まちづくり3法 都市計画法と中心市街地活性化法「改正」の問題点
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中心市街地へ集中の懸念
大店立地法13条にふれず |
「まちづくり3法」(大規模小売店舗立地法、都市計画法、中心市街地活性化法)のうち、都市計画法と中心市街地活性化法の2法が先の通常国会で「改正」されました。郊外型の大型店出店に歯止めをかける上で評価できる点もありますが、「商業調整を禁止」した大店立地法13条にはまったく手がつけられず、「改正」には重大な問題点が含まれています。
都市計画法「改正」では、延べ床面積1万平方メートルを超える大型店舗が出店できる地域を「近隣商業」「商業」「準工業」の3つの地域に限定し、「第2種住居」「準住居」「工業」の3つの地域には原則出店できないようにしました。そのほか、「市街化」を抑えようとした「調整区域」や用途が決まっていない「白地地域」への出店も原則認めません。
これは大型店出店に対して反対してきた民商・全商連などの運動が大きく反映したもので、郊外型の大型店出店への規制は強化されます。
しかし、大型店の規模を1万平方メートル超としたことや、出店ができない地域にこれまで多くの大型店が出店してきた「準工業」地域が入っていないことは極めて不十分です。
ふるいにかけ切り捨てる
また、大型店立地を原則認めない地域でも、新たに地区計画として「開発整備促進区」を設け、開発事業者を都市計画の提案者に加えたことで、出店規制の抜け道になることが懸念されます。
一方、「中心市街地活性化法」の「改正」では、「中心市街地活性化本部」(本部長=内閣総理大臣)を設置し、中心市街地活性化について地方自治体が作成した基本計画を認定するしくみを導入しました。これは支援する基本計画を国がふるいにかけて選別し、それ以外は切り捨てるということです。
認定を受ければ出店手続き不要
さらに問題なのは、都道府県が中心市街地に「特例区域」を設けることができるようにしたことです。国の認定を受けた「第1種特例区域」では出店手続きがすべて不要に、それ以外の「第2種特例区域」は届け出と説明会を開催すれば大型店が出店できるようにしました。住民の意見集約や、都道府県の勧告・意見表明の機会を奪い、大店立地法を骨抜きにするものです。
この2法の「改正」で郊外型の大型店出店は難しくなる一方で、中心市街地に大型店が集中することが懸念されます。すでに中心市街地への進出を狙って大型店などが動きを強めています。
住民と協力してまちづくりを
また、都市計画法「改正」が完全実施される08年度までに駆け込みで出店しようする動きが強まっています。
大店立地法13条の廃止とともに、出店を許さない世論と運動だけではなく、どういうまちづくりをするのか、住民と中小業者が協力して住民本位のまちづくり計画をつくっていくことが今後、求められます。 |
各地で運動
「出店拒否」の自治体も |
この間、大型店出店を許さない世論と運動は全国各地で大きく広がりました。民主商工会(民商)が商店街や業者団体、自治体などに働き掛けた運動は大きく発展し、まちづくり3法「改正」の動きとも重なって、大型店の出店を拒否する自治体が相次ぎました。
長野市ではイオン系の超大型ショッピングセンター4店舗が郊外に進出しようとしていましたが、鷲澤正一市長が「出店は困難」との見解を示し、出店を阻止しました(06年2月7日)。長野県商店街連合会なども反対し、運動は立場の違いを超えて大きく広がりました。
長崎県佐世保市でもイオン九州(株)(ジャスコ)が郊外に出店しようとしましたが、光武顕市長は出店予定地の農業用指定を解除しないことを発表し、出店を拒否しました(2月23日)。同市にはまちづくりに関するガイドラインや条例はありませんでしたが、世論と運動によって市長を決断させました。
熊本市では都市計画法34条に基づいて、幸山正史市長がイオンの開発を不許可にしました(5月10日)。これは九州最大級の店舗建設の計画で、推進派が運動を強めるなかで民商・県連をはじめ商工会議所や商店街振興組合などが出店反対に立ち上がったもの。現行法を活用して、出店を拒否できることを示しました。
北海道では「大規模集客施設に関するガイドライン」(素案)を道議会に提出しました(4月4日)。大型店舗の郊外拡散を防ぐのが狙いで、事業者に情報提供を求め、地元関係者や知事が意見を表明できるようにするというものです。
福岡県では「福岡県中心市街地再生検討委員会」が大型店の立地は原則として市街地以外は抑制し、ゾーニングの強化で大型店が立地できない場所を定めるなどの「提言」を麻生渡県知事に提出(4月25日)。不十分ながらも県として初めて大型店の規制を打ち出しました。
こうしたなかで九州、沖縄、山口の9県は県境域で大型店の出店計画が持ち上がった場合、お互いに情報を交換し、出店を調整することで合意しました。
京都府は、奈良市との境に大型スーパー「イオン」を出店しようとしていた関西文化学術都市センターに対して、交通渋滞や騒音、駐車場の行列、広告塔照明などの光害対策の改善を求める意見を通知しました。
中心市街地活性化法の「改正」で、中心市街地への大型店出店が大幅に緩和され、こうした都道府県が意見を表明する機会が奪われることが懸念されます。 |
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