交代で、第2次安倍内閣は14年4月、税率8%を強行。8兆円もの国民負担を押し付けました。
景気は落ち込み、金融緩和政策を目玉にした「アベノミクス」が景気悪化に拍車を掛け、「消費税増税の中止・凍結」を求める世論に追い詰められた安倍政権は同年11月18日、翌年の10%への引き上げを17年4月に延期すると表明。アベノミクスの是非を問うとして衆院を解散しました。
一方で安倍政権は、10%への増税時に食料品などの税率を8%に据え置くための軽減税率制度を盛り込んだ法案を国会に提出(16年2月5日)、インボイス(適格保存請求書)制度の導入を打ち出しました。
太田義郎・全商連会長は衆院財務金融委員会(同2月21日)で、参考人として意見陳述を行い、「業者の6割を占める売上高1千万円以下の免税業者が取引から排除される」と抗議。10%への増税と併せてインボイス制度の中止を求めました。同年7月の参院選を目前に控えた6月1日、安倍首相は10%への引き上げの再延期(19年10月)を表明。世論と運動が二度にわたって、税率10%への引き上げを阻止しました。
10%増税を翌年に控えた18年12月14日には、映画監督の山田洋次さんやタレントの室井佑月さんら10人が呼び掛け人となって「10%ストップ!ネット」を結成。19年7月の参院選では、32の1人区で野党候補の1本化が実現し、消費税10%への延期が共通政策に盛り込まれました。
しかし、安倍政権は10月1日、税率10%への増税と複数税率の実施を強行。全商連は抗議声明を発表し、「私たちは決してあきらめない。共同をさらに広げ、消費税5%への引き下げ、複数税率・インボイス制度の即時廃止の実現をめざして全力を挙げる」と決意を示しました。
全商連常任理事を退いた後も川原さんは、周桑民商の仲間とともに、宣伝や署名活動に奔走。コロナ禍で消費税を減税した50以上の国名を知らせるため、縦2メートル、横90センチの手書きのジャンボポスターを作成し、街頭で訴えています。
「足を踏み出して商店街に入って署名を訴えると、ほとんどの店主が応じてくれる。コロナ危機の下で消費税減税が世界の流れだ。英国や米国のように法人税を引き上げる国もある。消費税にあえぐ業者の声を受け止め、消費税減税、インボイス制度中止を何としても実現したい」