国保改善の大きな力に
全商連「提言」に各界から歓迎の声

全国商工新聞 第3353号2019年3月18日付

 全商連は「国民健康保険料(税)の引き下げと制度改善を-中小業者の『受給権』確立の7つの提言」を発表しました。国保を社会保障制度として持続・発展させるための具体的な提案を行う「提言」に、識者や諸団体から歓迎の声が寄せられています。

国民皆保険制度 再建を

NPO法人医療制度研究会副理事長
10月消費税10%ストップ!ネットワーク呼び掛け人
本田 宏さん

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 国保制度の危機、そのルーツは1983年当時の厚生省保険局長が唱えた「医療費亡国論」にあります。
 日本は外来診察料や手術料等を欧米の3分の1程度に設定し、世界一の高齢化社会にもかかわらず、GDP当たりの医療費を先進国最低に抑制してきました。一方、薬剤や医療機器価格は世界最高レベルに設定して、製薬や医療機器メーカーは黒字を謳歌。患者窓口負担は世界最高レベルまで増大させた上に、財政赤字を理由に国保税値上げをもくろんでいます。
 現在問題となっている医師不足も、医療費抑制を目的に医学部定員を削減した結果で、世界一高齢化社会の日本の医師数約32万人(2016年12月)は、OECD加盟国平均と比較して12万人も不足しています。
 医療の窮状を無視し、憲法に明記された生存権と医療を受ける権利(受療権)よりも経済が最優先では、国民皆保険制度が崩壊してしまいます。
 国保制度の改善を求める全国商工団体連合会を心から応援します。

受療権確立への「指針」

三重短期大学教授
長友 薫輝さん

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 「国民健康保険は国民皆保険の最後の砦です」-2018年4月から始まった国保の都道府県単位化に関して、厚生労働省が作成したパンフレットに記された文言です。
 今やこの文言に込められた国保の認識は、政府・厚生労働省や保険者である自治体、被保険者が集う民商・全商連など、さまざまな人々の共通のものといえるでしょう。
 国保は地域住民の労働・生活になくてはならない医療保障の仕組みです。皆保険体制の砦である国保の底上げを図る政策展開、制度改善が必要です。
 全商連の国保提言は、次の一歩を踏み出す具体的なメニューが記されています。私たちがどのように地域の医療保障水準を充実させていくべきか、受療権そして健康権を確立するのか、その骨子となるものです。これから先、七つの政策提言の中から解決すべき優先順位をどうするのかという議論が必要となります。その上で、提言実現へ、合意形成を進めることで着実な歩みとなるように思います。

保険料は「応能負担」で

中央社会保障推進協議会 事務局長
山口 一秀さん

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 国民健康保険の都道府県単位化は、医療・介護費を抑制する仕組み作りを目的としたもので、国保の抱える構造的な問題を何ら解決するものではありません。
 2019年度の国保料(税)は、一般会計から国保会計への法定外繰り入れ削減の影響もあり、軒並み値上げが予想されています。
 国保は本来、公費負担を原則とする制度であり、国保法第1条は、「健全な運営を確保し、もつて社会保障及び国民保健の向上に寄与することを目的とする」として、国保が社会保障であることを位置付けています。
 「提言」は、国保料(税)を「払える保険料」にするために、算出方法を「能力に応じた負担」に改めることを強調しています。同時に、国保を保険証1枚で「いつでも・どこでも・だれでも必要な医療が受けられる」制度とすることを求めています。
 「提言」を現実のものにしていくことが重要です。憲法9条と、同25条を語り、平和と社会保障は一体のものであると語っていきましょう。

負担軽減を実現できる

全日本年金者組合中央執行委員
増子 啓三さん

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 「提言」は迫力、説得力ともに抜群です。国民皆年金と並んで国民皆保険は、社会保障の双璧のはずです。しかし、国民年金は、保険料納付率が実質的に4割と、完全に“空洞化”しています。
 今、基礎年金部分は、受給額の2分の1を税財源で負担する仕組みになっています。私たちは、基礎年金満額の2分の1(約3万3000円)を高齢者全員に税財源で支給することを当面の課題にしています。
 国保制度も「提言」が指摘しているように、“過酷な制度”になっています。65~74歳が40%を占め、「被用者」が3割弱でかつ圧倒的多数が非正規の労働者です。国保制度は高齢者や、収入が低く不安定な非正規労働者の健康と命を守る大切な公的医療保険のはずです。
 解決の第一歩は、「提言」が述べているように、消費税に頼らない「国庫負担の引き上げ」です。新たに1兆円の公費を投入すれば「応益割」を廃止し、全国平均で約16万円の負担軽減を実現できます。

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