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  トップページ > 平和・民主主義のページ > 民主主義 > 全国商工新聞 第3139号10月13日付
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民主主義
 

基地なき経済発展を=沖縄県知事選

 新基地建設反対、オスプレイ配備撤回―。「建白書」に書き込まれた沖縄県民の総意を貫くのかどうか、また、基地に依存しない経済にいかに道を開くかを争点に沖縄県知事選がたたかわれます(30日告示、11月16日投票)。「オール沖縄」の期待と未来を担った翁長雄志県知事候補(前那覇市長)に対し、保革を越え、そして県内の財界人から「島ぐるみ」の支援が広がっています。

基地返還後に県民の憩いの場として発展している北谷町美浜地区
基地返還後に県民の憩いの場として発展している北谷町美浜地区

保守・経済界も思いはひとつ

県民の手で政治変革
 那覇市議会新風会会長 金城徹さん

 これまで保守は基地を容認し経済を発展させると訴え、革新は経済よりも基地反対を訴えてきました。いわゆる55年体制の下で、それが対立軸となってきました。しかし「建白書」が踏みにじられる中で、翁長さんが、知事承認というこれまでとは異質なやり方で基地を造るのは許されない、これ以上の基地建設を県民は望んでいないと打ち出したことで、保革を超えた流れができました。知事選で初めて「オール沖縄」がつくりあげられたのです。
 保守であっても「二度と戦争はだめだ」というのが沖縄の声です。ところが安倍さんは国会はもちろん、十分な国民的な議論もなしに、憲法の勝手な解釈で集団的自衛権を容認しました。今の政権に対する県民の不安と危機感が、「オール沖縄」の背景にあるのも間違いないでしょう。
 沖縄では米兵の犯罪、爆音、環境汚染などさまざまな問題が起きてきました。基地あるがゆえの問題です。
 ドイツなどの米軍基地では、基本的にドイツの国内法が適用されますが、日本では国内法さえ適用されない。日米地位協定によって「公務中」であれば、米兵が犯罪を犯しても、日本には裁判権さえありません。
 こうした問題を、私たちの子どもや孫の世代にまで継続していいのか。「安保」の下でやむを得ない、我慢し続けろというのか。「負担軽減」といいながら、日本政府はまったく見直そうとしてきませんでした。沖縄はこれでいいのかという、強い思いがありますね。
 世論調査でも、80%を超える県民が新基地建設はだめだと言っています。沖縄の政治を今、県民の手で変えなければなりません。
 選挙はムードだけでは勝てません。自民党は「基地がなくなれば大企業は逃げる、税金は高くなる、仕事はなくなる」と不安をあおるでしょう。しかし、多くの県民は基地が経済発展の阻害になっていることを見抜きつつあります。
 腰を浮かさず、気を引き締め、県民の願いに応えて圧勝しなければならない選挙です。

抑止力こそ「ゆくし(うそ)」
 金秀グループ会長 呉屋守將さん

 13年1月に沖縄のすべての市町村長、議長、県議会各会派などが署名した「建白書」を安倍首相に提出しましたが、事態は一歩も変わっていません。それどころか、強引に基地をたらい回そうとする。それに県民は怒りを覚えたわけです。その先頭に立った翁長さんを支援したいというのが、私の思いです。
 沖縄には「ゆくし」という言葉があります。これはウソという意味です。米軍基地は「抑止力」と、よく言われますが、私たちにしてみればそれこそ欺瞞に満ちた「ゆくし」です。米海兵隊が沖縄に来たのは朝鮮戦争後ですが、それは軍事的重要性ではなく、単に本土での受け入れ先が無かったという、政治的理由に過ぎません。
 沖縄は軍事的に「太平洋のキーストーン(要石)」と位置付けられてきました。もうそういう時代ではありません。「平和経済発展のキーストーン」に変えていかなければならない時です。平和経済の発展にとって基地は阻害要因以外の何物でもありません。軍用地料や米軍基地がもたらす経済効果はもうわずかです。本土の政府からの財政に依存せず、自分の足で立つ、「真の自立経済」を求めて真剣な努力を続ける覚悟もできています。
 世界に出て行った沖縄県人がつくった「WUB」という組織があります。ことし8月ペルーで第18回世界大会を開き、「世界平和経済宣言」を出しました。平和こそが大事、平和の下での経済を求めるというメッセージです。民商・全商連の「平和でこそ商売繁盛」とつながっていますね。
 平和でなければ商売は続けられません。今の自民党は戦争の可能性を含めた政策をやろうとしていますが、これにも「大事なのは外交による平和努力だ」と沖縄は発信し続けなければなりません。
 今が転換点です。知事選に勝利することは、本土の圧力に屈服せずに勝ち取った勝利ということになります。それは地方自治権の拡大にもつながり、日本の民主主義の在り方にも一石を投じることになるでしょう。

