【目次】
・利益計画を立てよう
・新規開業者向けの公的融資について
利益計画を立てよう
深太郎 先月の売り上げは160万円か。水道光熱費や家賃など経費80万円と仕入れ代金を払って、手元に残った分から家のローンと生活費、その他もろもろを引いたらギリギリだなあ。開店して半年だけど、友達も足が遠くなっちゃってるし、売り上げが下がり気味なんですよ。まあ、これから頑張って挽回するしかないですよね!
石田 深太郎くん、もしかして「売り上げがこのくらいあるから、仕入れや経費を払って、手元に残ったお金(利益)で何とかやっていこう」と思っていませんか?そのやり方では、自転車操業になってしまって、今後の見通しが持てませんよ。
商売を長く続けていくために必要不可欠なのが「利益計画」です(表1)。
計画を立てる順番として、今までとは逆に、まずは「利益」から考えましょう。自分が生活していくのに一体どのくらい必要か、手元に残すお金はいくら欲しいかということです。そこに経費などを計算して、売上目標や仕入れの目安を算出しましょう。
深太郎くんが生活するのに、住宅ローンの返済や車の維持費、生活費など考えると、いくら必要ですか?
深太郎 本当は50万円くらいは欲しいんだけど…。
石田 では50万円必要としましょう。それに経費80万円を足した130万円を「粗利益」といいますが、商売の総利益のことです。売り上げ目標を出すには、これを粗利益率で割って100を掛けます。粗利益率というのは、売り上げの中で、粗利の占める割合を示すもの。企業の収益性を判断するための基本的な指標の一つで、この比率が高いほど収益性は高くなります。業種別に平均の指標がありますから参考にしてみてください(表2)。
居酒屋の場合は68%ですから、130÷68×100=191。深太郎くんが、手元に50万円を確保するために必要な売り上げ目安は191万円、使える仕入れの目安は売り上げから粗利益を引いた分、つまり61万円となりますね。
深太郎 やっぱり売り上げが足りてないですね。どこから手を付けたらいいのかな…。
石田 店を続けていくために、経営者が考えなくてはならないのは、「粗利益」を大きくする方法です。粗利益を上げる方法は①売り上げを上げる②経費を下げる③仕入れを見直す―の三つです。そして、まず考えるべきは、経費削減ではなくて、どうやって売り上げを伸ばしていくか、です。
売り上げを構成するのは一般的に①売値②客数③来店回数④個数⑤粗利益率―の五つの要素です。この中の一つでも大きく改善すれば、もしくは少しずつでも全項目を改善させれば、商売は上向きになります。宣伝など、お金をかけずに自分にできることを考えましょう。
仕入れを見直すのもひとつのポイントですよ。他では手に入らない食品、安価で入手できるルートを開拓してください。今の時代は、腕が良ければ店がはやるわけではありません。来店する理由、しない理由がそれぞれあります。他店とも比べながら、自分の店の特徴はなんなのか、売りはどこかを、押し出してください。
新規開業者向けの公的融資について
深太郎 さっそく考えてみます。ところで、店を維持するためのランニングコストが結構かかっちゃって…。このままだと仕入れ資金がきつくなりそうで不安なんです。
石田 ぜひ新規開業者向けの公的融資を検討しましょう。国(政策金融公庫)や自治体(制度融資)も創業者支援に力を入れ、それぞれ特別メニューを用意しています。利子が低かったり、保証人が不要だったりと利用しやすいものが多いです(表3)。
銀行と取引をするということは、まっとうな商売をしている「履歴」になります。申し込みの書類や計画づくり、プレゼンなどクリアしなくてはいけないこともありますが、経営者として脱皮する機会になりますから、近くの民商に相談してみてください。
申し込みや面接で金融機関の担当者が見るのは、事業者が数字をしっかりつかみ、経営の見通しがついているかです。ポジティブに商売を語っているかも重要です。
深太郎 頑張ります!借りる金額はどうやって決めるのがいいんですか?
石田 ここでもさっきつくった利益計画が役立ちます。深太郎くんの場合、売り上げが減って、仕入れ資金が確保できなくなっている状態でしょう。経営改善に取り組んで、払える見通しがつくまで4~5カ月はかかりそうなら、仕入れ金額61万円×6カ月分を目安にし、400万円ほどで考えてみたらどうでしょう。
各地の民主商工会(民商)青年部や婦人部では経営に役立つセミナーや学習会を開いています。各種補助金獲得や経営をスキルアップさせるための事業計画づくり、法人のメリット・デメリットなどを学習。記帳カフェでは、帳簿の付け方や経費の仕分けなどをみんなで学び合って自主記帳・自主計算を身に付けています。