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  トップページ > 国保・年金のページ > 国民健康保険 > 全国商工新聞 第3264号5月22日付
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国民健康保険 都道府県単位化の狙いは 市町村通じて医療費削減

 「持続可能な保険制度改革を構築するための国民健康保険法等の一部を改正する法案」の成立(2015年5月)を受け、18年度から国保の保険者は都道府県と市町村になります。従来との違いは、都道府県が国保財政運営を行う、つまり財布を握ることです。都道府県単位化の狙いと保険料試算から見えてきたもの、この夏の運動の課題について、大阪社会保障推進協議会事務局長の寺内順子さんに聞きました。

寺内順子さん=大阪社保協・事務局長 に聞く

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 最大の狙いは、医療費の削減です。都道府県に国保財政を握らせることにより市町村に医療費を削減させることが目的です。
 2011年に厚生労働省が試算したデータによる、2015年度の社会保障総額は、122兆円。年金給付費が58.2兆円で48%を占めます。次に医療費給付費39兆円で32%。この両者で社会保障費の80%を占めます。団塊の世代すべてが75歳以上になる2025年には、年金給付は3.7兆円増ですが、比率は41%に下がります。一方、医療給付は14.4兆円も増え、比率も35%となり年金給付に接近します。
 国はこれまでも医療費を削減しようとしてきていますが成功していません。そこで、都道府県を通じて、医療費抑制、提供体制の「適正化」を行わせようとしているのです。

試算 保険料増額に
 18年度以降の保険料(税)は、都道府県ごとに全体の医療費を算出し、そこから国庫支出金、都道府県支出金、前期高齢者交付金などの収入を引いた上で、所得水準・医療費水準を加味した(1)都道府県事業費納付金を算定します。さらに(2)市町村ごとの事業費納付金を計算し、(3)都道府県ごとの計算方法で算出した標準保険料率を計算し、(4)市町村独自の計算方法で市町村保険料を決定する-という順序になります。
 昨年10月、厚生労働省から都道府県に「事業費納付金・標準保険料算定システム」が下ろされ、11月末に第1回、今年1月末に第2回の試算結果が報告される予定でした。
 北海道は昨年11月にいち早く試算結果を公表、その後、大阪府、滋賀県、三重県、埼玉県などで公表されていますが、多くの自治体がいまだ公表していません。
 埼玉県第2回試算によると県平均で国保税は1.5倍となっています。大阪府は「あてにならない数字」としていますが、現行保険料率より下がるのは6自治体のみです。負担緩和のために法定繰り入れをしている自治体では、当然保険料は高くなります。また、累積赤字がある自治体にはさらに厳しい保険料となるでしょう。
 国が設定した第3回試算は8月です。「今後のスケジュール」に示されるように各都道府県で「国保運営方針」の検討が進められており、11月には国保運営協議会で「国保運営方針」が決定されることになっています。

夏にかけて 正念場
 これから夏にかけてのたたかいがまさに正念場といえます。
 第一に、1月末に国に報告された「納付金・標準保険料」試算結果を公表させることです。
 公表しない場合は、公文書開示請求を行う必要があります。たとえ数字が正確でなかったとしても、具体的な試算を公表させることにより傾向を把握することができ、議論を深める契機とすることができます。
 第二は、都道府県・市町村議会でも試算内容を公開させ、議会としての議論を求めることです。運営協議会の答申が出れば、議会の関与なく決定されることになるので、6月議会を逃すと議会として意見を反映させる機会を逸してしまいます。国民健康保険は、法に明記された社会保障です。たとえ、都道府県化されても‘社会保障たるに値する制度運営をすべき’との住民の声を議会に伝え、議会としての審議を求める必要があります。
 第三は、市町村長に試算結果をどう考えるか、被保険者が払える保険料であるのか、払えない保険料であればどうするのか、首長としての考えをただすことが重要です。
 第四は、ガイドラインにもある通り、「国民健康保険運営方針」はあくまでも国の自治体への技術的助言です。保険料賦課決定権限と予算決定権はこれまで同様市町村にあるので、都道府県の「運営方針」に地方自治権を侵害しないように明記させることです。
 佐賀県では、当初事務レベルでは「一本化し統一保険料をめざす」としていました。
 しかし、自治体首長から意見が相次ぎ、「一本化は任意であり、各市町村間のメリット・デメリット等をしっかり整理・検証する時間が必要」「一本化はめざすが、目標の期限は定めない」と変化しています。
 大阪では連休明けから自治体キャラバンを計画していますが、これから夏にかけての運動が重要です。力を合わせましょう。

全国商工新聞(2017年5月22日付)
 

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