全商連トップページ
中小施策 税金 国保・年金 金融 経営 業種 地域 平和・民主 教育・文化 県連・民商 検索
 全商連とは活動方針・決議署名宣伝資料調査婦人部青年部共済会商工研究所発行案内入会申込リンク
  トップページ > 経営のページ > 経営 > 全国商工新聞 第3278号9月4日付
相談は民商へ
 
 
経営
 

深刻さ増す介護現場 制度改悪ストップを

 介護保険の改悪が進み、一定の所得のある人のサービス利用料を1割から2割に引き上げ(2015年)に続き、8月から自己負担の上限が引き上げられました。来年8月には、現役並み所得者の利用料の自己負担が3割になります。利用料負担増が、介護の現場にどのような影響をもたらしているか-。三重県鈴鹿市にある介護支援総合センターNPO法人すずか希望の里「たんぽぽ」を訪ね、理事長・中川一春さん、同施設長・横山景一さんに聞きました。

3割負担なら影響深刻

Photo
右から横山景一さん(施設長)、森甲志さん(事務長)、中川一春さん(理事長)、糸柳章司さん(たんぽぽフレンドクラブ代表世話人)

─2015年8月から年間の年金収入が単身で280万円以上の人は2割負担に。高齢者全体の約20%で負担が増えることになりましたが…。
 中川 「希望の里」は、デイサービス、ショートステイ、訪問介護・サービス付高齢者向き住宅、居宅介護支援事業も行う介護総合センターです。施設全体の利用者は約100人。この改定で負担増になる人は約10%前後です。例えば、自宅から車で送迎してもらい、施設で入浴や体操するデイサービスを週3回受ける場合、利用者の支払額は月1万円から約2万円に増えますが、家族にも恵まれている人が多く、この値上げにより利用抑制をされている人は今のところ出ていません。
 しかし、1割負担の現状でも負担が限界でギリギリという方が少なくありません。来年には、2割から3割に引き上げが予定されていますが、そうなったら影響はさらに深刻でしょう。

抑制は確実に悪影響

Photo
100歳の入所者に声をかける介護職員

─1割負担でも利用抑制が起きていると。
 横山 国民年金だと月に5万円ぐらいしか収入のない人も少なくありません。月に8回通うところを、2〜3回休んで節約しようということもしばしば見られます。
 高齢者の場合は、悪くなることはあっても良くなることは難しいのです。介護者の立場から言えばサービスを安易に絞ってほしくはないのです。
 施設に来ていただくと、当然体を動かしますし、風呂にも入る。リハビリもするし、しゃべりもしますが、一人で家にいると、動かないししゃべらない。認知機能は低下します。風呂にも入らないので臭いも出るし、感染症も心配です。
 介護度によって利用できる限度額も異なりますので、一人ひとりの状況を適正につかんで経済的な負担も考慮してベストなケアプランを提案するようにしています。
 介護抑制は、確実に悪い影響が出ます。要介護になる前の予防が特に重要です。

「介護放棄」の家庭も
─ 一人暮らしの人が多いのですか。
 横山 現在の家族状況は複雑です。家族が居ても昼間は一人という人も少なくありません。家族間に確執などがあり、うまくいっていない人もいます。
 週2回通うお年寄りが、3日前に施設から出た時と同じ格好で来る。着替えもしていなければ風呂にも入っていないのです。
 家族が認知症を理解できず、うつになっている場合もあります。
 本来施設に入る必要のある人が、資金に余裕がないということで訪問介護だけで支えられているという状況もあります。ほぼ、毎日通ってくる人の中にも家では食事しておらず、施設での食事で栄養が維持されているという人もいます。
 さまざまな事情から、「介護放棄」が起きており、高齢者の人権と尊厳が守られていないのです。まったく普通の家庭で起きていることです。

事業者の収益は悪化
─介護報酬引き下げなどを受け、NPO運営の経営状況はどうですか?
 中川 報酬引き下げで、収益は3〜5%ダウンしています。収益が下がると人件費を削るという流れになりますが、そうしないために事務方も介護士の資格を取り、流動配置を行うなどさまざまな努力と工夫で50人の職員が力を合わせ、きめ細かなサービスを維持しています。そして希望の里の基本理念である「いつでも、どこでも、誰でも安心して受けられる良い介護サービス」のために努力をしています。
 政府は保険負担を減らすために、「要支援2」「同1」の予防サービスの一部を国から市町村の事業に移すなどの「保険外し」を行いました。つまり、市町村がボランティアやNPO、企業に委託し、総合事業として効率的に行えということですが、これが介護事業者にマイナスに作用してきています。
 ボランティアは利用者から見れば「安くてありがたい」ということかもしれませんが、「悪貨は良貨を駆逐する」ということになりかねないのです。
 私たちは専門性を高め、職員に技術と能力を身に付けてもらうために日々努力しています。総合事業が、人材確保を難しくし介護職員の質の低下を招くことを危惧しています。

負担増なら存続困難に
─最後にひとこと。
 中川 希望の里の自慢は、「たんぽぽフレンドクラブ」というボランティア約50人が、運営に参画してくださっていることです。これらの方々が、囲碁・将棋やカラオケ、おしゃべりサロンなど趣味のサークルやパソコン、編み物、ヨガなど七つの講座などを開設し、生きがいづくりなどを手伝い、利用者に大変喜ばれて好評です。
 さまざまな困難を乗り越えてきたのは、出資者、ボランティア、職員のみなさんはじめ地域のみなさんの支えがあったればこそです。
 現状から見て、これ以上の利用料の負担増は、施設運営の存続に関わります。医療・介護の改悪はなんとしてもストップし、みなさんの期待に応えていきたいと思っています。

Image

45%運営に苦慮 共同通信が調査

Image

 介護保険から切り離され、市区町村事業に移行した軽度の要介護者向けサービスに関する共同通信の調査で、回答した1575自治体の45%が運営に苦慮していることが8月18日、分かりました。
 ボランティアら担い手を確保できていないことが主な理由で、「地域住民が支え合う仕組みづくりの難しさが浮かび上がった」と報じています。
 7段階ある要介護度のうち、軽い「要支援1、2」の人向け訪問介護と通所介護(デイサービス)は保険給付から外れ、2015年度以降は「総合事業」として市区町村が提供するようになりました。政府は「要介護1、2」についても移行を検討していますが、「これには60%超が反対」しています。
全国商工新聞(2017年9月4日付)
 
   

相談は民商へ
ページの先頭