届出書返戻の姿勢正す 厚労省が回答
雇用保険の手続きについて各地のハローワークが届け出等にマイナンバー(個人番号)の記載を執拗に求めている問題で、全国商工団体連合会(全商連)は3月20日、厚生労働省職業安定局雇用保険課にヒアリングを行いました。
「マイナンバーの記載がない場合には届出等は返戻する」と書いたリーフレットの撤回と個人番号の記載がなくても書類を受理することなどを要請。これを受けて従業員が個人番号の提出を拒否する場合、ハローワークでは個人番号の届け出を指導した上で「届け出を受理して差し支えない」との見解が示されました。倉林明子参院議員(共産)を通じて3月23日、同課から回答が寄せられたものです。
リーフレットも見直され、「法令違反」の文言はなくなりましたが、未記載の場合は記載の上、再提出をお願いするという内容になっています。
この問題は、3月に入って労働保険事務組合がある各地の民主商工会(民商)から雇用保険資格取得届出書を提出する際などに「5月からマイナンバーの記載が必要になる」とハローワークから迫られたと相談があったもの。「雇用保険手続の際には必ずマイナンバーの届出をお願いします」と書いたリーフレットが手渡されていました。個人番号が必要だとするものは(1)雇用保険被保険者資格取得届(2)雇用保険被保険者資格喪失届(3)高年齢雇用継続給付支給申請書(初回のみ)、(4)育児休業給付支給申請書(初回のみ)(5)介護休業給付支給申請書―の5種類。「5月以降、必要なマイナンバーの記載がない場合には、補正のため届出等を返戻します」「必要なマイナンバーを記載しないことは法令違反に当たります」と書いてありました。
ヒアリングで担当者は個人番号記載の必要性について「雇用保険法施行規則で書類の様式に個人番号の記載欄が設けられた」と説明しましたが、番号記載欄が設けられた2016年以降の手続きにおいて「従業員から提供を受けることが困難な場合は、個人番号の記載がない届出書を受理する」としていました。方針変更について「他省庁との情報連携が始まり、運用に支障をきたさないため、個人番号記載を徹底する必要が生じた」などと回答。法律の改正ではなく、行政内の運用上の都合により、番号記載の徹底を指示していることが明らかになりました。
参加者は「国税庁は個人番号が不記載でも確定申告書は受理している」「従業員が事業主に個人番号を届けていない場合はどうするのか」「届け出が受理されないことで、給付が受けられないなどの不利益が生じる」などと迫りましたが、担当者は「個人番号が記載されるまで書類を返戻する」との態度に終始。出された意見を検討し、後日、回答することを求めていたものです。
ヒアリングには東京商工団体連合会(東商連)も参加し、長谷川元彦税理士、加藤深雪社会保険労務士が同席しました。
「受理差し支えない」 労働局が回答
兵庫県商工団体連合会(県連)は3月28日、労働局の職業安定部職業安定課に出向いて話を聞きました。
初め担当者は「雇用保険の資格取得などの届け出に個人番号に記載がない場合はリーフレットのとおり返戻します」「厚労省から言われている限り、それしか対応できない」との対応でした。しかし、県連が「従業員が個人番号の提出を拒否する場合は、労働者に個人番号の届け出を指導した上で、届け出等を受理して差し支えない」などの見解を厚労省が示していることを伝えると、「確認します」と話していました。
担当者は「ハローワーク窓口が混乱し、来られた方が怒り、騒然となるのではと、非常に危惧している」「おっしゃっていることはよく分かります」と話し、困惑している様子がうかがえました。
労働局から30日、「従業員がマイナンバー提出を拒んでいる場合、受理して差し支えないが、指導することとなる。その際、従業員が拒んでいる旨がわかるものを添付していただくとハローワークとしても現場で混乱しない」などの回答が寄せられました。