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  トップページ > 経営のページ > 経営 > 全国商工新聞 第3198号1月11日付
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地域に根ざし夢に向かって・棚田の里に農家カフェ=石川・能登民商

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3年ほど前から民商に自主記帳を相談し、昨春、パソコン記帳を本格的に始めたのを機に入会した武藤さんと妻・香織さん。「雪囲いを作ってもらった山口工務店さん(民商副会長)からも”いいところだよ”と聞いていたし、民商は上からでなく、横に寄り添って対応してくれる印象です。他の事業主さんがどんな風にやってるのかもも興味があります」

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入り口の看板と店内に飾られているオブジェ。季節ごとに変わる窓から見える風景は夫妻のお気に入り

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いろりでお客さんと語り合う武藤さん。「移住当初、食べ物はあるのかと地域の人たちに心配され、しょうゆや米をいただいたことも」と語る

 美しい棚田が広がる「限界集落」に移住し、農家カフェをオープン。地域の農産物直売所の立ち上げにも携わり、集落を元気にしている民主商工会(民商)会員がいます。石川県羽咋市神子原地区で2007年3月から「神音カフェ」を始めた能登民商の武藤一樹さんです。地域に根ざして頑張る姿は、昨年夏に放映されたドラマ「ナポレオンの村」(TBS)の「滝壺レストラン」のモデルにもなりました。

 羽咋市の中心部から富山県氷見市に抜ける国道をそれて10分弱。看板を頼りに、車1台がやっと通れる道をどんどん奥に進むと神音カフェに到着。武藤さんと妻の香織さんが笑顔で出迎えてくれました。

憩いの場所に
 築70年以上の農家を改築し、いろりのある広間と、その続きの間のテーブル席との全17席。金沢美術工芸大出身の夫妻二人で手掛けたおしゃれな内装が広がります。営業時間は11時半〜17時半(日曜・火曜定休)。家の周りの畑で自ら育てた野菜などで作る四季折々のカレー(1日20食、要予約)。香織さんが焼くパンと季節のケーキ。金沢の専門店で修業し、コーヒーマイスターの資格を持つ武藤さんが“産地と流通ルートが明瞭な豆”を自家焙煎したコーヒー。人当たりの優しい接客と、どこか懐かしさを覚える日本の農家の本物の暮らしぶりが体感できると評判で、県内外からの客が後を絶ちません。「集落のばあちゃんが畑仕事の途中で長靴のままコーヒーを飲みに来て、観光客と話すことも。“神音さんができて、みんなが寄れる場所ができた”と重宝がられ、ありがたいです」と武藤さん。

集落が若返り
 当初は“限界集落に若い夫婦が移住し、18年ぶりに子どもが生まれた”とマスコミによく取り上げられました。07年2月、神子原地区の菅池町に夫婦と長男・次男で移住。65歳以上が57%と地区一番の高齢化率は、武藤さん夫婦に女の子が生まれたことで一気にダウン。その後、2組の若い世帯が移住し、10年には限界集落から脱却しました。
 「集落には、年6回の道路清掃や秋祭りも含め年5回の祭りなど、いろんな共同作業がある」と話すのは、同じ集落の民商副会長・山口正造さん=大工。武藤さんらが先頭に立ち、秋祭りの獅子舞いを10年ぶりに復活させる姿などを見て「集落が若返り、元気になった。何につけても真剣に取り組む姿勢は見習わないかん」と話します。
 「芸術と音楽とコーヒーが大好き」という武藤さん。大学で進路を考えるうちに“農家カフェ”のコンセプトが明確に。「ヨーロッパのシェフは自分が畑で作った野菜を“きょうはこれがおいしい”と出す人が多い。これ以上ない旬の素材を、自分が責任を持って出せる安心感がある」

地元盛り上げ
 コーヒー修業時代の4年間に、香織さんの出身地の輪島や能登、加賀、富山の空き農家を40軒近く訪ねる中で、羽咋市の「空き農地・空き農家情報バンク制度」を発見。「市役所の窓口で相談に乗ってくれたのが、『ナポレオンの村』の“スーパー公務員”のモデルになった高野誠鮮さんでした」
 当時、地区の農家の収入を増やすために高野さんが仕掛けていた農産物直売所「神子の里」の立ち上げに半ば強引に口説かれて参加。07年7月のオープン時には店長として切り盛りし、軌道に乗るまで2年間奮闘しました。「初めはただ自分の店を出せればと思っていましたが、直売所で地元が盛り上がることで、カフェにも客が来るんじゃないかと地域を徐々に意識するようになりました」
 今では直売所の出荷農家は200人を超え、品数は約1000種類、年間売り上げは平均8000〜9000万円に。「何より、出品者のじいちゃん、ばあちゃんが元気になりました。収入面でも月単位では結構な売り上げとなり、地元にお金が回っていると実感します」

自然とともに
 神音カフェも、経営の軸となるコーヒー豆の焙煎事業が15店舗に卸すまで増え、カフェ事業と併せて順調です。「ゆくゆくは農家民宿をやってみたい」と話す武藤さん。「冬場も水を張った田んぼに満天の星空と月が映り込む世界と、早朝の森の匂いを、感じてほしいですね」

全国商工新聞(2016年1月11日付)
 
   

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