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  トップページ > 経営のページ > 経営 > 全国商工新聞 第3323号8月6日付
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従業員が経営引き継ぐ 料理と温泉 自慢の宿に=北海道・稚内民商

 日本最北端の町、稚内にある「風の宿 宗谷パレス」。風の音を聞きながら、のんびりできる温泉宿として約40年、旅人や漁師たちに愛されてきました。切り盛りするのは葛西真弓さんと福田笑子さんです。4カ月前に経営を前オーナーから引き継いだばかりの2人は、もともとは従業員。初めての経営に奮闘しながら、心のこもったおいしい食事でお客さんを迎えています。

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お客さんをあたたかく迎える葛西さん(左)と福田さん

 ホッケのちゃんちゃん焼き、毛ガニ、マダラのタチ(白子)とイカの煮物、ベビーホタテとフキのあえ物に、刺し身、殻からむいたばかりの生ウニ…。ある日の宗谷パレスの夕食は、北の海の新鮮な素材を生かした家庭料理がずらりと並びました。「ビジネスホテルに連泊してきて、胃が疲れ気味。家庭の味がうれしい」と北海道を巡る60代の夫婦。あちこちで「おいしいね」と歓声が上がります。

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1泊8600円とは思えない豪華な料理

 「うちの食事はデザートまで全部手作り。豪華じゃないけど、ほっとする味でしょ」と話すのは葛西さん。調理師免許を取得し、10年以上宗谷パレスの厨房を仕切ってきました。福田さんがサポートし、買い出しから二人三脚で行います。1泊2食付きで8600円とは思えない内容ですが、市場やスーパーをはしごして、自分たちの目で見て安くていいものを仕入れ、手間暇かけて調理する努力のたまもの。近隣の体育館で試合や練習を行うプロ・学生のスポーツ選手のために、80人分の食事を作ることもあります。
 宿のもう一つの自慢は、湯量豊かな温泉。女優の吉永小百合さんが、映画「北の桜守」(3月公開)の撮影で稚内市に滞在した際には、「温泉がいいから」と連泊したことも。浴場からは見事な利尻富士も望めます。

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宗谷パレスの外観

 「宗谷パレス」は、1979年に厚生労働省が管理する船員保険保養所として誕生。施設廃止の話が持ち上がった10年前、当時支配人を任されていた杉本康治さん(69)が購入して存続させました。30年間漁師として働いていた杉本さんは、漁から戻った人たちがいつでも入れるようにと、夜中もお風呂を開放してきました。
 「70歳になったら引退して、従業員の誰かに任せたい」と杉本さんから聞かされていたものの、「人ごとと思っていた」と振り返る葛西さんと福田さん。しかし昨年11月、杉本さんが入院。不在1カ月間の営業をベテラン社員の2人が回したことを機に承継の話が進みました。
 4カ月前に葛西さんが代表となり、個人事業主として独立。杉本さんの会社「燈」(あかり)が所有する建物を賃貸する形で運営や帳面を引き継ぎ、経営者の立場になったものの、名義替えや税金のことなど、分からないことばかり。
 「困ったことは何でも聞いてほしい」と力強く話すのは稚内民商の中村秀宏会長‖水産加工。新しい挑戦を民商の仲間が全力でサポートします。
 「おいしかったよ」「静かでぐっすり休めた。来年もまた来るね」と言ってもらうのが励み、と声をそろえる2人。「また泊まりたい、と思ってもらえるホテルにしていきたい」との思いも新たに、経営者の道を歩み始めています。
▽宗谷パレス 稚内市富士見4丁目1837の1 TEL0162・28・1211

全国商工新聞(2018年8月6日付)
 
   

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