「これで助かる」歓迎の声 日俳連など3団体 厚労省に訴え実現
仕事でけがをしたり、病気になった時に治療費などが給付される労災保険。4月1日から芸能従事者、柔道整復師、アニメーション制作従事者の3業種が新たに特別加入できることになりました。長年、対象拡大を求めてきた人たちから、「これで多くの人が助かる」と喜びの声が上がっています。
想定される対象者は、芸能従事者が俳優などの実演家と製作関係者、マネージメント従事者を合わせて約21万8千人、柔道整復師が約7万3千人、アニメーション制作従事者が約1万人―とされています。
厚生労働省の労災保険部会(昨年12月18日)では3業種について、「ポリープ・声枯れ、炎症、ヘルニア、椎間板ヘルニア、捻挫」(芸能従事者)、「介助による腰痛、腕の負傷、ベッド移動による打撲、転倒、施術中の手のひねり」(柔道整復師)、「腱鞘炎、腰痛、切り傷」(アニメーション制作従事者)など、けがや事故の状況などが報告されました。3団体の代表は「1963年から57年間のけがや事故例を示した。多くの人たちが望んでいる制度なので、ぜひ適用を」(日本俳優連合・略称日俳連)、「コロナ禍で治療を受ける人との接触を避けられず、柔道整復師が安心して治療を継続できるようにしてほしい」(日本柔道整復師会)、「作品づくりが最優先になり、健康や災害について省みることがないが、十分な補償があると安心できる」(日本アニメーター・演出協会)などと訴えました。
さらに業種拡大を 全商連など 改善求め学習会
全国商工団体連合会(全商連)は1月21日、日俳連や日本マスコミ文化情報労組会議、フリーランス連絡会とともに「#MeToo労災 フリーランスと芸能従事者の勉強会」を開催。日俳連の森崎めぐみ国際事業部長は「芸能界は非常に事故の多い業界。しかし法的保護がなく、契約書を交わす慣例もないため、トラブルは隠されがち。労災保険に加入できれば、かなり安心。多くの人が助かる」と対象拡大を歓迎しました。
今回、労災保険への特別加入を拡大されたのは3業種ですが、全商連は、全ての業種で中小業者と家族従業員が労災保険に加入できるよう求めるとともに、労災補償への国庫負担を増やし、小規模事業所の労働保険料率(雇用保険含む)の引き下げを要望しています。
労災保険の「特別加入」
労災保険とは、業務をしている最中や通勤による労働者の負傷・疾病・障害または死亡に対して、必要な保険給付を行う制度です。対象は労働基準法に規定する労働者(パートやアルバイトも対象)。
事業主や会社役員は対象外ですが、以下の要件で特別加入できます。
〈第1種特別加入〉
中小事業主等と認められる業種と規模(表)。
〈第2種特別加入〉
①一人親方等。代表的なものとして、個人タクシー業者や個人貨物運送業者(「赤帽」など)、大工・左官・とび職人など。柔道整復師は第2種に加わります。
②特定作業従事者。特定農作業、指定農業機械作業、国や地方公共団体が実施する訓練従事者、危険有害作業を行う家内労働者およびその補助者、常時労働者を使用しない労働組合等の一人常勤役員、介護作業従事者。ここに、芸能従事者、アニメーション制作従事者が加わります。