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トップページ > 金融のページ > 融資制度 > 全国商工新聞 第2914号 2月15日付

 
金融 融資制度
 

危機を生きぬく金融対策交流会

 全国から寄せられた「困難突破事例」は民商ならではのものばかりです。この組織がさらに大きくなれば、それだけ多くの中小業者が救われるということであり、民商の存在意義にかかわる運動です。融資相談に大いに応え、融資を実現した会員・業者に、紹介や拡大運動で人助けの側に回ってもらう働きかけも強めましょう。

1、金融をめぐる情勢の特徴と交流会の目的
 1、厳しい資金繰りの背景

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全国から報告された融資獲得のとりくみは参加者を励ましました(27日、都内で)

 原油・資材・穀物高騰、リーマンショックに続き、円高とデフレが同時進行する今日、多くの中小業者が経営と暮らしの危機のなかで、生きぬく道を模索し、格闘しています。
 また、金融自由化、不良債権処理、地域金融の統廃合、国民生活金融公庫の株式会社化(現・(株)日本政策金融公庫)、信用保証制度への「部分保証」導入などが推進されました。金融庁は金融検査マニュアルや厳格な債務者区分と自己資本規制で金融機関を管理・監督し、金融機関は、直接金融に傾斜し、中小企業向け融資を減少させ、大企業向け貸し出しを増やしてきました。中小業者を「不良債権扱い」する政治と金融行政、金融機関の姿勢が中小業者の資金繰りを困難にしてきたのです。
 2、切実さを増す金融要求と交流会の目的
 こうしたなか、金融要求が強まっています。また、昨年10月に改善された生活福祉資金貸付制度への関心・期待が高まっています。
 商売を続けるためにも、生きていくためにも、資金獲得は緊急切実な課題であると同時に日常的に継続する要求となっています。
 今回の交流会の目的は、一つは、新規融資を含む借り換えや条件変更などを実現させてきた困難突破事例、融資制度改善など、各地の融資獲得運動を交流し、全国的な到達点に学び合うこと。二つは、金融機関や自治体の姿勢を前向きに変え、実践力を身につけ、融資獲得運動の力を高め合うこと、三つは、融資獲得や負担軽減の要求運動と組織建設を結びつけることです。

2、この間の融資獲得運動の特徴
 1、金融政策の変化をつくりだしてきた私たちの運動
 政権交代で亀井静香金融担当大臣が私たちの集会に参加し、「返済を延ばすだけでなく、必要なお金をお貸しする」と、金融政策のコペルニクス的転換を表明しました。
 そして、返済猶予だけでなく借り換えや新規融資などの金融要求に応える努力義務を金融機関に課すという金融円滑化法の施行、金融検査マニュアル改定、条件変更対応保証創設が同時に行われました。
 生活福祉資金貸付制度の保証人要件の緩和、金利引き下げ、返済期間延長など10月に制度改善が実施されました。
 2、困難突破へ果敢に挑戦
 金融機関や金融行政に対して、粘り強く運動し、返済期間や据置期間の延長など制度改善を実現し、自己破産で免責を受けた業者にも融資の道を開いています。政策公庫の6・7%という高い金利を借り換えることで2%へ引き下げることも実現してきました。
 3、「金融アンケート」に寄せられた成果と課題
 (1)困難突破の特徴
 税金滞納をはじめ、過去の事故や免責、身内の返済不履行、債務超過などを乗り越えて新規融資や借り換え、条件変更を実現する成果が広がっています。
 事業計画や返済計画を作成し、困難突破の力にしています。
 「保証料全額補助」や「金利全額補助」を実施している自治体もあります。
 金融円滑化法施行を機に、金融機関や信用保証協会、政策公庫への申し入れや懇談を展開したところでは、「努力義務以上の対応を考える」「赤字以外の利点をお客さんと話し合い、親身に対応したい」など、融資獲得に生かせる回答を引き出しています。
 (2)金融機関の姿勢と課題
 「対象業種が増えただけ、審査は変わらない」(信用保証協会)、「公共料金の支払い遅れを理由に断られた」(政策金融公庫)、「保証承諾後も融資を実行しない」(金融機関)など、引き続き改善を求めなければならない事例も少なくありません。こうした実態を放置せず、改善を求める運動を強める必要があります。
 全中連は1月27日、関係省庁、全国信用保証協会、日本政策金融公庫に要請。中小企業庁では「金融円滑化法の政策体系のなかに信用保証協会も位置付けられる」ことを確認しました。「保証協会が保証をしない理由として『税金滞納』や『総合的判断』というだけでは不十分なので、少なくとも、申込者が納得できる説明をするよう、個別事案でも指導する」と応えました。金融庁では「問題点があれば挙げてほしい。どんどん指導する。設備資金を取引相手の口座に振り込むことを融資の条件にすることはダメだ。条件変更を理由に貸さないというのはあってはならない」との回答を引き出しています。

