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  トップページ > 税金のページ > 消費税 > 全国商工新聞 第3207号3月14日付
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消費税増税・複数税率は中止に 衆院財務金融委員 参考人意見陳述(要旨)=全商連副会長・太田義郎

 全商連の太田義郎副会長が2月29日、衆院財務金融委員会で行った参考人意見陳述(要旨)は以下の通りです。

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 私は、名古屋市中村区で米穀業を50年やっている米屋のおやじであります。
 本委員会で審議されている「所得税法等の一部を改正する法律案」の中にある、2017年4月に予定される消費税率10%への増税と同時に、一部の品目を現行税率の8%に据え置く「軽減税率(複数税率)」を導入する改正案を取り下げ、廃案にしていただくようお願いしたいと考えています。
 3点に絞り、その理由を申し述べさせていただきます。
 理由の第一は、「軽減税率」導入の前提とされている「適格請求書等保存方式」すなわちインボイスの導入が課税事業者に膨大な事務負担と設備導入を強い、中小企業の経営を直撃するものとなるからです。

インボイスの負担重い

 今の経済環境は引き続きたいへん厳しい状況が続いております。GDPもマイナスが続いており、全国中小企業団体中央会の「1月の中小企業月次景況調査」でも、DIは全指標で悪化。なかでも売上高DIは前月比マイナス10・6ポイントになっており、デフレ脱却とは言い難い状況です。
 インボイス導入は中小企業に、複数税率に対応するためのレジ導入やシステムの仕様変更、値札の変更、税率区分集計など「どえらい」事務負担を要求することになります。
 ほとんどの業者はインボイスなど知らないのが現実で、あらたな事務負担に耐えられず、廃業や倒産に至る業者が増えることになることは間違いありません。中小業者の存在はそれ自体が地域コミュニティーを支える役割を担っており、インボイスによって多くの事業者が廃業に追い込まれることで、地域から人のつながりが失われることを懸念しています。
 第二は、インボイスの導入が業者の6割を占める売上高1000万円未満の免税事業者を取引から排除するという問題です。免税業者は、課税業者になるか、あるいはインボイスが不要な「直接消費者相手の商売に特化すればいいではないか」という議論もあるようですが、ことはさほど簡単なものではありません。
 山梨県笛吹市の電気工事業者は免税業者ですが、大手の得意先からの売上高が30〜40%を占めています。インボイス制度が導入されると、得意先からは「適格請求書」が求められ、課税業者を選択せざるを得ません。しかし、そうすると今まで消費税を取っていなかった個人宅や工務店にも消費税を求めることになり、売り上げに影響が出ます。また、消費税納税ができるのかを考えると、それも厳しい。「どっちを選んでも苦しい状況に追い込まれる」と話しています。免税業者は個人だけを相手に商売しているのではありません。法人や課税業者との取引も営業の存続のためになくてはならない一部なのです。

免税業者が取引から排除される

 インボイス制度導入は、多くの免税業者を市場から退場することを強いるものとなり、地域経済を破壊します。
 第三の理由は、「低所得者への配慮」という「軽減税率の導入」の効果は薄いばかりではなく、対象品目の線引きなど経済社会に混乱を広げるという点です。
 食料品は軽減といっても、食材そのものだけでなく、包装費や運送経費などさまざまなコストがかかり、商品の価格を現行のまま据え置くことはできません。8%に据え置きたいと考える販売店から、納入業者は「コスト削減、値引き」を求められ苦境に陥ることも必定です。
 外食店は、食材を税率8%で仕入れて、お客様から10%を徴収するという形になりますが、差し引きの消費税納税額は増えることになります。価格は市場の競争関係、売れるかどうかで決まりますから、計算上消費税は受け取っていても納税できないという苦境に陥ります。
 最後に申し上げたいことは、17年の消費税10%への増税はぜひとも中止していただきたいということです。
 大阪のビニール加工業者は「商品代金の請求時に消費税8%分を漏れなく請求はしているが、見積もり段階で顧客の希望価格に応えなければ注文がこないから、本体価格は顧客の要望を受けざるをえない。資材高騰により仕入れ値が下がらず、適正な利益確保が極めて困難な状況にある。結果、転嫁できていた消費税は利益の中に埋没し、納税資金は手元に残らない。消費税が10%になれば、さらに悪化する」と言います。

応能負担原則貫き消費税廃止を

 消費税の最大の問題点はこの業者が言うように「税が価格に埋没すること」にあります。業者に価格の決定権はなく、立場の弱さから「まけて」と言われれば、価格を引き下げてでも仕事を取らざるをえません。請求書に消費税8%分を記載していても、その分取引価格を下げていれば、利益確保ができない大変苦しい営業状態になるのです。
 そもそも日本の卸、小売、流通、飲食など各業種には長年の商習慣のなかで相場になっている粗利益率があります。小売で2割、卸で1割といったものです。消費税10%分を払うために小売りならば、3割の粗利益率を確保しなければなりませんが、これほどの粗利率があげられる商売などないのが実情です。
 全商連「2015年下期(9月)営業動向調査」によりますと、「消費税問題」が「経営上困っていること」のトップ(43・3%)です。「消費税が転嫁できない」という業者は、売上1500万円までで42・4%です。10%になった場合「廃業」せざるをえないという業者は、流通・商業10・2%、宿泊・飲食業15・3%にも上ります。
 消費税は、低所得者ほど負担が重い不公平な最悪の大衆課税です。
 生活費非課税、応能負担というあるべき税制の原則からすれば「消費税廃止」こそが求められます。この経済状況で消費税率の10%の増税がはたして可能なのかということを、改めてご議論いただきたいと思います。

全国商工新聞(2016年3月14日付)
 

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