今こそモノ言うとき
 かりゆしグループCEO 平良朝敬さん

 私たち財界人はこれまで自民党を支持してきましたが、県民に約束した公約を180度転換するなら、これに対して「ノー」を突き付ける必要がある。
 基地を持ってきたのは県民ではありません。保革を超えて翁長さんを支援し日本政府にものを言っていこうというのが、「オール沖縄」です。翁長さんの「イデオロギーよりもアイデンティティー」です。今度の選挙は、本土復帰に匹敵する沖縄の進路を決めるものとなると考えています。
 沖縄は基地経済といわれてきましたが、米軍基地は今では、経済発展の阻害要因です。返還された那覇新都心や北谷町は大きく発展しています。経済効果は返還前の数百倍ですよ。それを県民は現実として見てきています。基地がなくても沖縄経済は大丈夫、ない方がいいと感じてきているわけです。
 沖縄を中心に3000キロの同心円を描けば日本の人口は1・2億人ですが、それ以外の人口は約20億人です。人の交流と物流で沖縄経済発展の可能性は限りない。新基地建設は、沖縄の可能性をつぶすことに他なりません。基地は一つもプラスになりません。安全保障の大切さも理解した上で、私は沖縄の米軍基地はすべていらないと考えています。
 私を産んでいただいた沖縄という地に感謝しなくてはいけません。それを次の世代につないでいく責任があります。商売も大事です。でももっと大事なことがある。新基地が造られようとしている大事な時にモノを言わないでいつモノを言うのか。
 平和なくして観光産業はありません。「観光は平和産業」と言っている私が、基地を造らせ、オスプレイが飛んでいることを黙っていることはできません。

復帰闘争を再現する
 元沖縄県議会議長 仲里利信さん

 私は根っからの沖縄の自民党です。県議は8年前に辞めましたが、今でもそれに誇りを持っています。今年1月の名護市長選挙では、自分の車にスピーカーを付けて連日、那覇から名護に通って辻立ち演説をし、稲嶺進市長を応援しました。辺野古に新基地を造らせてはならない、という思いからです。
 12年12月の衆議院選挙で、私は自民党の県選出国会議員の後援会長を引き受けました。普天間基地の県外・国外移設を訴えて回り、翌年の1月には「オール沖縄」の総意として県内41の市町村長らが「建白書」を政府に提出したわけです。ところが、13年の11月から12月にかけて、まず国会議員が、続いて自民党沖縄県連、最後に仲井真知事まで「建白書」に背を向けました。
 世論調査では80%を超す県民が新基地に反対を表明しました。「建白書は生きている」。私は自分の車で宣伝して回りました。県選出の国会議員、自民党県連が裏切り者であって、われわれこそ本当の沖縄の自民党なんです。
 私の原点はなんといっても沖縄戦です。当時8歳でした。集団自決に関する教科書検定問題が起きたときに、私がその体験者として議会で発言し、それをきっかけに全会一致で検定の撤回を求める意見書を採択。12万人の県民大会につながりました。知事候補の翁長さんはその共同代表も務めた人物です。
 今回の知事選は、戦後初めて保革の枠を超えて「オール沖縄」で翁長さんを応援します。復帰前の島ぐるみのたたかいは、保守も革新もないたたかいでした。それを再現しようというものです。
 新しい沖縄の未来を切り開くため、島ぐるみの運動の先頭に立ってきた翁長さんをどうしても知事にしなければなりません。