3、危機を生きぬく資金獲得運動の重点
 1、「融資は権利、借りて商売を続けよう」に確信を
 融資獲得運動を大きく進めるためには「融資を受けることは中小業者にとって権利である」ことに確信を持ち、「借りて商売を続けよう」と腹の底から訴えることが大切です。その要は、(1)中小業者は地域経済になくてはならない存在であり、(2)融資獲得運動は、地域に資金を循環させる金融機関本来の役割発揮を求める道理ある運動であること、そして、(3)中小業者の特性でもある小さな自己資本を融資によって補完することは社会が認める合理的な方法である、ということを押さえておくことです。
 2、「金融円滑化法」や「景気対応緊急保証」を生かす
 私たちの要求を反映した「金融円滑化法」が施行されました。同時に、法の趣旨を徹底するために金融検査マニュアルが改定され、「条件変更対応保証」も創設されました。
 さらに、鳩山内閣は3月末で期限を迎える緊急保証に代わって、例外を除く全業種を対象とする「景気対応緊急保証」創設と6兆円の融資枠拡大を打ち出し、2月15日から実施されます。セーフティーネット貸付の期限延長と約4兆円の貸付枠・条件変更目標の追加も行われます。
 (1)「金融円滑化法」
 金融円滑化法によって(@)金融機関は中小業者、住宅ローンの借り手から申し込みがあった場合には、条件変更等を行うように努める(努力義務)(A)金融機関は融資要求に応えるための体制を整備し、取り組み状況を開示する(B)国は、金融機関が開示した情報を取りまとめ公表する―ことになりました。同法の「条件変更等」には、元金の返済猶予だけでなく、新規融資や借り換え、金利の引き下げも含まれています。また、プロパー融資だけでなく、制度融資の借り入れも対象です。
 (2)金融検査マニュアル改定
 リスク管理を中心とした「謝絶」のための審査から、「貸す」ためのコンサルティング機能(経営相談・経営指導等)を発揮する審査への転換を促すために、金融検査マニュアルが改定されました。経営改善計画等の策定が可能であると見込まれる場合、計画などの策定を最長1年間猶予し、その間は「貸出条件緩和債権」(不良債権)に該当しない措置も取られます。
 「金融円滑化編チェックリスト」によると、「与信審査・与信管理」(融資の審査や管理)については(@)「経営相談・経営指導及び債務者の経営改善計画の策定支援などに積極的に取り組んでいるか」(A)「貸付条件の変更等を行った債務者について、債務者の実態を十分に把握した上で、適切な資金供給を行っているか。貸付条件の変更等の履歴があることのみをもって、新規融資や貸付条件の変更等の相談・申込みを謝絶していないか」などが盛り込まれました。
 「顧客説明等」では、「新規融資や貸付条件の変更等の相談・申し込みを受けた場合に、迅速な検討・回答に努めているか。また、謝絶又は資金回収を行う場合には、可能な限り根拠を示して顧客の理解と納得を得るための説明に努めているか」がチェックされることになります。
 (3)「条件変更対応保証」
 対象は、信用保証協会の保証付融資や政策金融公庫、商工中金などの公的融資を活用していない業者です。保証割合は40%、保証期間は最長3年、保証料は2・2%で、9段階になった保証料の最高率が適用されます。保証限度額は2億8000万円で、経営改善計画や返済計画が必要とされています。経済産業省は「2・2%という高い保証料を求める分、金融機関に金利引き下げを要請する」としていますが、強制力はなく、金融機関がどこまで利下げに応じるかどうかは不透明です。
 (4)「景気対応緊急保証」
 緊急保証が3月末に実施期限を迎えることから、新たに実施されるのが「景気対応緊急保証制度」です。特徴は、信用保証協会の保証対象とならない業種以外は対象とすることと、売上や利益の落ち込みを計算する際、2年前の数字と比較してもよいことなどが盛り込まれていることです。
 3、かちとってきた金融支援策を生かし、あらゆる金融要求の実現を迫る
 (1)融資要求への対応の注意点
 緊急保証が実施された直後に融資を受けた場合、据置期間が終了し、「元金返済が始まるけれど、さらに資金が必要」という相談をはじめ、同じ会員から繰り返し融資相談が寄せられるケースもあります。そうした場合に、条件変更だけでは要求に応えきれたとはいえない場合もあります。
 対応の基本は、相談者の要求に応えることにあります。どうすることが一番よいのか、解決の方向を相談者本人が判断し、要求実現へ自ら立ち向かえるように一緒に考え、支援することが大切です。
 (2)金融円滑化法の趣旨を生かす
 私たちの運動で据置期間を1年から2年に延長させた緊急保証と低利で安心できる公的制度融資を活用するなど、金融支援策を生かす必要があります。また、努力義務を課した金融円滑化法の趣旨や金融検査マニュアルの改定内容に基づく対応を金融機関に迫る必要があります。
 すでに緊急保証を使った借り入れがあり、1年の据置期間が終了する場合でも、さらに借り換えて2年間据置にすれば、実質的には3年間の元金返済据置と同じ効果があります。
 保証料は運転資金に組み込むことができます。複数の借り換えを一本化して月々の返済額を減らしたり、据置期間を有効活用して、「据置期間中は金利のみの支払いにする」など、返済負担の軽減を図るためにも「追加融資を含めた借り換え」を前面に取り組むことが重要です。
 自治体に保証料や金利の全額補助を求めましょう。
 新たな融資を必要とせず、月々の返済額を減らそうとする場合には、条件変更を積極的に活用します。
 融資を断られ場合には、その具体的事例を示し、金融機関の姿勢を変える運動が必要となりますが、「断られてからが勝負」という姿勢で臨みましょう。「大臣目安箱」に実態を告発することも有効です。
 (3)「事業計画書」や「返済計画書」作成に強くなる
 借り換えだけでなく、条件変更や新規融資の申し込みに際して、「事業計画書」や「資金繰り表」が求められる場合があります。「事業計画を出せと言われても、見通しなんて示せない」というケースが増えています。しかし、ここであきらめては、せっかくの新しい制度も生かせません。何より、計画書づくりとそれに基づく主張が力になっています。それだけに、金融機関から不良債権扱いさせず、融資獲得のカギとなる「事業計画書」や「返済計画書」の作成に強くなる必要があります。その際、「集まって、話し合い、相談し、助け合う」という活動の原点を生かすことです。
 すでに条件変更を行っている場合には、金融庁が行った監督指針と金融検査マニュアルの改定(08年11月7日)内容を生かすことが大切です。この改定で、「経営再建計画の期間が概ね5年以内で、計画終了後、正常先となる」場合は不良債権扱いしないことになりました。「しんどいから貸してくれ」という主張は厳禁です。
 自分の商売や商品、サービスへのこだわりや熱意、地域で頼りにされている姿、こつこつ頑張ってきた歴史などを前面に押し出し、融資獲得に結びつけているケースも報告されています。
 「売上や利益を伸ばす計画」「新たな仕事にも取り組み収入を維持」「一括仕入れで原価を下げ収益アップ」など攻勢的な事業計画だけでなく、「経費を減らして返済原資を確保」とか、「5年後には年金を受給するので収入が減っても返済も生活もできる」「子どもが大学を卒業するので今以上の返済は可能」など、堅実な経営計画や生活の将来像を交えて示す柔軟な計画書作成が求められます。

