今年の民商・全商連運動 全商連事務局長・岡崎民人に聞く コロナ禍に光る民商の役割|全国商工新聞

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 政府の無策によりコロナ禍が拡大し、多くの中小業者が不安を抱えながら迎えた年の幕開け。地域の中小業者を救い、全商連70周年をどういう運動と組織建設で迎えるのか-。全商連の岡崎民人事務局長に聞きました。

誰一人取り残さぬ立場で

 -今年をどう展望しますか。
 新型コロナウイルス感染症が拡大し、2回目の緊急事態宣言が出されました。新自由主義に固執し、日本経済と国民・中小業者の生活と経営に深刻な影響を与えた菅政権の責任は重大です。
 人事で異論を排除する強権発動、自己責任を強いる冷酷な政治、コロナ禍に乗じて中小企業を半数へと「淘汰」する成長戦略など、危険性と政権担当能力の欠如は明らかです。
 こんな時だからこそ、人と人の結び付きを大切にし、励まし支え合う民商の役割はますます大切です。中小業者の要求実現に親身に応え、よりどころとなっている民商・全商連を、創立70年の節目の年に大きく発展させたいと思います。
 -新型コロナ危機が広がっています。
 持続化や家賃支援の給付金など、これまで政府や自治体がかたくなに拒否してきた直接支援の道をこじ開けてきました。
 民商関係での両給付金の実行額は658億円を超えています(12月20日時点)。また、雇用調整助成金や持続化補助金の拡充、著作権使用料や固定資産税の減免など多彩な成果を広げました。「国民健康保険(国保)に傷病手当を」という40年来の要求も一部実現しました。
 「先が見えない」「協力金では赤字。休業する」など悲痛な声が広がっています。「誰一人取り残さない」立場で、命と暮らし・営業を守る運動が切実です。
 持続化給付金の再給付、中小業者への直接支援、消費税率引き下げ・納税免除などを求める、「コロナ危機打開緊急署名」を地域で広げます。
 -経営要求も高まっていますが…。
 全自治体要請を呼び掛けて6年です。政策提案を継続し、危機に直面する中小業者への支援策を継続・拡充させましょう。
 「集まって、話し合い、相談し、助け合う」活動こそ、民商運動の原点です。集まりにくい場合はウェブも活用し、「商売を語る会」、業種別・問題別対策を強めます。仕事と顧客確保、資金繰り対策、業態転換を含む変化への対応など困難に立ち向かう力を高めます。

消費税率引き下げは切実

 -消費税率引き下げが切実です。
 2021年度政府予算案の国会審議がいよいよ始まります。
 税のあり方と使い道を正さなければなりません。過去最高の軍事費を削減して、社会保障やコロナ対策の予算を増やすことが求められます。
 中小企業予算は、在日米軍の「思いやり予算」2117億円を下回る1745億円にとどまり、増額が必要です。
 政府は、デジタル化に向けた法案を提出し、マイナンバーと預金口座をひも付け、健康保険証や運転免許証の機能を持たせるなどマイナンバーカードを取得せざるを得ない状況をつくろうとしています。個人情報を収集管理し、プライバシーの侵害や国による自治体の一元管理など危険な狙いを知らせ、法案阻止をめざします。
 消費税率10%が景気を悪化させ、経営を圧迫しています。消費税の廃止こそ、民商・全商連が一貫して掲げてきた要求です。税率引き下げを求める国会議員が3割を超え、日本の消費税に当たる付加価値税の減税は世界50カ国に広がっています。莫大な利益を上げ内部留保を蓄える大企業や、大もうけしている富裕層に適正に課税すれば、消費税率引き下げ・廃止の財源が生まれます。5%への引き下げと、複数税率・インボイス制度の廃止に全力を挙げます。
 確定申告では、納税者同士で学び合い、自ら記帳・計算し、申告書を仕上げることが大切です。3・13重税反対統一行動は、自主申告運動への弾圧をはね返すとともに、地域の広い団体との連携も強めます。法人申告の会員にも呼び掛け、工夫して成功させましょう。

総選挙で政権交代めざし

 -平和・民主主義を守る取り組みをどう進めますか。
 改憲阻止、軍拡・基地強化反対、環境破壊防止、ジェンダー平等社会の実現など、さまざまな運動を相乗的に推進することが、立憲主義・民主主義・平和主義を回復させることに結び付いています。
 沖縄の辺野古新基地建設は、「オール沖縄」の団結と県民の「新基地ノー」の決意を共有し、全国の支援で中止させます。日米地位協定の抜本的見直しを求める世論と運動も広げます。
 ヒバクシャと市民の粘り強い運動で、核兵器禁止条約が今月22日に発効します。唯一の戦争被爆国・日本政府に署名と批准を迫るたたかいも大きく広げます。
 -年内には総選挙があります。
 市民と立憲野党の共闘が前進しています。「市民連合」が示した15項目の要望書は、新自由主義からの転換、消費税率引き下げ、核兵器禁止条約の批准が盛り込まれています。政策に基づく統一候補擁立の動きも加速し、次の総選挙で政権交代の条件が広がっています。
 あらゆる選挙を中小業者の要求実現の機会とし、改憲阻止・消費税率引き下げ、国保や社会保険制度の改善、循環型地域経済の確立に力を合わせます。全ての政党・会派、議員・候補者に中小業者の実態と要求を届け、市民と野党の共闘に地域で貢献します。

70周年力に共同の時代を

 -仲間づくりも期待されています。
 中小業者が役割を発揮できる社会を実現するには、道理を掲げ、団結を強め、国民共同を推進する民商・全商連が大きくなることが大切です。地域にどんな民商をつくるのか、展望を語り合いましょう。
 「困った時には力になる」のが民商です。コロナ対策の相談では、「民商があって本当に良かった」の思いが広がりました。積み重ねてきた成果や実績、仲間がいて温かい民商の魅力を、地域の中小業者に知らせていきましょう。
 全国の奮闘で、2020年は24年ぶりに会員で増勢にすることができました。
 8月3日の全商連創立記念日を節目として、会勢の反転攻勢に挑戦し、地域の中小業者の多数派結集をめざします。商工新聞の積極活用、学習を力に、助け合いが実感できる班・支部建設を推進します。
 家族一人一人の要求を大切にし、力を合わせて困難を解決するのが民商・全商連運動です。共済会は、中小業者の健康実態を告発し、地域の医療や介護を守る共同に貢献し、いのちと健康を守る助け合いの輪を広げます。婦人部は、所得税法第56条の廃止、ジェンダー平等への理解を広げ、業者婦人の「いのち・暮らし・商売」を守ります。青年部は、経営意欲を高め合い、業者青年に魅力ある民商づくりを追求します。
 -今年は創立70周年を迎えます。
 民商・全商連の70年は、中小業者の要求実現を阻むものとのたたかいの中で培われ、団結の力で“道なき道”を切り開いてきた創造と探求の歴史です。中小業者のあらゆる苦難に手を差し伸べ、国民全体の幸せと固く結び付いて奮闘してきました。
 積み重ねてきた歴史や政策提案、実績、役割を学び確信にしていくことが大切です。そして、新たな時代を切り開く気構えで、多彩な要求運動を広げ、仲間を思い切って増やしたいと思います。
 70年周年事業の一つとして取り組んでいる、団結の「とりで」・全商連会館の建て替えは、全国の仲間の協力で完成しました。感謝申し上げます。引き続き募金にご協力をお願いします。
 創立70周年を力に、共同の時代を開き、中小業者が希望の持てる、政治・経済・社会をめざして、力を合わせましょう。

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