全商連トップページ
中小施策 税金 国保・年金 金融 経営 業種 地域 平和・民主 教育・文化 県連・民商 検索
 全商連とは活動方針・決議署名宣伝資料調査婦人部青年部共済会商工研究所発行案内入会申込リンク
  トップページ > 業種のページ > IT・サービス > 全国商工新聞 第2909号 1月11日付
 
中小業者が役割発揮・環境をテーマに仕事おこし
 

中小業者が役割発揮

環境をテーマに仕事おこし

 地球温暖化問題への対応が、世界的な課題となっています。資源やエネルギーを浪費する大量生産・大量消費から「持続可能な低炭素社会」をいかに実現していくのか―。環境をテーマに、多彩な仕事おこしにつなげている中小業者の取り組みを紹介します。




太陽光発電でオール電化の家
 全てのエネルギー賄う

山口・長門民商 田原利之さん=建設設計
PHOTO
建設中の「陽の住まい」と田原さん

 「エネルギー問題や環境問題、食糧問題に関心があり、自分の仕事で貢献できる方法を考えていた」と話す山口・長門民主商工会の田原利之さん=建築設計。現在、太陽光発電によるオール電化の家「陽の住まい」を美祢市内に建設中です。
 家で使う電気や給湯だけではなく、生活全般をすべてクリーンエネルギーで賄い、移動には電気自動車を、充電も太陽光発電を利用する「陽の住まい」。そこに住みながら無農薬農業も営み、自給自足の生活を進めることで農山村の活性化に貢献するという構想です。
 建設中の家は、賃貸物件として家族またはグループに電気自動車とセットで貸し出すことにしており、すでに入居を決めた人もいます。問い合わせも増えています。

 間伐材を建材に
 自然環境を守る観点から、間伐材を建材に利用し、断熱材など石油製品は使っていません。「日本は輸入材に頼る一方で、森林の手入れをおろそかにし、切った間伐樹も廃棄しているのが実態。きちんと間伐すれば山は守られ、建材に使えば林業を支え、経済にも貢献します。間伐材は安く、今回の工費も約1500万円で収まっているのも『売り』です」と強調します。
 課題は、住宅の注文を増やすこと。「耐震性はあると自負しています。注文があれば全国どこでも引き受けます」と田原さん。エネルギーが自給でき、地元建材で建てられる利点を生かし、インフラが未整備の国・地域で導入できないかと、国際協力機構(JICA)などにも売り込んでいると言います。
 「今、住宅は、使用する建材や暮らし方など、すべてで環境への配慮が問われています。私の提案が、広く受け入れられればうれしい」と田原さんは笑顔を見せています。


LED組み込んだ省エネ看板
 消費電力少なく長寿命

福岡・白河民商 二宮三樹男さん=看板制作
PHOTO
「食と職の市」に出展した製品と二宮さん

 景気低迷の中で仕事も少なくなってきた看板業界。
 「これからは環境に配慮した看板になる」と福島・白河民主商工会会長の二宮三樹男さん=看板制作=は、消費電力の少ないLED(発光ダイオード)を組み込んだ看板作りに挑戦しています。
 LEDは一般のネオンと比べ「消費電力が少なく、高輝度、長寿命、直流回路でチラつきが少なく、人体に有害な紫外線が出ない」(二宮さん)などの利点があり、環境にやさしいのが特徴です。

 環境対策が好評
 二宮さんは09年9月からいろいろな見本商品を作り、地域の会社などを訪問。LEDの利点を語り、営業活動を行ってきました。
 ある工務店では応対した社長と「自分も環境にやさしい家づくりを進めている」と話が盛り上がり、「ぜひ事務所の看板をLEDに替えてほしい」と仕事を受注。希望を取り入れた看板を制作し大いに喜ばれました。
 昨年の10月末に行われた「食と職の市」(白河市商工会議所などが主催)にも出展し、LEDを使った省エネ看板をPR。大手ホテルの支配人から「LEDを使ったオリジナルサインは大いに興味がある」と声をかけられました。また、他の参加者からは「これからの看板は環境にもやさしいLEDの時代」と激励されるなど、仕事と人脈を広げています。
 「これからは環境に負荷をかけない看板が業界の新しい流れ」と強調する二宮さん。「LEDの使用は広がりを見せていますが、LEDの世界をより研究し、さまざまなデザインやお店のイメージアップにつながる新たな『形』を創っていきたい」と夢を語っています。


カラマツストーブを開発
 地元の木材を有効利用

長野・諏訪地方民商 清水馨さん=園芸
PHOTO
カラマツストーブを普及している清水さん

 長野・諏訪地方民主商工会(民商)の清水馨さん=園芸=はカラマツストーブを普及しています。
 ヨーロッパをモデルにした暖炉型のまきストーブに対して、カラマツストーブは日本のかまどや炭焼き釜をアレンジしたもの。幅30センチ、高さ45センチ、奥行き80センチの胴長の形で、高温に耐える厚さ6ミリの鍛鉄製です。
 環境問題を考える仲間とともに06年10月、「カラマツストーブ普及有限責任事業組合」を設立し、3年間で200台を販売しました。 樹脂が多いカラマツは、燃やすと高温になって火持ちせず、煙突にヤニが付くなどの理由からまきには不向きでした。しかし、清水さんのカラマツストーブはこれを克服。たきつけが早く、3000度の熱に耐えられるため、高温燃焼が必要なカラマツ、アカマツを完全に燃やすことを可能にしました。
 さらに、その熱と排気を分離することでストーブ本体からの放熱は85%と熱効率は抜群です。ストーブからの輻射熱は遠赤外線のため、短時間で数メートル先まで熱が届き、灰取り、煙突掃除はシーズン1回程度でOKです。
 「眠っていたカラマツという宝を掘り起こし、産業に発展させることは地域の活性化につながる。製造する鉄工所や取付工事を担う工務店、まきの生産・販売業者など地元業者の仕事と雇用を生み出している」と清水さんは力を込めます。

 循環型の地域を
 長い間、諏訪地方のリゾート開発やダム建設反対の運動に携わってきた清水さんは、別荘やホテル、企業保養所、スキー場、ゴルフ場建設などすさまじい勢いで進む巨大開発に心を痛めていました。
 「これ以上の開発はいらない。残された自然を守ろう」と89年に「環境会議・諏訪」を結成。05年以降はリゾート開発を中止させ、ダム建設も白紙撤回させました。
 残された森林を守るために森林や農業の再生、地域エネルギーの循環、産業の創設、自然と共有できる観光開発などを柱にした「循環型地域づくりの構想」を打ち出し、初めに手がけたのがカラマツストーブでした。「森林を整備するため、間伐されている人工林の多くがカラマツで、用途はあるものの、搬出コストが高く、ほとんどが放置されている。カラマツを薪炭材として利用すれば、間伐材の多くが有効利用される」と胸を張ります。
 現在は家庭や小さな作業所用として普及していますが、今後は大きな公共施設や学校の集中暖房のボイラーに代わる熱源や、火力発電への応用、さらにストーブによる発電も開発中です。


   
  ページの先頭