基地による損失年1兆円 撤去こそ自立的発展の道
 跡地利用の実践が証明 沖縄国際大学大学院教授・前泊博盛さんに聞く

基地依存は5%
 沖縄に基地があるために約1兆円の損失が生じている―。これは仲井真県政が10年に試算した数字です。
 沖縄県経済全体の県民総所得は約4兆円。米軍基地があるために総所得の4分の1、約25%に当たる所得を毎年失っている計算になります。
 広大な基地を抱える沖縄県ですが、米軍基地から派生する基地関連収入は約2086億円(10年度)です。うち約504億円は、9000人の基地従業員の給与。軍用地料は約793億円で、いずれも日本政府が負担(税金)しています。
 新たな富の創出といえるのは「軍人・軍属等の消費支出」で、金額にして649億円。基地経済の大半は税金です。つまり日本国民が税金を払って、それを自分で食べる「タコ足経済」です。
 「基地依存経済」と言われる沖縄ですが、県民総所得約4兆円に対して2086億円ですから、基地経済への依存度は5・3%に過ぎません。
 軍用地料に頼る軍用地主は4・4万人ほどいますが、それをもって沖縄全体が基地に依存しているというのは無理があるでしょう。
 米軍普天間飛行場にしてもキャンプ・キンザー(牧港補給基地)にしても、基地の内と外の経済効果を比較すると、3倍から4倍違っています(表1、図)。フェンスの内側でしか稼げなかった米軍統治時代の沖縄の状況とはまったく違います。

表1、図

 戦前、沖縄の産業の75%は農業でした。その農民から米軍は農地を強奪し、地代も払わない。島の多くの面積が米軍基地にされた伊江島の農民は飢えに苦しみ、“乞食行脚”で救済を求めました。アメリカはそこまで沖縄住民を追い込んで収奪したわけです。これは国際法違反です。
 収入と生活の手段である農地や住居を奪われた住民は、奪われた土地にできた基地に依存させられる「基地依存経済」を余儀なくされました。これが沖縄の基地経済のスタートです。そのころの基地への依存率は50%を超えていました。
 しかし本土復帰後の現在は、民間が力をつけ、基地の内と外の生産性、経済効果に大きな格差が生まれています。そして保守政権である仲井真県政すら「米軍基地があるために毎年1兆円の逸失利益が出ている」という現実を認めざるを得ない。沖縄にとって基地は地域経済の発展を阻害し、基地があるために成長のチャンスを逃しているとさえ言えます。

所得が約19倍増
 そのことは、過去の米軍基地の返還跡地利用を見ればより一層、鮮明です。かつての米軍牧港住宅地区(現・那覇新都心)をみると返還後、従業員数は103倍、市町村民所得は18・9倍に増大。北谷町の北前地区、那覇・小禄金城地区でも返還効果は一目瞭然です(表2)。普天間飛行場が返還された場合、県の推計では、従業員数で160倍を超えます。

表2

 跡地利用で失敗している事例は一つもありません。米軍基地が全面返還されれば、沖縄経済の発展の可能性は大きく広がります。
 沖縄経済の発展を阻害する「軍事基地」を撤去し、「経済基地」に転換する。名護市辺野古に政府が作ろうと必死になっている米軍新基地には、総額1兆円ともいわれる国民の税金が投入される見込みです。年金も払えない財政破綻寸前の日本政府が、やるべきことではありません。米国も自ら建設費を負担するというなら「要らない」という程度の新基地です。辺野古新基地建設費の日本負担の是非、日米安保一本槍の軍事依存安保の是非など、国民全体で多角的な論証と検証が必要です。

