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子どもの安心・安全を軽視する「子ども館」を中止に=大阪・泉南民商婦人部

630人も預かる巨大保育施設

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630人の子どもを預かる「子ども館」として利用される予定のヤマダ電機の空き店舗

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「市長さん話を聞いてください」と市役所前で声を上げる母親たち。子ども館の是非を問う住民投票の実施を市に求めました(5月18日)

 「市長さん、話を聞いてください」「子ども館は中止にしてください」―。大阪府阪南市では、国の「地域再生戦略交付金」(別項)を使って、市内の保育園・幼稚園をつぶし、630人の子ども(0〜6歳)を1カ所に集め保育施設「子ども館」をつくるという、前代未聞の事業が進められています。子どもの安心・安全を軽視し、地域コミュニティーを壊す計画に、泉南民主商工会(民商)婦人部員や若いママたちが立ち上がっています。

有権者の3割が署名
 5月18日、子どもを連れた母親ら約170人がパレードを行い、阪南市役所前に集まりました。民意を無視して計画を進める市に対して、市内有権者を対象に集めた「子ども館の是非を問う住民投票を求める署名」1万2683人分と、「阪南市自治基本条例に基づく住民投票請求書」を提出。若いママたちは「私たちは安心して子どもを預けられる保育園が欲しいだけ。署名の重さ、ママたちの気持ちの重さを分かってほしい」と涙ながらに訴えました。

保育・幼稚園 1カ所に集約
 「総合子ども館」は、中心市街地に施設を集中させる「コンパクトシティ」の構想に沿って、公立の3保育園と4幼稚園をすべて廃止して1カ所に集約し、総合的な子育て施設をつくるというもの。建物は撤退したヤマダ電機の店舗を購入・改装し、2年後には運営を開始する計画です。20億円以上にもなる総事業費のうち、9億円が国の交付金で賄われる予定です。
 計画は昨年12月、市議会全員協議会で、市長が突然発表したもの。水面下で公明党議員が仲立ちしヤマダ電機跡地の購入や交付金の準備を進める一方で、議会や保護者、保育関係者への事前の連絡や相談は皆無でした。
 1月以降に開かれた説明会で、市は老朽化した保育施設の建て替えや耐震化が困難であることなどを理由にあげ、「最大のメリットは、震災時の子どもの安全確保と冷暖房完備など施設環境が改善すること」などと主張しました。しかし「災害時、パニックになった子どもが600人もいて、安全に避難できるのか」「感染病予防はできるのか」「国道沿いで交通量も多い場所にあり、送り迎え時の渋滞が発生する」「運動会などの行事はできるのか」などの保護者の不安や疑問は解消されないまま。問題だらけの計画に待ったをかけようと、保護者たちはネットなどでも広く呼び掛け、事業に反対する1万2000人分の署名を提出しました。

自公など賛成 強引に進める
 しかし、3月10日の市議会で、計画推進の自公など13人が賛成し、共産2人、無所属1人の反対を押し切って子ども館事業は議決。付帯決議には「問題が山積みしている」「あまりに拙速で市民等への説明や意見聴取がなされていない。説明・審議時間を十分に確保すること」と記されました。
 「1万人以上の署名を無視して、こんな事業を強引に進めるなんて。私たちの声を聞いてほしい」と言うのは泉南民商婦人部の戸田珠万さん=建築。8歳の陽万莉ちゃんと6歳の心想良ちゃんの2児の母です。市のやり方に驚いた戸田さんは、4月以降、父親と一緒に経営する住宅設備店の入口に「住民投票を求める署名」の台を設置し、120人分を超える署名を集めました。
 市民の間にも「ヤマダ電機の救済事業。子どもを利用している」「国の交付金が欲しかっただけでは」といった不信感が広がりました。「今の保育園は、海でワカメ栽培、山で虫取りなどができる自然豊かな環境。ここで子どもを育てたい」「自宅から車で20分もかかるため、運転できない両親に送り迎えが頼めなくなり、働けなくなる」などの声も高まり、住民投票を求める署名活動はどんどん拡大。阪南市の有権者の約30%が応じ、18日の署名提出の様子は全国メディアでも報道され、注目を集めました。
 署名提出の翌19日、市は条例の不備を理由に住民投票の実施を拒否しましたが、母親たちの運動は止まりません。「私たちは国や市が決めたことに黙って税金を払う人形じゃない。地域や子どもを思う気持ちは消せない」と戸田さん。地域住民との温かい交流の中で子育てができる阪南市を守ろうと、会社事務所周辺でイベントを開き、問題を周知をしていくことを考えています。
 「オール阪南、一点共闘で力を合わせ、子ども館は何としてもやめさせたい」と話すのは、泉南民商の福井滋二会長=飲食。民商は、いち早くこの問題を取り上げ、保育施設前などでの宣伝行動やニュースの発行、パレードの準備などで運動を支えてきました。「『保育園落ちたの私だ』など待機児童が社会問題になるなか、国は幼保一体の大規模保育施設を歓迎し、近隣都市でも同様の動きが出ている。しかし、実態は子どものためにならへん、めちゃくちゃなものと明らかになってきた。国民の声を聞いてくれる政治にせなあかん」。7月に迫る参院選挙、秋に予定されている市長選挙を視野に、決意を語っていました。

▽地域再生戦略交付金
 地方公共団体が、地域再生の観点から地域が直面する課題に対して創意工夫による実効性ある取り組みをする際に、国が後押しするもの。14年補正予算から組まれ、15年度は70億円を計上。
 阪南市の子ども館については、日本共産党の宮本岳志衆院議員が3月17日の「地方創生に関する特別委員会」で取り上げ、与党議員が昨年6月に仲立ちをして、副市長らが文部科学省や内閣府と接触し、交付金について相談していたと指摘。保護者たちの悲痛な声を紹介しながら、「就労に支障が出るような子ども館は、安倍首相が進める『一億総活躍』と大きく矛盾する」「交付金のために国のめがねにかなうような計画を自治体に作らせ、住民の不安や批判には耳もかさない。これのどこが地域再生なのか。交付金による愚かな政策誘導はきっぱりやめるべき」と追及しています。

全国商工新聞(2016年6月27日付)
 

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