確定申告のワンポイントアドバイス
(10)確定申告と譲渡所得

全国商工新聞 第3349号2019年2月18日付

事業所得とは分離して課税

 不動産などの資産を売却したときは、確定申告を行う必要がある場合があります。確定申告ではこれを「譲渡所得」といいます。
 対象となる資産は、土地、借地権、建物、株式等、特定の公社債、金地金、宝石、書画、骨とう、機械器具、ゴルフ会員権、特許権などです。この中でも、土地や建物の譲渡は、他の所得、例えば事業所得などと分離して税額を計算する分離課税制度となっています。また、譲渡した年の1月1日現在における所有期間で税率が異なり、5年超のときは長期譲渡として税率15.315%、5年以下のときは短期譲渡として税率30.63%で計算されます。
 ここから譲渡所得金額について解説します。
 譲渡所得金額は、「収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額」として計算します。ここでの注意点は(ア)取得費の計算方法と(イ)特例の活用の二つです。

(ア)取得費の計算方法

 まず購入時の契約書を確認しましょう。建物と土地の価額が別々に記載されていれば、それが取得費の計算の基礎となります。別々に記載されていない場合でも消費税額が記載されていれば、購入当時の消費税率で割り戻して建物の購入価額を計算します。建物は購入価額から売却時までの償却費相当額を差し引いたものが取得費となり、土地は購入価額が取得費となります。
 購入時の契約書があればいいのですが、契約書がなくて購入価額が分からない場合があります。このような場合は、売却価額の5%を取得費(概算取得費)として計算することができます。ただ別の計算方法を採用した方が有利なケースがありますので、どの計算方法が有利になるかを検討することが必要です。
 建物は購入当時のおおよその金額が分かる「建物の標準的な建築価額表」で購入価額を計算し、そこから償却費相当額を差し引いて取得費とすることができます。概算取得費よりもこの方法で計算した取得費が高くなる場合が多いです。
 また土地は「市街地価格指数」を使って計算した金額を取得費とすることができます。価格指数とは2000年の土地の価格を基準(100)とし、その他の年の価格が基準と比較して何%となっているかという統計的数値です。例えば2018年9月に、1970年に購入価額が不明の土地を1000万円で売却したとします。1970年の価格指数が19.5で、2018年9月の価格指数が79.1とすると、1000万円×(19.5/79.1)=246万5233円と計算することができます。

(イ)特例の活用

 譲渡所得の計算は取得費と譲渡費用の他に、要件を満たした場合には表にあるような特例を活用することができます。マイホームを譲渡した場合の3000万円の控除の特例はその代表例です。居住用財産は生存権に関わる問題ですので、一般的な居住用財産については課税をしない措置をとるのは当然のことです。
 譲渡所得は取得費の算定や特例の要件などを細かくチェックして申告するようにしましょう。

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(税理士・中出良)

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