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「中小業者宣言」
(第一次案)
1996年5月
  「中小業者宣言」(第一次案)の発表にあたって

 数年前から、「いま、日本経済は大きな転換の時代にある」と言われてきました。
そして、私たちは、誰のために、どんな方向に転換するのか、その選択が問 われており、それはまた、全国数100万中小企業・中小業者にとって、これからの 時代をどう生きるのかという問題だと考えてきました。
 私たちは、こうした時に、多くの中小企業、中小業者、その団体・組織のみ なさんとともに、未来への展望と中小業者の生きる道をしめす「中小業者宣言」 を作成する運動を提案しました。
 この運動は、わが国で中小業者が歴史的に果たしてきた役割への自覚を深め 、新しい時代に求められる業者像も、ひろく国民のみなさんとともに探求してい く運動でもあります。
 また、全国各地で、その地域独特の歴史などを十分生かして、「わがまち中 小業者宣言」づくり運動をすすめることも提案しており、それと一体のものとし て成功させたいと考えています。
 財界・大企業は21世紀の経営戦略やビジョンを作成しており、政府も、 21世紀をめざす「新経済社会計画」を決定しています。
 資本力あるものが自由に振る舞える社会、自己責任原則と歯止めなき増税社 会をうちだしているこれらのビジョンが、はたして、中小業者に明るい希望を与 えるものと言えるでしょうか。
 それだけに、私たちが、中小業者の社会的経済的役割と自ら「21世紀の 業者像」を明らかにするとともに、大企業や国・自治体の責任、あり方も明確に し、公正で民主的な、あちりまえの国民的ルール確立の力となる、中小業者の未 来・展望をしめす羅針盤をつくりあげることは、いよいよ重要だと考えます。
 私たちは、この「中小業者宣言」(第一次案)を、みなさんと共有の財産と してつくりあげるために、力を尽くしていきます。  
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「中小業者宣言」(第一次案)

 日本の町や村がつくられ、発展してきた歴史は、農・工・商の誕生と深くか かわり、多彩な商業や工業の集積と、地域産業の形成は人々の暮らしにとつて欠 かせない基盤となっています。日本の山河と大地、人々の生産と労働の中で生成 してきた商工業者は、それぞれの地域の風土、資源の活用を通して産業を興し、 住民の生活に必要なモノを供給し、住民の生活を支え、高齢者や子どもを大切に するまちづくりに貢献してきました。
 また、モノづくりにおける新製品・新技術開発の基盤を担い、先端産業の飛 躍的な発展と日本経済を支えてきました。
 この中小業者が、大企業の一方的な取引中止通告で事業が続けられなくなっ たり、大企業の海外移転や中小企業分野への進出で廃業に追い込まれています。 また、その働き分が税法上正当に評価されず、社会保障でも保険料も払えないほ どの高負担や生活できない低い年金、休業しても保障がないという低福祉をおし つけられるなど、社会的・経済的な劣悪な状況に追い込まれ、「生存権」にかか わる事態を生み出しています。まさに、近代国家として、世界に恥じるべき不合 理と言わなくてはなりません。
 そして今、利潤追求のためにあらゆる人間性も自然環境も破壊し、世界をま たにかけて資源を浪費し尽くすような大企業の横暴を規制し、地球環境を守り、 人類の普遍の原理である人権を確立することを求める世論がこれまでになく高ま っています。
 私たち中小業者はこうした国民の期待にこたえ、また、ひろく国民各界各層 との協力・共同をつよめ、真に豊かな国民生活実現のために「新しい役割」を担 う決意です。
 すなわち、国際化、高齢化など新しい時代に、私たち中小業者は、
@新製品・新技術開発・モノづくりをすすめる役割
A公正な取引、事業者の創意を発揮し、消費者・国民の利益に貢献する役割
Bお年寄りや子どもも安心して暮らせるまち、若者にも魅力あるまちづくりへ の役割
C高齢者、身障者を含め、男女の差別なくひろく国民の知識や技能が多様に発 揮される場を提供する役割
D自然と調和し、資源を大切にする産業をおこし、地域環境を守る役割
E世界の人々との対等・平等の取引など真の国際連帯へ貢献する役割
がつよく求められると考えます。
 この役割を発揮する、「21世紀の中小業者像」の確立に力を尽くします 。

