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中小企業政策の後退・縮小は許せない
  一、政府案への 基本的批判

   10月29日に国会に提出された中小企業基本法「改正案」は、国の中小企業支援政策の後退・縮小を打ち出した重大な改悪法案であり、私たちはその撤回と抜本的な見直しを求めます。
 今回の中小企業基本法「改正案」は、現行「基本法」のほぼ全文にわたって改定または削除を行うもので、過去36年間の国の中小企業政策の体系を大きく改変するものとなっています。この「改正」で中小企業政策の理念、目標、基本方針のすべてにわたって「転換」を余儀なくさせられたことは、自民党流政治の行き詰りをあらわすものです。  問題の中心は、「転換」の方向が中小企業政策の拡充ではなく、縮小であることです。
 そのもっとも象徴的な点は、中小企業の経済的社会的制約による不利・格差を是正するという理念、目標が未達成であるにもかかわらず、その政策を投げ捨て、いちだんと少数者支援に重点を移していることです。
 21世紀に向けた新しい国づくりのなかで、個性あるモノづくりや地域に密着した豊かな住民サービスの提供、個人の能力が発揮される働く場の確保など、中小企業の役割がいっそう高まります。国の中小企業政策の拡充は時代の要請であり、世界の資本主義国の流れです。この歴史の流れに背いて中小企業政策を後退させることは許せません。

二、重大な6つの改悪点

    1、格差・不利を是正する政策を投げ捨てる
 現行「基本法」はその前文で、「生産性、企業所得、労働賃金等の著しい格差は、中小企業の経営の安定とその従事者の生活水準の向上にとって大きな制約となりつつある」として、「このような不利を是正する」としています。また、現行法「政策の目標」(第一条)でも「中小企業の経済的社会的制約による不利を是正する」「企業間における生産性等の諸格差が是正されるように中小企業の生産性及び取引条件が向上することを目途と」することを明記しています。改正案は、この前文と政策目標の条文を削除しています。
 大企業と中小企業の格差は是正されるどころか、むしろ拡大している現実を全く無視したもので、各界からも批判の声があがっているのは当然です。

  2、多数の業者無視、さらに少数者支援へ改悪の「基本方針」
 改正案は、国が講じる「基本方針」の第一の柱に、「経営の革新及び創業の促進並びに創造的な事業活動の促進を図ること」をかかげています。
 つまり、現行法のもとでも、国の近代化指針や高度化計画にのっとり、支援政策を受けることができた中小企業者は少数でしたが、これからはさらに(1)経営革新をすすめる意欲ある中小企業、(2)新たに創業する人、(3)ベンチャーという「著しく創造的」な経営をはかる中小企業、を支援することに軸足を移し、支援対象を一部の業者に選別することを明確にしました。
 経営革新は必要ですし、ベンチャーや創業支援も当然ですが、いまもっとも国が力を注ぐべき政策は、長期不況等で死活にかかわる経営難に直面しながら打開策を求めている既存の中小企業者への救済と活性化策ではないでしょうか。  そもそも、政府案がいう3つの支援重点策で地域経済活性化に結びつくのか、「雇用の受け皿」になり得るのか、大いに疑問です。たとえば、「経営革新支援法」の運用実績をみると、九月末現在で経営革新計画が承認されたのは全国で36件にすぎません。ベンチャー支援も、全国の自治体のベンチャー支援財団の総投資社数はわずか370社、そのうち20社が倒産している(9月末現在)というのが実態です。

  3、小規模企業支援からの撤退・軽視
 わが国の中小企業の9割を占める小規模企業者への支援政策の強化こそ、もっとも必要になっています。ところが、政府はこの点でもまったく逆の方向を示しています。
 改正案は、現行法の「第4章 小規模企業」を削除、「特に小規模企業従事者の生活水準が向上するよう」と明記した前文も削除するなど、小規模企業政策軽視の姿勢があらわです。審議会の答申では、小規模企業者の基礎的な記帳等の指導は市町村が主に担当する方向を打ち出しました。さらに、商工会等の合併促進や補助金の「合理化」方針とあわせ、国が小規模企業支援政策を縮小していく方向が明らかです。
 今後、創業促進が重点政策であることもあり、改正案に「小規模企業への配慮」の条文はありますが、すでに実施されている創業支援融資についても、自治体の制度にしていく方針です。

