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  トップページ > 税金のページ > 徴税攻勢 > 全国商工新聞 第2925号 5月10日付
 
税金 徴税攻勢
 

給与差し押さえ取り消し裁判で和解かちとる


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市民の会が2月に行ったリレー宣伝行動で訴えるOさん

 国保税・町民税の滞納を理由に群馬県玉村町が給与を差し押さえたのは違法だとして、処分の取り消しと損害賠償を求めて裁判でたたかっていたOさん=前橋市在住=は先ごろ、町が解決金62万円を支払う内容で、和解をかちとりました。「納税者の生活実態の尊重が重要」という和解書で合意しています。裁判傍聴などOさんを支援した「市税を考える市民の会」代表委員の大野豊文さん(前橋民商会長)は「生きることが優先される収納行政の実現に向けて、この成果を弾みにしたい」と話しています。
 Oさんは失業した時期もあり、02年から07年にわたって国保税・町民税約65万円を滞納。町は08年5月、Oさんの銀行口座に振り込まれた給与約20万円を予告なしで差し押さえました。「家賃も電気代も払えない。死ねということか」と電話で抗議しましたが、解除されませんでした。
 困ったOさんは、日本共産党に相談し、町に異議申し立てをしたものの却下に。昨年2月に処分の取り消しと損害賠償を求めて前橋地裁に訴えましたが、棄却となり、東京高裁に控訴しました。
 裁判では、浦野広明立正大学法学部教授の「給与の預金債権は差押禁止財産」であり「本件差押処分は違法」などを主文とした鑑定書を提出。専門家からの指摘は審理に大きな影響を与えました。
 Oさんは、昨年12月に開催された「市民の会」の結成総会に参加し、たたかいの報告と支援を訴え。市役所前での宣伝行動にも参加し、納税緩和措置の積極的な活用などを求める請願署名を訴えました。
 和解は町の申し出によるもので、町が「納税者の生活実態を尊重する」こととし、62万円の解決金を支払うことで合意しました。解決金のうち約32万円は滞納分に納税されます。
 Oさんは3月31日、和解書に署名。「多くの支援に感謝したい。役場前での自殺も考えたが、町の強権的な処分が許せないと思った。誤りを認めさせ感無量。二度とこのような処分をしないでほしい」と話しました。

 画期的な和解内容
  立正大学教授 浦野広明

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 振り込まれた給与(差押禁止財産)が差し押さえられる事件が頻発している。
 預金差し押さえの根拠は次の「判決例」である。その判決とは、「年金等の受給権は受給権者の預金口座に振り込まれて預金債権に転化したときは、差押禁止債権としての性格を失っていると解すべきである」というものである。(第1審=釧路地裁北見支部、平成8年7月19日判決、控訴審=札幌高裁、平成9年5月25日判決、上告審=最高裁、平成10年2月10日第3小法廷判決)
 O氏(甲)は群馬県玉村町(乙)の住民である。甲は生活苦により町県民税や国民健康保険税を滞納していた。乙は甲の普通預金に振り込まれた約20万円を差し押さえた(08年)。
 甲は滞納処分(差押)の取り消しを求めて前橋地裁に提訴した(09年)。代理人は新前橋法律事務所所属の鈴木克昌、鈴木智之両氏のほか4人の弁護士である。筆者はこの事件に関する鑑定において、「預金債権転化論」の誤りを指摘した。
 地裁の判決は甲の請求を却下するものだった(10年)。
 甲は控訴した。その結果、東京高裁において10年3月、和解が成立した。和解書の大要は次の内容である。
 第1条 甲と乙は、納税制度につき、その必要性及び納税者の生活実態の尊重が共に重要であることを相互に認識し、本件事件を円満解決することに合意する。
 第2条 乙は、甲に対し、本件事件の解決金として金62万円を支払う。
 第3条 甲は、納税の重要性を認識のうえ、本和解の席において、前条の解決金の中から金32万1441円を乙に納税する。
 この和解内容は「預金債権転化論」を打ち破った点で画期的なものとなった。


   
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