 日本と世界の現実は、「健全な中小企業の活動のないところでは町が荒廃し てしまう」ことを教えています。国・自治体は、新しい時代に中小業者の存在が 欠かせないことを明確にして、その活性化に行政の役割を発揮することが当然で す。
 また、大企業は「事業活動を通じて地域社会の福祉の向上に努める」(経団 連企業行動憲章)立場から、その社会的責任を果たさなくてはなりません。
 私たちは、中小企業を大切にし、中小業者が意欲と希望をもって営業できる 時代をきりひらき、社会を進歩させるために、ここに「中小業者宣言」(第一次 案)を提案します。

一、中小業者は、人々の生活を支え、産業、経済の発展につくします。
 経済の基本は、人々が安心して働き生活を楽しめる快適な環境をつくり、明 日の活力を生む文化を継承し発展させるために、また子孫に未来を残すために、 必要なモノを生産・製造、輸送、販売し、さまざまなサービスを提供するところ にあります。
 国民生活関連製品の出荷額の80%は中小企業が占めていることに示されて いるように、中小企業はまさにその人間に最も必要で欠かせない基本的な部分を 今日まで担ってきています。
 また、「活力ある多数」として中小業者が存在し、公正なルールにもとづく 自由な競争が、事業者の創意を発揮させ、消費者・国民の利益に貢献します。
 世界の国々との自主的な経済交流を活発にし、対等・平等の取引で真の国際 連帯に貢献します。
 人間を大切にするこれからの社会で、中小業者の役割はますます増大します 。

二、中小業者の技術力や創造力は、先端産業から国民生活の密着した分野まで 、なくてはならない存在です。
 今日の高度に発達した日本経済の到達も、中小業者の役割を抜きにしてはあ りませんでした。「産業のコメ」と言われる半導体も、製造装置メーカーの九六 %は中小企業であり、最近の五年間で開発された新製品の98%は中小企業によ るものであるなど、中小業者は、経済、産業のあらゆる分野の最先端をになう社 会進歩の原動力としての役割を果たしてきました。すすむ産業空洞化や高齢社会 、地域環境破壊、経済の国際化等々の新しい時代には、国民生活に密着した、真 に国民が求めるモノづくりのために中小業者の役割はいっそう重要です。

三、中小業者は、地場産業の振興など地域経済の確立、生活し働いている住民 のためのまちづくりの推進者としての役割を果たします。
 中小業者は、まちの生成とともに集積する技術やさまざまな資源を活用した 伝統産業・地場産業など、地域と結びついた産業を担ってきました。大量生産・ 大量消費「規模の利益」のみを追求する「近代化・効率化」 や、国内産業無視 の過大な輸入拡大が、こうした産業を崩壊の危機に追い込んでいます。
 また、流通大資本の出店攻勢は既存の商店街や小売市場、まちの中心部を荒 廃に追いやっています。その結果、住民の生活は不便になり、とくにお年寄りや 障害者などは、日常の買物など生活が大変になっている地域も生まれています。
 地域は、もうけを生みだすところではなく、ものの生産や文化、教養その他 人間らしい生活を多彩に生み育む場です。
 だからこそ、中小業者は地域の文化とも結びついた個性あるまち、住民が暮 らしやすいまちづくりにはなくてはならない存在なのです。

四、中小業者は、農業や漁業、林業を大切にし、緑、水、海岸線など自然環境 、日本の大地を守ることを重視します。  中小業者は、地域の農業、漁業、林業と結びつき、これらの生産物を加工し 、販売し、消費してきました。また、自然環境を生かして、観光やスポーツ振興 にとりくみ、多くの国民に親しまれながら発展してきました。
 中小業者は、自然との調和、保全と活用を基本にします。地球環境を守るこ とは全人類的課題です。

五、中小業者は、雇用機会の拡大、高福祉社会の実現に貢献します。
 いま、新しく卒業する希望にもえた若者たちの就職が決まらないという問題 がひろがっています。また、経団連や日経連の21世紀ビジョンは、雇用減ら しだけでなく、賃上げなし、いつでも自由に解雇できるなどの「新雇用システム 」にすると宣言しています。
 中小業者は、経営が苦しい中でも地域の人たちの雇用を受け入れを積極的に おこなっています。高齢者、障害者雇用もすすめ、働く意欲のある人の就業機会 を保障する、真の高福祉社会実現に貢献します。