4、生活福祉資金貸付制度活用にあたって
 戦後、各地の民生委員を中心とした低所得者世帯の自立更生促進運動が全国的に波及するなか、1955年に制度が創設され、改善されてきたという制度の成り立ちを含めて、貸付制度の内容をつかむ必要があります。
 生活福祉資金貸付に携わる社会福祉協議会の職員や民生委員は、地域住民の窮状救済という役割を担っており、民商運動と共通する側面を持っています。
 担当者は他の仕事を兼任している場合が多く、休日返上で仕事をしている職員もいます。「力を合わせる」立場で、粘り強く理解を促しつつ権利を主張し、相談・説明し、申し込むことが大切です。
 この貸付制度を「扱ったことがない」という社会福祉協議会もあるなかで、理解してもらう必要があるのは、中小業者は営業と生活とが密接・不可分であり、経営(生業)が成り立ってこそ家族の生活も維持することができ、世帯の更生につながるということです。
 全国からの事例報告では、(1)時間がかかり過ぎる(2)担当者の理解不足や担当職員が少ない(3)「業者は対象外」「設備以外は認められない」―など誤った対応が見られます。しかし「生活福祉資金制度のQ&A」には、中小業者の資金調達にも活用できることが明確に示されています。「Q&A」も示しながら、説得的に交渉する必要があります。

5、おわりに
 全国から寄せられた「困難突破事例」は民商ならではのものばかりです。この組織がさらに大きくなれば、それだけ多くの中小業者が救われるということであり、民商の存在意義にかかわる運動です。融資相談に大いに応え、融資を実現した会員・業者に、紹介や拡大運動で人助けの側に回ってもらう働きかけも強めましょう。

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