4、国内産業を守る輸入規制政策の放棄
 繊維製品をはじめ、競合する輸入製品の増大が産地などに壊滅的な打撃をあたえていますが、改正案は、この問題に対応する輸入制限政策を放棄しています。
 現行法では、物品の輸入によってこれと競争関係にある物品を生産する中小企業に重大な損害を与えるおそれがある場合等は、「輸入の制限等必要な施策を講ずる」としていますが、改正案はこの条文(第22条)を削除しています。  国際化の正しい発展の欠かせない内容は、国の自立と自主権の尊重です。自立した経済国となる立場を放棄し、重要な国内産業を崩壊させることは絶対に認められません。

  5、中小企業団体支援の打ち切り
 今後、公正な取引ルールの確立や、新製品・新技術開発など中小企業団体の役割はますます重要です。改正案は、中小企業団体を著しく軽視した内容になっています。
 現行法では、「中小企業者が協力してその事業の成長発展と地位の向上を図ることができるように」組織化推進、団体整備につき必要な施策を講ずる、としていますが、改正案はこの条文を削除しています。
 そして、中小企業に関する団体に対して、「基本理念の実現に主体的に取り組むよう努めるものとする」と団体の自主努力を規定する条文にしてしまいました。「交流又は連携及び共同化の推進」条項を新設、中小企業者の緩やかな連携と共同への支援をするとしていることは必要です。しかし、長年にわたって国の中小企業施策を支え、協力してきた各種団体を冷たく切り捨てるような仕打ちは許せません。

  6、自治体に責任とリストラ押しつけ
 地域に密着した中小企業者にとって、自治体の中小企業施策の充実はもっとも重要なねがいです。
 改正案は、中小企業施策を講じるにつき、「行政組織の整備及び行政運営の効率化に努める」と、自治体にリストラを押しつけています。現行法の「行政運営の改善」を「行政運営の効率化」に改変していることは、注視すべき点です。
 改正案は、地方自治体は、国との役割分担を踏まえて区域内の条件に応じた中小企業政策を実施する「責務を有する」とし、また、審議会答申は、地域経済振興等を市町村が担当するべきという方向を打ち出しました。自治体の役割を明確にすることは当然ですが、国が行うべき政策を何の財政的支援等もなしに自治体に押しつけることには反対です。自治体の自主性を本当に尊重するとともに、国が必要な支援も行うべきです。

三、政策転換の 非民主的なすすめ方

   私たちは、「中小企業の憲法」といわれる「中小企業基本法」の改正は、国会内外で大いに国民的議論をかさね、その合意形成を土台に行われるべきだと考えます。
 今回の臨時国会では、「審議はしても採決はしない」ことを要求します。
 今回の「基本法」改正作業のすすめ方は、異常な超スピードですすめられ、政策実行の主役である中小企業者・中小企業団体の合意なしの非民主的なやり方は大問題です。
 36年前に、現行法が制定される時は、国会で一度は継続審査となり、成立までに2年かけています。
 今回の改正案は、ほぼ全文にわたる改正であり、内容面でも、理念、目標、基本方針を大きく改変するのですから、事実上、新法を制定するのに匹敵します。
 それにもかかわらず、中小企業政策審議会では、3カ月に満たない超高速・短期審議でした。さらに国会は、自民・自由・公明の連立という圧倒的な数の力で、短期間の臨時国会で成立させようとしています。
 これは、「国民が主人公」という原則、民主主義のかけらもない暴挙であり、絶対に許せません。
 私たちは、多くの中小企業者・中小企業団体のみなさんとともに、21世紀に向けて希望がもてる中小企業政策の実現と、それを保障する「中小企業基本法」を確立するため、全力をあげて奮闘するものです。
 
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