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  トップページ > 税金のページ > 徴税攻勢 > 全国商工新聞 第3133号9月1日付
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税金 徴税攻勢
 

納税の猶予裁決かちとる

収支や家計状況示し不許可処分取り消し=北海道
 「納税の猶予」が認められないことを不服として、札幌国税不服審判所に審査請求を行っていた北海道・旭川民主商工会(民商)のKさんは先ごろ、「納税の猶予」不許可処分を取り消す裁決をかちとりました。「納税の猶予を申請してから1年半。民商に出会ったからここまで頑張ることができた」と喜びを語っています。

 不服審判所で争点になったのは「納税の猶予」の要件を定めた「事業につき著しい損失を受けた」(国税通則法46条2項4)に関わって減価償却費などを損益計算に含めるかどうかでした。原処分庁(旭川中税務署)は現実の支出を伴わないことを理由に、含めずに損益計算をすべきと主張。それに対して不服審判所は会計処理基準に照らして減価償却費などを計算に含めることが相当と判断しました。それらを含めて損益計算をすると、調査期間(平成24年1月〜12月)の損失金額が基準期間(平成23年1月〜12月)の利益金額の2分の1を超えていることから「納税の猶予」の要件を定めた「事業につき著しい損失を受けた」(国税通則法46条2項4)の4号事案に該当すると認め、原処分(平成25年4月10日付で出された納税の猶予不許可処分)を取り消す裁決を出したものです。
 法人で印鑑の加工・販売を営むKさんは、売り上げ減少などで09年ごろから源泉所得税や消費税の納付が滞るようになりました。延滞税を含めて180万円以上が未納となり、旭川中税務署は「払えなければ、家族従業員の長男の自宅を差し押さえる」と脅してきました。
 困ったKさんは昨年1月、知り合いから紹介された旭川民商に相談。入会して1月28日、「納税の猶予」を申請しました。ところが、同税務署は調査期間の利益が黒字であること、基準期間と調査期間の売り上げの対比で22・9%減にとどまっているため「納税の猶予」には該当しないとして4月10日、不許可通知を出しました。
 異議申し立てを行ったKさんは代理人を立て、口頭意見陳述で反論。調査期間と基準期間の利益額の減少幅は62・5%であり、「国税庁が納税の猶予を規定した調査期間の損益計算において基準期間の利益金額の2分の1を超えて損失が生じている場合」(「納税の猶予等の取扱要領の制定について」昭和51年6月通達文書)に該当すると主張。しかし、同税務署は納税の猶予は調査期間、基準期間の両期間が赤字であることが前提と主張し、異議申し立てを棄却しました。
 不服審判所の閲覧では、決算期末の試算表をあらためて確認したところ、減価償却費などを含めると調査期間、基準期間の経常損益の下方修正が必要であることが判明し、原処分の取り消しにつながりました。
 また、納付困難についても積極的に納付能力調査を求めました。不服審判所が店舗に出向いて売上帳などの確認と聞き取り調査を行った際、Kさんは光熱費の支払いや従業員の給与などを自身の年金で賄っていること、併せて「税金が払えず困っている人のために」(全商連発行)のパンフを活用して家計状況を訴えました。
 一方、裁決は「著しい損失とは赤字を意味するものではなく、調査期間の利益額が基準期間の利益額より減少していること」というKさんの主張は「請求人の主張には理由がない」として退け、不満が残るものです。Kさんは現在、納税の猶予の延長を申請してたたかっています。

解説 償却費の経費算入は成果
税理士 角谷 啓一さん
 「事業につき著しい損失」(国税通則法46条2項4)の解釈については、「猶予等の取扱要領」によると、「損失を受けた日の直近1年間の損益計算において、その前年1年間の黒字金額の半分を超える赤字が生じた場合、その超えた金額」が猶予該当額とされてきました。
 すなわち「損失」とは、所得の減少額ではなく、あくまでも「赤字」を意味するというのです。
 そうすると、猶予申請者が個人の場合、事業主の賃金などは経費とならないので、一般的には赤字になることは少なく、前述の赤字論は不合理といわざるを得ません。この点、今回の裁決内容は、赤字論から一歩も出ていないのは残念です。運動の積み重ねが大切です。
 当該事例で処分庁は、損益計算において減価償却費などが「現実の支出を伴わないのだから」と経費算入を否認し、その結果、「黒字になるのだから、損失ではない」とし、猶予に該当しないと主張。この考え方は、納付資力の算定に用いることから、処分庁は「猶予該当の判定」にも採用したものと考えられます。
 これに対し、裁決は「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に照らし計算するところ、…原処分の主張に理由がない」と断じ、猶予不許可の取消しを命じました。
 裁決は、相変らず、赤字論に固執していますが、当該事例が、個人ではなく、「法人であったこと」も幸いしたようです。しかし、「現実の支出を伴わない」ことを理由に経費算入を否認する事例が多々考えられることから、大きな成果であると思います。

全国商工新聞(2014年9月1日付)
 

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