水道法改正案が継続審議
民営化・広域化許さない運動を

全国商工新聞 第3330号10月1日付

 7月に閉会した通常国会では、水道法改正案が提案され、継続審議となりました。今回の改正案の目的は、水道事業者間の広域連携、適切な資産管理、官民連携の推進など、水道事業の効率化や、水道管の老朽化対策を急ぐこととされています。
 しかし、その背景には安倍成長戦略で、企業の利益を最大限に確保するという目的があります。法案には専門家や事業者から懸念の声も多く、衆議院では6野党・会派が反対しました。
 法案では民間資金の活用による、PFIの手法の一つであるコンセッション方式(公共事業等運営事業)が導入されようとしています。水道設備の所有権は地方自治体に残し、運営の権限を民間事業者に移すものです。政府は「水道事業の継続に責任を持つのは地方公共団体」と答えていますが、民間事業者は、採算が悪ければ「水質の悪化」や「水道料金の値上げ」で対応する可能性があります。
 長期の契約で、問題点が明らかになるころには、取り返しがつかない事態となっていることも考えられます。実際、欧米では水道料金が高騰し、設備更新が滞るなどしたため、民営の水道事業が再公営化される事例が相次いでいます。
 水道管の敷設や補修工事の多くは、地元中小建設業者が担っています。国や都道府県の主導で広域化計画が進められれば、大企業が受注しやすくなり、地域ごとに地元業者に発注されていた工事が、大企業に系列化され、重層的な下請け構造となり、地域経済への影響も懸念されます。この間の災害でも、水道の安定的供給が大きな課題であり、広域化はこれにも逆行します。
 水道法第1条(目的)で「清浄にて豊富廉価な水の供給をはかり、公衆衛生の向上と生活環境の改善に寄与する」と明記されているとおり、水道は生活と健康に欠かせないものです。生存権にも直結する生活用水に経済性を優先し、国や地方公共団体が担うべき責任を放棄することは極めて危険です。
 災害時には自治体同士で応急給水を行う仕組みが、維持されない可能性も明らかになっています。安易な民営化、広域化を許さない運動が求められます。
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