国保料滞納で差押急増　違法な滞納処分を許すな

国保料の引き下げ署名に取り組む国保をよくする福岡市の会(民商も加盟)

　「保険料が高過ぎて、払いたくても払えない」「分納していたのにいきなり差し押さえられた」と、国民健康保険（国保）に関して多くの中小業者から悲鳴が上がっています。景気の悪化などを背景に、国保料（税）を滞納せざるを得ない世帯が急増。厚労省の調査（09年度）では、市町村による差し押さえ世帯数は18万2583件（前年比11.1％増）、金額で644億円（同14.3％増）と過去最高を更新したことが明らかになりました。各地の民主商工会（民商）は、違法な滞納処分を許さないたたかいを広げ、保険料の引き下げや減免運動を展開しています。

　市町村に国保料（税）徴収を厳しく指導する北海道。苫小牧民商を訪れた相談者は「苫小牧市の担当職員に『市の制度上、2年間は国保税の滞納処分ができないが、3年目からはその限りではない』と言われた」と話しました。
　札幌市では11年7月に、12万円の保険料滞納に対して180万円の学資保険を差し押さえる事例や、不動産の差し押さえ予告を行う事例が起こっています。
　横浜市では、6月に市県民税の担当者が国保料や保育料の滞納処分を一括して行えるよう、取扱要綱を改定しました。
　大阪市では10年9月に「国保・介護収納対策チーム」がつくられ、財産調査や差し押さえ目標を従来の倍に設定。生命保険の差し押さえ予告を受けたり、分納をしていたにもかかわらず生命保険を換金されたりする事例も。市の職員は「私たちの仕事は取り立てること」と強弁しています。
　処分件数が増加の一途をたどっている背景には、国が社会保障費抑制を続け、国保料（税）の国庫負担を削減（84年50％→08年24％）してきたことがあります。独自財源で補てんできない多くの自治体は、国保料（税）引き上げを強行。年所得200万円（4人世帯）で年間50万円という「払いたくても払えない」ほどの保険料になる市町村も続出してきました。
　その結果、436万世帯（10年度・全国保加入世帯の20％）が滞納する深刻な事態になっています。
　住民に冷たい国保行政に対し、各地の民商は国保改善運動を展開。全国で6529件の国保相談を行い、3449件の国保減免を実現しています（09年7月1日〜10年6月30日）。
　また、地域の社会保障推進協議会と共同して高すぎる国保料（税）の引き下げ運動を展開。各地で引き下げや値上げ凍結の成果を挙げています。福岡市では4年間のうち3回、北海道旭川市では1世帯あたり2万円（11年度）の国保料引き下げをかちとっています。いずれも、署名運動や議会請願、議員懇談が自治体を動かしました。
　国保料（税）の問題で困ったら、お近くの民商にご相談ください。

国保証発行と減免実現＝滋賀・湖東
　滋賀・湖東民主商工会（民商）のＦさん＝弁当＝は先ごろ、正規の国民健康保険（国保）証の発行と、国保料の減免を実現しました。東近江市の不況減免制度を活用したもので、「本当に助かりました。これで安心して病院に行けます」と喜んでいます。
　Ｆさんは2年前に市内で弁当屋を開業。しかし所得はほとんどなく、派遣で仕事をしながら生計を立てていました。東近江市への転入時に国保の手続きが行われていなかったため、手元に保険証はなくこの間の医療費はすべて実費です。「手続きが行われていても、恐らく国保料が高く払えなかった」と話します。
　体調が悪くても我慢を重ねてきましたが、腰痛が悪化し、ついに仕事ができない状況に。病院に行くにも先立つものがなく、民商へ相談しました。「東近江市には不況減免があります。議員にも同席してもらい、交渉しましょう」と市役所へ向かいました。
　東近江市の不況減免制度は、国保料の所得割部分について減免が実施されるもの。特定月の所得が、前年同月と比べて減少していることが条件です。所得が全くない場合は10割、所得が半分になっている場合は5割など減少した所得に応じて減免額が決定します。
　Ｆさんは生活の状況や病状などを書き、申請書を提出。交渉の結果、事業上の所得がなく、派遣での所得もなくなってしまったため、10割減免が適用されることに。月々3000円の国保料で済むことになりました。また正規の保険証も即日発行されました。現在、Ｆさんは通院を続けながら仕事を頑張っています。