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  トップページ > 全商連とは > 調査> 全国商工新聞 第3045号 10月29日付
 
調査 実態調査
 

全国業者婦人の実態調査 深まる消費税転嫁の困難

全婦協が4〜6月実施 9879人が回答

 全商連婦人部協議会(全婦協)は「全国業者婦人の実態調査」(13回目)を4月から6月まで実施し、9879人から回答が寄せられました。3年ごとに実施しており、今回は年代別に調査を行いました。駒澤大学教授の吉田敬一教授が結果について解説します。

若い世代が営業に意欲 消費税「完全転嫁」大幅減

 今回の調査は、前年3月11日の東日本大震災・原発事故から1年後に実施されました。被災地域の実態を見ると自動車・家電などの大企業分野の復興は順調に進みましたが、地域密着の地場産業・商店街・農林漁業では復旧の展望すら十分に見込めない状況が続いています。
 全国的にも業者の営業は厳しさを増していますが、調査対象者に占める若手・中堅婦人部員の比率を高めた結果、中小業者の展望を切り開く明るい兆しも見え始めています。
 営業環境の実態を明瞭に示す売り上げ状況について見ると(図1)、2012年調査の売り上げでは「減少した」割合は59.9%から46.3%へと大幅に減っています。

図1 売上状況の特徴

営業の環境は悪化傾向続く
 これはリーマンショックの場合には日本経済全体に大きな影響を与えたのに対して、東日本大震災の場合には直接的打撃は地域的に限定されていたこと、日本経済自体はリーマンショックからの回復基調に当っていたことに起因するもので、比較基準の2009年調査が異常事態であったことに過ぎません。消費税増税法案の通過やTPP参加問題に見られるグローバル化・規制緩和の動向から、基本的傾向としてはむしろ営業環境のさらなる悪化が続いています。

小規模事業の売り上げ減少
 売り上げ状況を業態別に見ると「個人・白色」の売り上げの減少が極めて高い割合で、過半数の営業が赤字経営であることが気になります。所得別では、年間所得300万円を境にして業者間の経営格差が拡大しています。この事実を単純に「規模の利益」として理解するのではなく、零細経営でも活路を切り開きつつある同業仲間や異業種の業者婦人のさまざまな経営努力の試みの事例からヒントを前向きに学ぶこと、すなわち小さい営業だからできるきめ細かなサービスや気配りなどの営業努力がこれまで以上に求められています。
 経済のグローバル化と規制緩和政策は、貧困と格差を拡大しています。こうした状況下での消費税増税は消費支出をさらに抑えるとともに価格破壊を促進し、消費税の転嫁問題で中小業者の営業基盤を弱体化させます。前回調査との比較では「完全に転嫁」している業者の比率が大幅に低下しており(図2)、消費税を全額ないし部分的に自己負担している業者が多数派を形成するという危機的現象が見られます。このうえ消費増税が実施されると業者の持ち出し負担がさらに増え、営業破壊が加速化するでしょう。

図2 消費税の転嫁状況

若い年代層が実力身に付け
 消費税の転嫁問題では、若い年代層の営業ほど転嫁している営業の割合は高く、営業能力の高度化が垣間見られます。また全婦協が全力投球してきた所得税法第56条問題でも、40歳未満では報酬を取っている割合は47.7%で「取っていない」(45.3%)を上回っていました。営業の見通しでも全体的には厳しさが増していますが(図3)、「見通しがたたない」の割合は40歳未満の層では5%、「廃業を考えている」は2%と低水準であり、「見通しあり」が14.8%と高い水準にあることは、次世代の担い手である若い業者が時代のニーズに対応した実力を着実に身につけていることを示しており、業者運動にとって明るい話題といえます。

図3 今後の営業の見通し

 営業の課題は地域別・業種別・業態別・年代別に多様化の度合いを強めています。この調査を踏まえて、地域に根ざしたきめ細かな“良い営業環境づくり"の運動強化が求められています。

全国商工新聞(2012年10月29日付)