新たな歴史開く県民の挑戦・知事選の意義
 中山忠克弁護士に聞く

 11月の沖縄県知事選挙は、辺野古新基地を認めるかどうかが最大の争点です。翁長雄志・前那覇市長と、現職の仲井真弘多知事との事実上の一騎打ちとなりそうですが、その結果は沖縄はもちろん、今後の日本の政治や社会に重大な影響を与えることは必至でしょう。まさに歴史的な決戦であると私は考えています。
 翁長氏は、保守政治家の中心人物の一人であると同時に、辺野古新基地反対などを掲げた「建白書」を含め、「オール沖縄」の形成に主導的な役割を果たしてきました。昨年12月、仲井真知事が建白書を踏みにじり、新基地建設を容認するに至って、基地反対の県民の願いを貫くには、オール沖縄でなければならないという県民意識が翁長氏の擁立につながっています。
 これまで沖縄の県知事選はすべて保革の対立構図の中でたたかわれてきました。しかし米軍基地の重圧化で苦難を強いられてきた歴史からの解放を求める県民の要求が、その構図を乗り越えさせたといえるでしょう。沖縄の歴史上画期的なことです。

教科書検定が流れを変えた
 何がそれを可能にしたのか。その源流は07年に起きた教科書検定問題にある、と私は考えています。集団自決を日本軍が命じながら、その蛮行を歴史と教科書から消し去ろうとしたものです。沖縄戦を体験した県民は、政治的な立場を超え、もう本土政府と対峙しなければ、沖縄の立場は主張できないという怒りとなって広がりました。
 加えて辺野古の基地は造らせないという公約を、政府自民党が破棄させたことに対する怒り、そして憲法解釈による集団的自衛権を容認した安倍政権のひどさが、沖縄の保守層の良心を呼び覚ましたといえるのでしょう。裏返せば、「戦争する国づくり」に対する現実的な危機感といえるのではないか。
 辺野古に建設される基地の耐用年数は200年といわれ、1800メートルの滑走路2本をV字型に配置し、ヘリパッドや弾薬庫も併設され、現在の24機を大きく上回るオスプレイの運用も予定されています。さらに強襲揚陸艦が接岸できる270メートル以上の護岸が設置されます。まさに最新鋭の基地です。その費用は3500億円以上といわれ、すべて日本政府の負担です。

矛盾を変革し始発点にする
 振り返ってみれば沖縄の歴史は、米軍基地とのたたかいの歴史でもありました。人間の尊厳を確立するため、たたかい続けた不屈の歴史でもあります。それをあろうことか、県民を代表する知事が新基地建設のための埋め立てを承認し、積極的に推進するとは、歴史的暴挙以外の何物でもありません。
 その意味で今度の知事選は、一つは民主主義を根本から破壊する新基地建設を阻止し、県民の意思を県政に反映させるという民主主義の実現を求める県民の気概を示す機会であり、二つめに県知事の積極的関与による米軍基地の建設推進という歴史的暴挙に対し、県民自らの手でそれを是正するたたかいでもあります。
 さらに基地の永続化を許さず、基地社会沖縄からの脱却をめざすたたかいでもあり、権力に屈しない県民の良心と良識を内外に示す機会です。
 これまで中央政府にものが言えなかった経済人も「基地は沖縄の経済発展の阻害要因」と堂々と主張し、それが共通認識となって広がり始めています。
 翁長氏は9月24日の記者会見で「埋め立て承認の取り消し、撤回も視野に入れ、いろいろな手法で辺野古に基地を造らせない」と述べましたが、これは法的に見ても十分可能です。
 矛盾の集中点といわれる沖縄ですが、それは新しい変革の起点であり、始発点でもあります。知事選の圧倒的な勝利は沖縄の新しい歴史を切り開く、県民の挑戦でもあるのです。

全国商工新聞(2014年10月13日付)
 
   

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