六、中小業者は、地域社会の運営に深くかかわり、住民の安全、子どもたちの 健やかな成長のためにも大きな役割を果たします。
 中小業者は自らが地域住民(消費者、生活者)であり、地域まさまざまな自 治組織の中で中心的なはたらきをしています。
 阪神淡路大震災で、地域社会に根ざしたさまざまな業種の中小業者が、全住 民を対象にした救援・復旧活動で大きな役割を果たしました。中小業者はその特 性を発揮し、地震や暴風雨その他の災害の防止や応急復旧だけでなく、日常的な 防犯など行政の行き届かない分野で住民のくらし・安全を守ります。
 さらにまちの相談役として、また子ども会などを通じて、子どもたちが地域 に愛着をもって成長することを助けるなどの活動もおこなっています。

七、中小業者は、地域文化・芸術の担い手としても、さまざまな技術の継承者 としても力を発揮します。
 地域のお祭りや文化行事の中心的な担い手は、地域の中小業者です。また、 伝統芸能や技能の継承者も多くは中小業者です。こうした文化、芸術が、国民生 活をうるおいあるものにし、くらしを多彩で豊かにする源泉です。

八、中小業者の社会的・経済的地位向上のための目標と年次計画を定めるなど 、中小企業を軸にした国内産業、地場経済振興政策をすすめることは、国・自治 体の責務です。
 「中小企業近代化政策」に始まる政府の中小企業政策は、大企業を補う少数 の優良中堅企業の育成が基本でした。いま、国際化に対応した新技術開発等への 中小企業の努力や、地域内のさまざまな資源を活用した産業政策を自主的に作成 する自治体が増えつつあるなど、「大企業依存型」からの自立をめざす新しい動 きが始まっていることは注目すべきことです。この流れを本流に、中小業者対策 を中心にすえた地域経済振興政策を確立することこそ、国政と地方政治の重大任 務です。

九、大企業は、地域経済・地域社会への貢献が義務づけられ、地域経済撹乱行 為や産業空洞化につながる行為、その他不法、不当行為は厳しく規制されます。
 いま、「活力ある日本社会建設」をかかげて、大企業に対する規制がゆるめ られ、自由競争の名による大資本の市場支配、独占体制がさらに強化されようと しています。しかし本来、資本主義国でも大企業による横暴は規制されるのが正 しい姿です。それは、中小業者の存在が国民生活にとって必要不可欠のものであ り、中小業者の経営に支障を及ぼすことは国民生活とその国の経済に混乱を招く からです。とくに、自らのもうけのためには、国内産業をつぶしても海外に進出 しようとする大企業のやりかたを規制することが緊急に求められています。

十、地域の中小業者が安定的に発展するために、後継者対策や業者婦人向けの 施策が重視されます。
 さまざまな産業、業種の基盤を担う技術、技能を継承、発展させ、また、住 民のくらしに欠かせない中小商業・サービス業の振興で生きいきとしたまちづく りをすすめるなど、中小業者の未来をきりひらくために、後継者対策は決定的な 重要です。
 しかし、中小業者の後継者対策は、行政としての対応は遅れています。また 、営業を支え、家族の健康、くらしを守っている業者婦人にふさわしい対策は皆 無といってもいい状況で、女性経業者もさまざまな差別のもとで苦しんでいます 。この対策を早急に立てることは国・自治体の責務です。

十一、「平和こそ商売繁盛の土台」の立場から、「戦力の保持」を禁止した憲 法第九条を堅持し、全世界から核兵器を廃絶することを求めます。
 50年前の戦争で、多くの中小業者は戦地にかりだされ、ま球、政府の命令 で営業をやめさせられたり、空襲で店や工場を焼かれました。広島・長崎の原爆 は、婦人も子どももみさかいなく焼き殺し、その被害は「三世代」を経たいまも 続いています。戦後日本の出発点となり、憲法でも国民の総意として明確に示さ れている「再び戦争をおこさない」の原点を守りぬくことが、戦後半世紀を経た いま、いっそう大切になっています。

十二、新しく、「中小業者の日」を制定し、中小業者がひろく国民とともに、 地域経済や中小業者の役割をたしかめあう意義ある機会にします。
 
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