56条廃止意見書513自治体に

全国商工新聞 第3345号2019年1月21日付

熱い訴え 議会動かす

「業者婦人の働き分を認めて」-。全商連婦人部協議会(全婦協)と各地の民主商工会(民商)婦人部は、所得税法第56条(別項)廃止を求め、意見書採択運動に取り組んでいます。12月議会では、北海道旭川市、高知県芸西村、安田町、北川村、香川県丸亀市などで採択が相次ぎ、全国513自治体になりました。(1月10日現在)

10年超の運動実る 全議員に実態伝え

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旭川市での採択で運動に弾みをつける旭川民商婦人部員ら

 北海道旭川市議会は12月20日、所得税法第56条廃止の意見書を採択しました。旭川民商婦人部の長年の粘り強い運動の成果です。
 婦人部は本議会を10人で傍聴。32人中17人の賛成で意見書の採択がされると、小林陽子部長は思わず涙。歴代の部長も駆け付け、「ずっと重ねてきた努力が実ったね」「うれしい」と喜び合いました。
 旭川民商婦人部は10年以上前から旭川市議会への働き掛けを行ってきました。「今年こそは」と、市議会議長を訪問。要望書を直接手渡し、「56条がある限り、一緒に商売をしている家族に給与をあげることができない。中小業者から早くなくしてほしいと声が上がっている」と訴え。
 「56条は憲法の問題でもある。現代は個人課税が原則なのに、戦前の世帯課税が残ってしまっている」と話すと、議長は「法律のあり方や一人ひとりの働き方にとっても、現代にそぐわないのは分かります」と受け止めてくれました。
 北海道婦協が作っている「採択自治体マップ」を渡し、「国連で2年前に見直し勧告が出され、国際的にも問題になっている。財務大臣も『検討する』と言っているので、旭川からもぜひ意見書採択を上げて、背中を押してほしい」と再度訴えました。
 その後、全会派の議員に要請行動し、実態を知らせました。小松市議はじめ4人の共産党市議も議員を回り協力を訴えてくれ、採択へこぎつけました。  婦人部では旭川市の採択を受け、「弾みをつけて採択を広げていこう」と話しています。

3自治体で同時採択 議員に声掛け強め

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尽力してくれた安田町の濱口議員(右から2人目)、田之上議員(右から3人目)とともに採択を喜ぶ高知県婦協と安芸民商婦人部役員

 高知・芸西村議会、安田町議会、北川村議会は、12月議会で「所得税法第56条廃止を求める意見書」を採択しました。安芸民商婦人部と県婦協が提出したもので、高知県内での3自治体同時採択は9年ぶりです。
 芸西村議会では12月13日、9人中7人の賛成で可決、安田町議会では14日、9人の議員の満場一致で可決されました。
 北川村議会では19日、紹介議員(無所属)が意見書案を読み上げ、「今の時代にそぐわない制度に憤りを感じている」と主張。7人中6人の賛成で可決されました。事前に村議を訪ねて対話した際には「青色申告にすればいい」などと言われたことも。人権問題であることや受けている不利益などを訴えて理解を広げてきたため、喜びもひとしおでした。
 役員は「採択と聞いた時は、うれしくて一刻も早く婦人部や民商の皆さんに伝えたかった。3町村で意見書が採択され、本当にびっくりした」と振り返ります。
 県婦協からの支援を受け「何とかやらんといかん」と前向きになった安芸民商婦人部。8月に高知県で開かれた日本母親大会の実行委員会で、56条の問題を伝えて、議員を紹介してもらったことも大きな後押しになりました。北川村、安田町の議員訪問から始め、資料作成や議員訪問、議員への声掛けなどで、県連・県婦協、民商のみんなの力を借りて、今回の「陳情書」と「意見書(案)」提出、採択につながりました。
 高知県婦協では07年の高知県議会を皮切りに、35自治体中30自治体で採択を勝ち取っています。安芸民商婦人部でも、この勢いで、室戸市、東洋町の採択に向けて取り組みを続けていきます。

▼所得税法第56条とは

 業者婦人など家族従業者の「働き分」を必要経費として認めず、申告の仕方で不当に差別するもの。白色申告では、配偶者は年間86万円、その他の家族は50万円の控除しか認めておらず、社会的にも経済的にも自立できない状況を生んでいます。  世界の主要国では「自家労賃を必要経費」として認め、家族従業員の人権・人格、労働を正当に評価しています。

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