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政府
厚労省「試案」医療制度改悪の中身とは
さらなる負担強いる
健康破壊いっそう深刻
 厚生労働省が発表した「医療制度改革の試案」は、医療費の伸びを抑えるため、高齢者を中心とした患者の負担を増やすことを柱に、7兆円の医療費給付費削減を明記しています。政府はこれをもとに年内に案をまとめ、来年の通常国会に法案を提出する方針です。中小業者の健康破壊が、ますます深刻になるなか、さらなる負担を強いる医療制度改悪の中身とは‐。

 「試案」では、当面すぐとりくめる医療費抑制策として、(1)高齢者の自己負担増(2)療養病床入院患者の食費・居住費負担(3)高額療養費の自己負担上限額の引き上げ‐‐を掲げています。
 医療費の窓口負担は現行では70歳以上の人は1割。65歳以上が2割となり、70歳から74歳の人は負担が増えます。
 70歳以上で「現役並み所得者」は、現行の2割から3割に。夫婦で年収620万円以上の世帯が対象でしたが、年金控除の縮小で来年には最低年収額が520万円以上に下がります(上の図)。
 長期療養が必要な患者が過ごす療養病床。ここに入院する、70歳以上の人に食費と居住費の負担が増えます。
 厚労省のモデルケース(住民税課税・多床室)では、現在の自己負担額月6万4000円が、食費2万2000円と居住費1万円の計3万2000円増えて、月9万6000円になります。
 高額療養費制度は医療費が高額になった場合に患者の自己負担を抑える仕組みです。70歳未満で一般の場合、自己負担の上限は月7万2300円ですが、これを月8万100円に引き上げます。
 中長期的な施策では、糖尿病などの生活習慣病の患者の減少率、平均入院日数の短縮を中心とした「医療費適正化計画(仮称)」を都道府県に作らせ、疾病予防で医療費を抑えるもの。政策目標が達成できなかった場合の罰則も盛り込んでいます。
 また、75歳以上のすべての高齢者から保険料を徴収する「高齢者医療制度」(※1)の創設なども提示しています。
 東京・杉並民主商工会(民商)共済会は、この試案が発表されてすぐに、医療制度改革について学習しました。
 理事長の松本恭太郎さん(72)は、「選挙で大勝した自民党が消費税増税を言い出している。さらに医療費も1割から3割へと、目に見えた形で負担を押し付け、社会保障で大企業や保険会社がもうかるような仕組みをつくっている。業者は今でさえ大変な状況で、廃業する仲間も多く、二つも三つも病気を抱え、入退院を繰り返している人の不安が高まっている」と話します。
 中小業者の健康破壊は経営難とともに深刻化しています。「病気になっても患者になれない」「病気が重症化してからようやく受診」といった事態がすすみ、全商連共済会の調査でも、発病・初診から1年以内の死亡は依然として高い水準となっています。
 高齢者への負担増は医療制度改悪の突破口であり、一般の入院患者の食費・居住費の自己負担なども狙われています。
 政府の経済財政諮問会議の民間議員は「医療費の伸びが経済成長を超えてはならない」と、経済指標と連動した抑制策を求めており、厚労省も▽食費・居住費負担を一般病床の入院患者まで拡大▽保険免責制度(※2)の導入▽診療報酬を10%削減すると、医療給付費をさらに7兆円削減できると試算しています。
 保険免責制度の導入では、今以上に医療費負担が多くなるため、受診抑制も引き起こします。
 安心して医療を受ける権利をないがしろにするような、制度の改悪は許せません。


(※1)高齢者医療制度=08年度をめどに創設。財源の5割は公費で市町村が運営主体、高齢者の保険料は年金から天引きで年間7万円程度の負担。
(※2)保険免責制度=外来診療につき、かかった医療費のうち受診1回ごとに一定額(1000円または500円)までは自己負担。
 例えば、1回3000円の医療費の場合、現在の自己負担は3割で900円。保険免責制度が導入されれば、一定額1000円と、3000円から1000円を差し引いた2000円の3割にあたる600円を加え、1600円が自己負担となります。
 
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