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トップページ > 金融のページ > 融資制度 > 全国商工新聞 第2804号 10月29日付

金融 融資制度
 
責任共有制度でどう変わる銀行
4人の行員が座談会 「格付」厳しく足切りも

 責任共有制度が10月から始まりました。すでに制度融資の金利が上がり、貸し渋りへの懸念も強まっています。制度が導入されて、金融機関はどうなっているのか、今後、融資を受けるには何が必要か、大手銀行、地方銀行、信用金庫の職員4人に話し合ってもらいました。(関連3面)

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責任共有制度導入で差別化を進める大手銀行(東京・JR新宿駅)

評価点数低いと本部決済に
信用リスクに連動、高利も

 H信用金庫 責任共有制度(注1)が導入されてCRD(注2)評価の点数をクリアしている企業については今まで通り支店長決済ですが、それ以下は全部、本部決済になりました。
  クリアに必要な点数(100点満点)は法人が46点、個人が64点。個人でこれをクリアできるのはほとんど無理です。保証協会の保証付きの制度融資でも、財務内容次第では貸し渋りの可能性は非常に高いです。
  N地方銀行 保証協会離れがすすむと思っています。一般保証は80%が原則なので、金融機関がリスクを負う20%について審査が入らざるを得ません。金融機関は保証協会の保証を使ってまで資金を貸そうとはしなくなるのではと危惧しています。
  T地方銀行 貸し渋りが強まるのは確かです。金融機関の資産内容を良くするという国際的な流れの中で、金融機関は20%のリスクでも、できるだけ排除したいと思っています。労働組合の団体交渉では「貸し渋りはしない」と銀行は言っていますが、資産内容を良くしようと思えば、CRDの点数を緻密に見ようとします。
  うちの銀行では10年前から企業の格付け制度を導入し、現在は企業格付けを15ランクに分類し、信用リスクの程度に応じて格付けが下がるごとに信用リスクが高くなるようにして金利を決めています(別表)。金利というのはリスクをカバーする鍵です。ハイリスクの企業は金利でカバーできなくなります。そうなると、貸し渋りが起きることは論理的にはっきりしたことです。
  制度融資でもこの格付けを参考にするでしょうし、Cやdランクの企業は足切りされることも懸念されます。
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要注意先への貸し増しなし
「駆け込み」は最初から拒否

  U大手銀行 うちの銀行は責任共有制度になっても、従来と同じ審査基準で融資をするという考え方です。これは、格付けの要注意先に対する貸し増しは、まずあり得ないということです。うちの銀行は大きくいって1から10ランクに分類し、7までが正常先、8が要注意先、9が破たん懸念先で、10が破たん先です。8という水準は二期連続赤字、債務超過であるとか、現在の収益返済で長期返済が15年以上先の企業です。審査基準は変わらないというのは「大変ですから、貸して下さい」と駆け込んで来るような顧客は、はじめから融資をしないという意味です。
中小企業向けの融資をすすめていますが、格付けが7、8では金利が高くなります。ほかの銀行から借り入れしている中小企業に借りてもらおうと思えば、金利を下げなければなりません。これまでは支店長に一定の裁量権が与えられていましたが、ここに来て格付け7以下は、支店長権限で金利を下げてはならんという方針が出てきました。

中小業者も帳簿がまず必要
みんなで定性面をアピール

  今後の問題として、零細業者も帳簿を正しく付ける必要があると思います。金融機関は徹底した人員削減がすすむ中でほとんど機械任せです。格付けも入力してからいったん動き出せば、機械が判断してしまいます。ですから、そこに帳簿を提供するのは重要なことです。
   科学的な経営をしていくために個人企業であっても、やはり帳簿というのは経営判断の材料として、これからはなくてはならないツール(道具)です。同時に財務データだけから見ることができない定性面のアピール、つまりこれまでの取引や技術力、将来の展望などを金融機関にもっとアプローチすることが大事です。
  民商の会員が、個人で融資を申し込みに行ったら断られた。同じ地域の会員が銀行の担当者を呼んで「この人はこういう仕事をしていて、地域の中ではなくてはならない人だ」という話をしたら、借りられるようになったというのです。
  ただし、定性面を本当に大事にする職員は少ないのが現状です。また、したくてもできない。「CRDの点数で」と言われたら、それでおしまいという面もあります。
   リレーションシップバンキング(注3)の考え方からも定性面を重視せざるを得ない状況があります。技術力など顧客の定性面の評価はブラックボックスに入っていますから、なかなか公開しませんが、微妙な聞き取りをするように査定書が作成されています。
  それから、ベンチャー企業への貸し出しを増やしています。銀行はお金は余っているわけですから、どこかに貸さなければならないわけです。これまでは投資信託や手数料でもうけていましたが、貸し出しという本業をしなければ金融機関の存続基盤を弱めています。融資先の掘り起こしに力を入れているという銀行の変化も、見ておくべきだと思います。

既存の中小業者にも融資せよ
自治体に地域経済守る責任を

  うちの銀行も大きく方向を変えてきています。貸出残高がどんどん減っている中で、増やそうと思うと格付け7、8でも、場合によっては融資ができるかもしれない。それを考えろと言い出してきています。
   ベンチャー企業はほとんど実態が分からないところからスタートします。開発能力や社長の先見性、従業員の質といった、定性面で評価します。ベンチャー企業に貸し出しているわけですから、既存の中小業者にも融資をしなさいというのが、われわれの論点なのです。
  それから、地域金融機関は地場産業に力を入れるノウハウを持っています。地銀や信金、信組は地域でしか生き残る場がないわけですから、そこをどう活性化するというのは非常に大事なことです。
   そのことについて自治体の役割を重視することが大事だと思います。銀行経営に大きな影響力のある企業にはそれなりの力を割きますが、銀行経営にあまり影響のないところに、そのノウハウを生かすようなことをするのかどうかというのは、なかなか難しい問題です。ですから、自治体が地域の中小業者を守り抜くんだという立場で、金融機関と連携するように働きかけることは重要なポイントだと思います。

(注1)責任共有制度 これまで保証協会が100%保証していた制度融資の保証を、保証協会の保証を80%にして、残りの20%を金融機関に保証させ、リスクを負わせるもの。
(注2)CRD 「有限責任中間法人CRD協会」が運営する、中小企業の信用リスク情報データベースの略。210の金融機関が会員となっており、約220万の中小企業データが蓄積され(05年10月現在)、このデータに基づき信用リスクが分析されています。全国一律の尺度として、すべての保証協会が利用しています。
(注3)リレーションシップバンキング 金融機関が顧客との間で親密な関係を長く維持するため、顧客の情報を蓄積し、貸し出しなどの金融サービスを提供するもの。金融庁は03年3月、基本的な考え方を示し、中小・地域金融機関に積極的にとりくむことを求めています。

 
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