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  トップページ > 全商連とは > 調査> 全国商工新聞 第2884号 6月22日付
 
調査 実態調査
 
東京・大田区の製造業を実態調査 7割が売上半減
「仕事欲しい」が「何いってもムダ」との声も


 日本のものづくりを支える東京都大田区。昨年秋以降の経済危機が中小業者の経営を直撃し、年度末を境に事態はさらに深刻化しています。全国商工新聞編集局と蒲田、大田、雪谷の3民主商工会(民商)は5日、区内の製造業者の実態調査を実施し、132人から回答が寄せられました。「売り上げが昨年同時期と比べて50%以下」が68%など厳しい結果に、要望の高い固定費補助の必要性が浮き彫りになりました。


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激しい発注減
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 この日の行動には29人が参加。組をつくって町工場を軒並み訪問し、12項目を直接、聞き取りました。かつて地域に響きわたっていた機械の音は小さく、シャッターが降りたままの工場も目につきます。工場を開けていても、経費削減のため電気をつけず、電話やファクスの前で仕事を待っている業者も。町工場の活気は失われつつあります。
 アンケート調査の結果では、昨年同時期と比べて売り上げ70%以上減が4割、50%以上減では68%と危機的な事態。5月の売り上げが2万円、3万円という業者もいました。
 売り上げ減少の要因は、68%が親会社からの発注減・キャンセル。2月に受注した仕事が打ち切りになり、工賃が入らないという声も聞かれました。

工場の家賃負担
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 負担が重いのが工場の家賃。回答者の56%は工場を借りており、平均の広さは22坪、平均家賃は約18万円です。仕事がなくても家賃や光熱給水費などの固定費を払わなければならず、アルバイトに出て固定費を工面している業者もいました。
 アンケートを取っている最中、朝の清掃のアルバイトから戻ってきた機械加工業者に出会いました。「36年間、これほどの厳しさは初めて。これまでも厳しいときはあったけど、どこかに行けば仕事を見つけることができた。今回はどこに行っても仕事がない。先が見えない」と肩を落とします。民商が要求している家賃などの固定費補助の実現は切実です。

雇用調整も課題
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 さらに従業員がいる業者のうち、人件費を維持しているのが26%。一方、やむなく「減給」(31%)、「解雇」(8%)との回答も。また、従業員の労働時間を調整している事業所もあり、国が休業手当の8割を助成する「緊急雇用安定助成金」を申請・検討している事業者は35%を占めました。ところが、制度を受けることが「できない」との回答も多く、家族が役員になっている場合は従業員と見なされない、社会保険料を払っていない事業所は申請できないなどの問題点が浮かび上がってきました。

高い融資要求
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 融資については「国や東京都、大田区の緊急融資を受けた」が46%を占め、融資要求の高さを示す一方で、「借りても返せない」との声もありました。
 国や自治体への要望で多いのは「国税、市民税の減免制度の拡充」「リース料・家賃などの補助」。「適正な取引への指導」を訴える業者も少なくなく、「相見積もりでの競争で、1時間あたり4000円だった仕事が600円、700円に切り下げられ、パート代よりも安くたたかれている」などの実態が明らかになりました。

増税は反対だが

 消費税については「賛成」はわずか5%。「これ以上の増税は反対」が半数を占め、「廃止」が15%。一方で「仕方がない」が26%を占め、「国の財政が大変だから」「高齢化社会を支えるために仕方ない」と考えている業者もいました。
 「今、商売で一番言いたいこと」で共通していたのは「仕事が欲しい」「景気回復」。同時に「何を言ってもむだ」とあきらめの言葉が聞かれました。

経産省も大田区を実態調査へ

 全商連も先に提案した「5つの緊急要求」の中で貸し工場の家賃をはじめ、下請け業者の固定費補助を行うことを要望。国会では日本共産党の吉井英勝衆院議員が5月22日、大田区内の中小業者の実態と家賃補助の問題を取り上げ、二階俊博経産相は「中小企業のものづくりの技術力は宝だ」と述べ、技術集積地の中小企業に対し、「現場に赴き、積極的な救済策、対応策を即刻考える」と明言しました。
 1週間後の29日には、経済産業省の部課長7人が大田区に入り、実態を調査。大田工業連合会会長、京浜島のメッキ関連の協同組合理事長ら2人、蒲田民商会員3人が区の会議室に集まり、実態を報告。「皆さんの話を持ち帰り、大臣にも報告します」と部課長は話していました。



蒲田民商の萩島実会長=印刷=の話

 製造業者の厳しさは想像以上でした。10年ほど前に不況打開実行委員会で工場を訪問したときの比ではありません。
 今回のアンケート調査の結果は、実態を裏付ける貴重な資料です。3民商はリース代や家賃などの固定費補助を要求しています。この結果を持って大田区や東京都とさらに交渉し、大田工業連合会とも懇談して固定費補助を何としても実現させたいと思っています。



今一番言いたいこと=実態調査から

「月20万円の売り上げがあった取引先の受注が2〜4月はゼロ。仲間が回してくれた仕事でつないでいる」
(機械加工・73歳)

「こんなひどい状況は初めて。どこに行っても仕事がない。4、5月の売り上げは月5万円。見通しがない」
(機械加工・45歳)

「仕事が欲しい。あれば何でもできるのに。忙しくやってきたのに、昨年から仕事がどんどん減っている。働けないのがつらい」
(研磨・55歳)

「仕事がなければ、返済することもできない。廃業したら借金だけが残る」
(板金加工・74歳)

「家も競売にかかり、売ってしまった。何を言ったところでどうしようもない」
(プレス・64歳)

「融資を受けたが、返せる見込みがないので、手がつけられない。自分の給料が取れていない。区の工場やアパートの家賃になるぐらいの補助が欲しい」
(部品加工・59歳)

「3人でやっているが、1人分の仕事しかない。後継者はいるが、継ぐのを待ってもらっている
(プレス加工・61歳)

「日本のものづくりの単価が安すぎる。後継者が育たないのもそこに問題がある」
(金型製造・45歳)
 
     
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