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  トップページ > 経営のページ > 経営 > 全国商工新聞 第2882号 6月8日付
 
経営
 

営業しながら生活保護を受けるにはQ&A

全国生活と健康を守る会連合会事務局長 辻清二さんに聞く

 東京・日比谷公園の「年越し派遣村」などに生活保護(生保)受給を認めさせた運動で、セーフティーネットとしての生保に注目が集まっています。「自営業者も営業を続けながら受給できる」という全国生活と健康を守る会連合会事務局長の辻清二さんに、申請のポイントなどを聞きました。中小業者が生きぬくため、活用を図る運動が求められています。

 Q.事業を続けながら受給できますか
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「生活保護を受けたい」と相談が殺到する生活と健康を守る会の街頭相談会
 A.受けられます。生保法第2条は「この法律による保護を、無差別平等に受けることができる」と定めています。生保には、生業を営むのに必要な資金や器具、資材の購入費を支給する生業扶助があります。
 「働く能力」があることを理由とした申請拒否・却下が全国でありましたが、最近の各地の「派遣村」などの取り組みで、「働く能力がある」失業者も生保を受けることができました。

 Q.車や工場、商店などを持っていても大丈夫ですか
 A.収入を得るために必要な車や工場、商店などは保有が認められています。「車を処分しないと保護しない」と指導された場合は、「生活の維持に効果的」「自立助長に役立つ」など、具体的に実態を訴え認めさせましょう。

 Q.受給内容にはどんなものがありますか
 A.生保には生活、教育、住宅、医療、介護、出産、生業、葬祭の8扶助があります。生業扶助で高校教育費も支給されます。各扶助の基準は厚生労働大臣が決め、「最低限度の生活の需要を満たすに十分なもの」(第8条)でなければなりません。自営業者の場合、生保基準から収入(売り上げ‐必要経費‐勤労控除)を引いた金額が支給されます。

 Q.申請時に大事なことは
 A.役所では「相談」という口実で申請拒否をする「水際作戦」が行われています。「働けるから」「兄弟に養ってもらえ」「車は処分しないとダメ」などと言い、追い返すことがあります。しっかり抗議し、申請を受けさせることが大切です。厚生労働省も「申請拒否は違法」と回答していますから、まず申請書を受理させることです。

 Q.自営業者で生保を受けている実例は
 A.大分市のAさん(72)は50年近くクリーニング業を営み、06年12月に売り上げが大幅に減ったため、生保を申請しました。住まいは県営住宅です。収入は必要経費を除いて月3万円弱で生保費は10万円程度です。Aさんは、当初自宅から店までの自動車利用が認められず、バス通勤をしました。しかし、それによって客が減少。肉体的・精神的に苦痛であることを訴え、生活と健康を守る会と運動。自動車の使用が認められました。
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営業車の保有も可
 京都・西京民商会員(64)=塗装=

 京都・西京民主商工会(民商)のBさん(64)=塗装=は5月8日、京都市から生保の保護決定を受け、「助かった」と喜んでいます。
 Bさんは仕事が全然なくなり、2カ月間家賃を滞納していました。近所に住む民商役員に「わし、しんどいねん」と告白。市の保護課に相談に行くことになりました。
 窓口では、仕事がないこと、1人暮らしであることを説明。営業車の保有が認められ、倉庫を兼ねた借家も「扶助分以上は出せないが」とそのまま住み続けても良いことになりました。


 元ケースワーカー・猿橋均さんのアドバイス
 生保は「健康で文化的な最低限度の生活とすべての国民の権利」としつつも、実際は資産を持たない賃金労働者への最低生活保障と自立支援が中心になっています。働いて資産を形成できる人は保護の対象外との考えです。
 例えば自営業者は、宣伝・広告、顧客への届け物など営業の維持・拡大のための支出をしますが、それらは生保申請の際に「資産を形成する行為」とみなされます。
 現状では、福祉事務所は業者が相談に来ても、経費で苦しむより廃業して会社勤めするよう指導する方針をとっています。
 しかし、営業を続けながら生保を受給できる場合があります。例えば「資産形成の行為」がほとんどない状態で、(1)毎月の収支が安定している業種(たばこ店など)(2)個人請負など実質的に労働者に近く収支が把握しやすい業種(大工や左官など)(3)自営業以外に賃労働が困難な場合(本人・家族が障害者など)(4)高齢で一般的に働ける年齢ではない場合―などです。
 生保受給は、収入が生活保護基準以下であることが条件。申請・受給時は毎月の収支状況を報告できる必要があります。
 申請の際は、生活状況とこの仕事で働きたいとの思いをケースワーカーにきちんと伝え、理解させる取り組みが必要です。
   
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