新型コロナに感染したり、濃厚接触者となった事業主やフリーランスなどにも、国民健康保険(国保)の傷病手当を―。厚生労働省は昨年3月、国保の被用者(雇われている人、青色・白色を問わず全ての家族従業者)を対象とした自治体の傷病手当金制度に国が全額財政支援する措置を創設。対象拡大を求める声が広がる中、9自治体が事業主まで対象を広げ(表1)、11自治体が傷病見舞金として事業主に支給することを決めました(表2)。
臨時交付金を財源に 長野県・上伊那民商の要請実る
長野県伊那市は昨年の10月臨時議会で、国保の傷病手当を事業主まで広げることを全会一致で採択。10月末から制度を開始しました。予算は500万円(日額5千円、1千日分)を計上。これを受け、上伊那民主商工会(民商)は、対象者にいち早く知らせ、これまでに飲食業や建設業の会員3人が申請を進め、傷病手当を受給しています。
新型コロナに感染した会員は「入院・療養となり、商売を再開できるまで1カ月近くかかった。退院後、民商の仲間から励まされ、各種給付金や傷病手当の申請準備を進めている。事業主はコロナにかかり休業しても、補償も何も無いと思っていたので非常に助かる」と話します。
従業員が感染し、濃厚接触者となった会員は「保健所の指導で自宅隔離となり、1週間以上休むことに。各種の給付金だけでは足りず、事業の回復をめざし頑張っていた矢先なので不安で仕方なかった。傷病手当が事業主、さらには濃厚接触者にも適用になると聞いて、すぐ申請手続きを行った。決して十分な金額ではなかったが本当に助かった」と話します。
上伊那民商は8月20日、「第2次補正予算案を改善し中小業者支援の強化を求める要望」を市に提出。営業継続の支援策や国保傷病手当の対象を事業主、フリーランスまで拡充することを求めました。
鈴木正巳会長と滝沢孝夫副会長は9月2日、伊那市議会社会委員会と経済建設委員会の合同委員会に呼ばれ、趣旨説明を行いました。鈴木会長は「コロナ禍で、伊那市の中小業者は大変苦しい。今の制度のままでは、コロナに感染した事業主は、国保の傷病手当の対象にならず、休業中の補償が受けられない」と業者の窮状を伝え、事業主も対象にするよう求めました。
趣旨説明を受け、社会委員会は「意見はもっともだ。コロナ対策に関しては条例の変更がなくても、地方創生臨時交付金と市の財源で実現は可能」と全会一致で採択。本会議でも賛成多数で採択されました。