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  トップページ > 経営のページ > 経営 > 全国商工新聞 第3124号6月23日付
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金融庁が保険販売規制強化 再編迫られる代理店

 金融庁が生命・損害保険代理店への規制強化に乗り出しました。保険代理店で働く「委託型募集人」を2015年3月末までに廃止するというものです。消費者・保険契約者と保険会社のパイプ役を担う保険代理店。委託型募集人の廃止によって経営はどうなるのか―。

金融庁が打ち出した保険販売の新規制のイメージ

 保険代理店には雇用関係を結ぶ正社員やパート、派遣社員の他に、代理店から委託を受けて保険商品を販売している委託型募集人がいます。保険代理店との雇用関係はなく、報酬は成果に応じた歩合制。代理店には社会保険加入の義務はありません。
 金融庁は今回、委託型募集人が代理店の再委託にあたり、そのことを禁止している保険業法(275条)に違反していると断じたものです。生損保会社に対し、保険業法(128条)に基づいて「委託型募集人の契約形態等の実態把握および適正化を求める報告徴求命令」を発令しました(1月16日)。これを受けて保険会社は代理店への実態調査を始めました。代理店が委託型募集人を引き続き雇う場合は雇用、派遣、出向という形態にあらためることが必要です。
 保険代理店を経営していた神奈川・横浜西部民主商工会(民商)会員は3人のスタッフがいました。いずれも委託型募集人です。金融庁の動きを知ったり「今の代理店手数料では、3人を正社員として雇用することはとてもできない」と悩みました。今後のことをスタッフと一緒に考え、今の代理店を1人が引き継ぎ、本人は別の代理店の社員として働くことにしました。
 「声をかけてくれるところがあったから良かったものの今後、廃業せざるを得ない人たちが増えるのではないか」と危惧しています。

米国の圧力を背景に収益と効率を優先し

 そもそも委託型募集人というのはなぜ生まれたのか。損保会社で働く労働者を組織する全日本損害保険労働組合執行委員長は「委託型募集人は収益確保を第一に考える保険会社が、効率化を図るためにつくられた」と指摘します。
 経過をたどると―。98年、米国の圧力で損保の保険料が自由化され、これを機に保険会社の競争が激化。効率化を図るため保険会社は統廃合を進め、人件費や物件費などを徹底的に削り、こうした動きの中で一律に払われていた代理店手数料が規模に応じて払われるようになりました。「1人や家族で経営していた代理店は大幅に手数料が減って経営が成り立たなくなり、大きな代理店に吸収されるなど統廃合が進んだ。その結果、つくられたのが委託型募集人。社会保険への加入義務もなく、歩合によって報酬を払うため代理店はコストを抑えることができた。保険会社が収益第一に代理店を効率化したことが最大の問題」と浦上さんは強調します。
 当時も再委託は禁止されていましたが、経団連が代理店との雇用関係がなくても保険が販売できるように金融庁に要望。これを受け01年、事務ガイドラインが改正され、保険の販売は「雇用関係がある者に限る」という規定が外され、委託型募集人が事実上認められるようになりました。ここ数年、商店街やスーパーの中にある来店型の生命保険ショップ(乗り合い代理店)が委託型募集人を取り入れ、事業を急速に拡大。過剰な保険契約や保険商品の説明不足などの問題が浮上し、委託型募集人を廃止する口実にもなっています。

代理店の縮小招けば損保業界全体に影響

 埼玉・川口民商の会員で損保代理店有限会社の経営者も見直しを迫られています。従業員6人のうち2人が委託型募集人です。法人化した1人は「出向」という形をとり、もう一人の結論は出ていません。「損保業界全体の資産総額は大手生命保険会社1社と同じ規模。運用益も少ないので、損保と生保業界の保険会社と代理店の関係はまったく違う」ことを前提にしつつ、「生保業界では生命保険ショップの委託型募集人が個別に生命保険会社とつながり、その会社の保険商品を契約すれば特別ボーナスが支払われているとの話を聞く。お客さんのためではなく、自分たちのために商品を販売しているという実態はメスを入れる必要がある」と指摘します。
 同時に「委託型募集人という形態をなくしただけでは問題は解決しない。お客さんの目線に立った保険を勧めるように、代理店や募集人の資質を向上させることが不可欠」と強調します。
 保険代理店を営む川口民商会長の岩瀬晃司さんは「保険会社からの自立が必要」と強調。「保険会社のいわれるままに代理店手数料が決められているのが問題。保険会社と対等な関係を築き、損保業界全体が発展するような環境づくりが必要」と話します。
 元日本火災海上保険会長の品川正治さん(故人)は生前、「日本の保険代理店制度は誇るべき制度。代理店が縮小することは、それだけ経済社会のセーフティーネットが弱まることを業界は認識しなければならない」と警鐘を鳴らしていました。委託型募集人制度の廃止で、業界や地域経済にどのような影響が出るのか。考えることが必要です。

全国商工新聞(2014年6月23日付)
 
   

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