収支示し請願書を提出
「従業員に給料払える」
税務調査で7年遡及され、1千万円を超える追徴課税となった田中宏さん(仮名)=土木=は先ごろ、北海道・北見民主商工会(民商)に入会し相談。仲間とともに交渉し、税務署長の職権による「換価の猶予」(国税徴収法151条1の1)を認めさせ、売掛金の差し押さえを解除させました。「これで従業員にも給料が払える。差し押さえを受けたときには本当にショックで死ぬことも考えた。民商で税金のことを勉強して商売に励みたい」と笑顔で話しています。
田中さんは2017(平成29)年10月、北見税務署から税務調査を受けました。領収書や請求書の保存が不十分だったこともあり、調査官が通帳からの数字の拾い上げと聞き取りを行い、16年から7年分さかのぼって一方的に追徴税額を提示。田中さんはよく分からないまま、修正申告に印鑑を押しました。
国税と地方税を合わせて追徴課税は1千万円(加算税含む)を超え、一度に納付できなかった田中さんは、税務署や北見市役所などに状況を知らせながら年間約200万円を納めてきました。
ところが昨年7月、税務署の担当者が交代して対応が一変。「こんな金額では話にならない。前任者と約束をしていた約100万円の一括納付ができなければ、差し押さえをする」と強硬に迫りました。驚いた田中さんは以前、労働保険のことで相談していた北見民商を思い出して相談し、10月31日に入会しました。
「商売をつぶすような差し押さえは憲法違反。払える金額を提示して交渉しよう」と励まされた田中さんは再度、税務署に相談。「今年の数字を整理して提示するので、それまで差し押さえは待ってほしい」と訴えましたが、担当者は「払ってもらわないと差し押さえに動く」と突き放しました。
田中さんは急いで再相談の準備をしていましたが、11月中旬、取引先2社の売掛金と生命保険が差し押さえられ、下旬には預金も差し押さえられました。実行日が給料日だったため、「このままでは従業員の給料が払えない」とすぐに民商に相談して事務局員と一緒に抗議。しかし担当者は「差し押さえは当然」との態度に終始しました。
民商では対策会議を開き、役員、事務局員が代理人になっての口頭意見陳述の申し立てと「再調査の請求」を申請し、収支の状況が分かる書類とともに請願書を提出しました。
税務署は担当者を交代させ、「一度に払えないのは分かった。換価の猶予を検討するので必要書類を作成してほしい」と田中さんに伝え、12月18日、約600万円の換価の猶予(12カ月)を認め、売掛金の差し押さえを解除しました。
換価の猶予制度
税金を一時に納付することにより、事業の継続または生活の維持が困難になってしまう場合に、差し押さえ財産の換価(売却)が猶予される制度。①換価の禁止②差し押さえの解除、猶予③延滞税の一部免除-の効果があり、滞納者にとって事業を継続していく上でメリットがあります。換価の猶予は、申請型(徴151条の2)と職権型(徴151条)の二つがあり、申請型は、納期限から6カ月以内の申請が必要です。換価の猶予の期限は、原則1年以内、要件により2年以内の延長が可能で、申請型から職権型を適用させれば、最長4年間となります。